なぜ形容詞か
2回にわたって「形容詞文の拡張」というテーマでお届けしてきましたが、これは英文法を学んでいくときに形容詞という品詞が鬼門であると考えているからです。
ことばの単位として「語」があり、語が組み合わさって「句」となり、句が組み合わさって「文」となります。語の組み合わさり方には一定の法則性があり、語によって意味や用法が決まっています。語を意味や用法で分類した物が「品詞」です。品詞に習熟することは文法学習の基本中の基本なのですが、品詞のなかでも文中での働きが日英語で大きく異なるのが形容詞です。
日本語は母語だから文法なんか気にしなくてよい、英文法だけやればよい。そういう意見もあります。しかしながら、日本語の文法を目に見える形で教わらないとしても、日本語を母語とする人の脳内には日本語文法が存在しています。そして英語が新たに脳内に入ってきたときに無意識のうちに日英語の対応関係を作り上げていきます。このときに適切な対応関係が形成されればよいのですが、必ずしもそうなるとは限りません。すると、言わば日本語に引きずられた形の英語が身についてしまうことになります。これは英語を英語だけで学んでいても、脳内で生理現象のように発生する現象です。このため、日英語を比べて見ながら英文法を学ぶことは効果的ですし、英語だけで英語を学ぶ場合も、指導する側が日本語文法に精通していて学習者の誤りに気づき、対処できるようにしておくことが重要になるわけです。