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04 鉱物採集のリアルノウハウ。「どこで」「何を」探すのか

 個人的に、鉱物産出の有名な地方は数あれど、「日本三大金山」、「日本三大銀山」、「日本三大ペグマタイト」が揃っているのは福島県だけ。加えて我が国最高峰のノーブルオパールの産地まである。なので、地元贔屓目線ながら福島県こそ鉱物王国だと思っています。(^^) 
  
 さて、鉱山跡を探して見つかるのは基本的に(製錬、貯鉱、搬出等に関する遺構を除けば)「坑口」であると述べましたが、まず、坑口を見つけることそのものが令和の現在では相当に難しくなっているのが現実です。
 坑口は通常、閉山に伴って
 ・「封鎖」ー安全のため、コンクリートなどで入り口を固め入坑出来ないようにする。深い縦坑などに多い。
 ・「埋戻し」ー安全のため、廃鉱石(ズリ)などで入り口を埋めて入坑出来ないようにする。
 ・「遺棄」ー毒性のない鉱物であれば、そのまま遺棄する。コスト的に有効なためパターンとして最も多い。横坑に多い。なお、外観だけでは、太平洋戦争当時の防空壕跡との見分けが困難な場合がある。
などの処理経過を辿ります。

 現実の坑口は多くの人がイメージするような立派な洞窟状のものはむしろ少なく、人一人がようやく身体を斜めにして入ることができるような一見してただの岩の割れ目にしか見えないものがあったり、山中に「遺棄」された坑口を探そうにも、林道や獣道に沿っていなければ、すでにヤブの中で、一旦ヤブに覆われれば、発見はほぼ不可能です。
 「自然に還る」という言葉がありますが、遺棄当時は大きな穴だったものが、長い年月で自然に土砂等が流れ込んで横に細長い隙間上の坑口となっているものも数多く見られます。
 また、鉱産誌等に位置図や略図が載っていたとしても、各都道府県の鉱産誌が編纂された1960~70年代以降、地名が変わったり、道路が変わったり、地すべりや大水で地形が変わったり、林地開発等の様々な理由で位置特定が不可能となっているケースも多いです。

 ちなみに、私の地元、福島県では、東日本大震災以降、自然エネルギー発電の興隆に伴い奥深い山々にメガソーラー施設や風力発電施設が続々と立地しているのですが、作業員の安全確保のため、草刈りや表土剥ぎ取りの過程で坑口や坑道が見つかった場合には、即座に土砂で埋め立てられることが多いそうです。
 同様の話が、採石業の許認可権を持つ県の部署の職員さんからも聞けたので稀ではありますが「偶然見つかった坑道」は基本埋められる、で間違いないのだと思います。

 次に、坑口と採集場所との関係についてです。
 1 坑口が見つかった場合、又は見つからないがこの辺りと絞れた場合、
 2 大字レベルにかつて鉱山があったことしか分からない場合(鉱産誌等から得られた情報のみの場合)、
に分けて記述したいと思います。
 いずれの場合にも、私が実践し現実に鉱物採集に至った方法ですので、確実、とまでは言い切れませんが高い確率で鉱物採集に繋がるのではないかと思います。

 そして、どこで探すのか、と同じぐらい大事な問題は「何を」、「どんなモノを」探すのか、ということです。
 鉱山跡関係だと、この場合、ターゲットは「ズリ」と呼ばれる廃鉱石になります。どんな石がズリなのか、というのは一概に言えませんが、私は、金や銀、銅、鉄などを産出した鉱山跡の関係地を巡り、石を割りながら、メジャーな鉱物だと、水晶(クリスタル)、紫水晶(アメシスト)、黄水晶(シトリン)、煙水晶、方解石、沸石類、瑪瑙(アゲート)、輝銀鉱、針銀鉱、閃亜鉛鉱、黄鉄鉱、黄銅鉱、磁鉄鉱などを採集しています。
 希元素鉱物が大好きな友人と一緒に、旧日本陸軍の極秘部隊と旧理化学研究所が合同で核爆弾研究のため密かに国産ウラン鉱石の試掘を行っていた鉱山の跡が地元にあるため、メタミクト化した鉱物の採集に行くこともありますが、単独行の場合は、ミーハーに「水晶系」がメインとなります(笑)。
 一番好きなのは見ても楽しく美しくコレクションしがいのある、水晶、アメシストなどでしょうか。また金鉱物(Au)、銀鉱物(Ag)も希少性が高いため狙って探していますが、良い標本に巡り合うことはめったにありません。
 そのため、私はまずは石英質の石か石英の脈が入った石、水晶の結晶の粒が表面に見えている石などが出る所を好んで探しています。例えば石膏しか採れない鉱物採集ではどんなに良質な標本が大量にゲット出来ても気分が盛り上がらないのです。
 所詮、アマチュアゆえ気の向くまま、好みに任せて、がマイ・スタイルです。

 さて、ヘッダー写真の石は何でしょうか、中央に小さな緑色の部分があるのはなぜなのでしょうか、実はこの石が鉱物採集場所発見に大きな意味を持っているのです。
 この石の正体は?
 この石はどこにあるのか?
 この石と鉱物採集の関係は?
 中央の緑色部分の意味とは?
 順次、明らかにしていきましょう。
 私にとっては、試行錯誤で得たこのノウハウがマイナー鉱山(=今や文献の中だけの存在で、誰も鉱物採集を行っていない鉱山)のズリを探す効率を飛躍的に高めてくれました。
  
 なお、鉱物採集では、ズリ以外にも、鉱脈からこぼれ落ちた鉱物を含む岩を見つけ割って鉱物を入手する方法もありますが、この記事ではそのケースにも触れてみたいと思います。
 必ずしも鉱山跡がなくても鉱物採集ができますが、鉱産誌等に載っていないので、こうした場所を探すのにはちょっとした工夫が必要となります。

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