
難問が何問解けるかも大事だが…
この時期の大学受験生、特に難関大学の受験生は、難しい問題に取り組んだり、細かな知識に目を奪われたりしがちです。しかし、難問の解答力を支えているのは基礎的な知識とそれを使う力です。英語で言えば、中学校で学ぶ知識や主に高校1年までの範囲の知識がそれに当たります。
「難問」が解けないなと感じたとき、「なぜ解けないのか」ということを冷静に分析してみるとよいでしょう。すると、解けない原因が実は基礎力の欠如にあることに気づくはずです。このときにその現実を素直に受けいれて基礎の強化を図るのか、それとも現実から目をそらしてひたすら難問演習を漠然と続けていくのか、その違いが入試本番での解答力の大きな違いとなって現れます。
実はあなたのせいでもないかも
学校によっては早い段階から問題演習中心の授業が行われていますから、基礎に触れる時間が十分に取れていない受験生も決して少なくないようです。塾や予備校でもそうしたところがよくあります。塾や予備校の「基礎クラス」や「基礎講座」の中には、基礎(を教えること)を熟知していない素人同然の講師が担当していることも多いので注意が必要です。
前段落の裏事情
塾や予備校の講師の求人で、「基礎レベルの授業ですので、教科書程度の知識があれば大丈夫です」などと説明してあるのを見たことがあります。この説明の意図は、「あまり専門的な知識がなくても授業ができます」ということでしょう。これが教育産業の現実です。
基礎を教えるには、基礎を教えるための知識や方法があります。特に、国語や英語のような言語教育や、あるいは数学教育の場合、教師がたまたまその科目が得意で半ば無意識的に身に付けてしまったことを、生徒に身に付けさせるためには、その身に付けさせ方を知識として持つ必要があります。
英語教師が日本語文法の知識を持つことも、そうした知識の一部です。訳してはいけないだとか、英語で考えろ、などと言っても、私たちの頭の中は母語である日本語に支配されており、外国語を見たり聞いたりすると、頭の中では無意識のうちに対応する日本語を探そうとしているのです。このときに、英語の苦手な生徒は得意な人間には想定外の対応関係を形成してしまうことがあります。教師はこのプロセスを予測して、回避したり修正したりできるようなノウハウが求められます。