変なものと変なものを貰ったから変なものにした
「ネタになるでしょ」と言って一方的に変なものをくれる人がいるんです。もちろん、圧倒的に少数派なんですが、なぜかゼロにはならない。なぜなんでしょう、と書いたところで、既に私はこうやってネタにしてるんです。そりゃゼロにならんわな、と納得いたしました。
先日は友人から本をもらいました。ちゃんとしたソフトカバーの本なんですが、表紙から本文まで書いてあることがいちいちおかしい。浮世離れしすぎて、この本についていけてないこっちが浮世離れしてるんじゃないかと思えるほどです。発行元を調べて納得しました。新興宗教系の出版社だったんです。教義を理解できない人間じゃあ、そんな感想を抱いても仕方がありません。
聞けば、友人が某駅前を歩いていると、人のよさそうな男性が新興宗教の熱烈勧誘を受けて困っていたんだそうです。そのため、友人は人助けのつもりでふたりの間に割って入り、挨拶代わりに新興宗教の勧誘さんが持っていたチラシを1枚もらって立ち去ろうとしたそうです。
男性は無事に解放されたようですが、勧誘さんは友人にターゲットを移しました。先ほどの男性と異なり、友人は勧誘をピシャリと断れる人なので、今回も軽くピシャリするつもりで振り向いたところ、勧誘さんが1冊の本をくれて、すぐ駅前へ戻っていったそうです。友人が試しにその本を読んでみたところ、浮世離れが大暴れしている文章ばかりだったため、私にプレゼントしようと思い立ったわけです。いい迷惑にも程があります。
とりあえず、その本を本棚に入れてみたのですが、書名も浮世離れしてる本なんです。次第に私、表紙や背表紙に書かれた浮世離れ書名を見るたびに、なんか力が抜けて困るようになりました。とりあえず、背表紙を奥に向けて本棚に突っ込むもそれはそれで違和感がある。結局、背表紙は奥に向けたまま、1冊だけ手前にポンと放置することにしました。角度によっては表紙がチラチラ見えるんですが仕方ありません。
後日、同じ友人が突然「カレー好きか?」と聞いてきました。「好きだけど?」と聞いた後でしまったと思いましたが、後の祭りです。友人は半笑いでレトルトカレーを2パック私によこしてきました。カレーのパッケージにはどこかでよく見たアパホテル社長の顔がバシッと印刷されている。その上に書かれていたのは「アパ社長カレー」という文字でした。
アパホテルがカレーに手を出しているという話は聞いていましたが、こんなにもパッケージがアパ社長なんですね。何でも、アパホテルに泊まったら、たまたまカレーをもらえるキャンペーンにぶち当たったそうで、こりゃ星野にあげて困らしてやらねばならんという義務感を抱いたそうです。世界で最も後回しにしていい義務だと思うんですよ、それは。
とは言え、カレーには違いないんでありがたくいただいたんです。ただ、いざ貰うとなんか食べるのがもったいない気がしてくる。しかし、その辺に置いておくと、パッケージのアパ社長と目が合って落ち着かない。
そこで私は思いつきました。あの浮世離れ本の両脇をアパ社長カレーで挟んでしまえば、浮世離れで力が抜けることもなければアパ社長と目が合うこともない。というわけで、浮世離れ本をカレーでうまく挟むことで、私の部屋に平穏を取り戻すことに成功しました。
しかし、私の部屋に新興宗教の本をアパ社長カレーで挟んだ物体があるんです。他の人が見つけたら、「こいつは一体何なんだ」と思うでしょう。何なら、私がオリジナルの宗教を立ち上げたと考えるかもしれない。「浮世離れのアパ社長挟み」が置かれた本棚は新しいタイプの祭壇だと誤認識される危険が出てまいりました。
どうにかして自宅を開かずの間にできないか画策中です。