英文法と並行して取り組む「国語の学習」 (続き)
今回は前回に引き続いて、英文法学習と並行して行う「国語の学習」についてお話しします。
英語では文脈や場面から確実に復元できる場合に語句を省略しますが、日本語では文脈や場面からどうしても表す必要がある場合に語句を示します。つまり、「原則明示の英語」対「原則非明示の日本語」という対立があります。また、英語は日本語と比べて代名詞が充実していますから、省略の手前に代名詞化という段階があり、たいていの場合は省略ではなく、代名詞化で間に合ってしまいます。
なぜこのことに触れたのかと言いますと、日本語母語話者は必要でない限り詳しく述べないという傾向がありますから、英語と比べると私的な日常言語と社会生活で用いる公共的な言語の差が大きくなっていることを意識する必要があるからです。
日本語では特に、細かいことを言わなくてもわかる間柄であれば、断片的な語句のやりとりでもコミュニケーションが成り立ちます。しかし暗黙の前提を共有できない人たちとのやりとりでは言うべきことを明確に言わなければなりません。このときに私たちは母語でありながら日本語の文構造に意識を向けることになるのです。
日本語を書くということは、目の前の相手に伝えるのとは違った緊張感の中で何かを語るということです。的確に伝わることを目指すのであれば、表現の精度を高めていくことが求められます。もちろんこれは、英文和訳や和文英訳を通じて意識化することもできますが、これと並行して日本語を文章として書く経験を重ねていくといっそう効果的です。