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笑いに関する名言集――舌戦?
名言と呼ばれる言葉は大量にあるんです。何なら先日、英文学には昔、「金言ブーム」と呼べる現象があったとの噂を耳にしました。ブームになればそりゃ数も増える。名言集もかなりの量になる。そんなブームを経た現代でも、笑いに関する名言集はほとんどないんです。「じゃあ作ってみようか」というわけで、現在に至ります。
ここでは笑いに関する名言を以下のみっつのどれかに当てはまるものとしました。
・笑いに関係する言葉が入っている名言
・笑いに関係する仕事をした人の名言
・笑う余地がある名言
今回は舌戦っぽいものを集めてみました。名言集には誰かの発言を受けて言ったものとか、他人との会話を収録されているものがチラホラあるんです。中にはきつめのジョークで返したくだりが名言として集められたりする。「舌戦」というと言い争いみたいなイメージですけれども、今回は「舌戦っぽい」ですので、争うまでいかずとも、きつめな冗談混じりの会話をメインにご紹介してみます。まずはこちら。
先生:すぎたことばかりくよくよしたってしかたがないだろう。目が前向きについてるのは、なぜだと思う? 前へ前へと進むためだ!
(中略)
のび太:すっごくいいはなしきかせよう。ジーンと感動するはなし。
しずか:えっ、どんなの。
のび太:目が前についているのはなぜでしょう。
しずか:きまってるわ、うしろについてたらかみの毛がじゃまだもの。
しずかの友人:ばかみたい。
先生の言葉に感動したのび太が、その興奮も冷めやらぬうちにしずかとその友達に感動の名言を伝えるも、思ったのと違う反応をされた場面でございます。
非常によくある話です。自分の感動したものを他人に伝えようとしても、なかなか共感してもらえない。興奮していると上手に話せませんし、人によって価値観は異なる。結果として、上記のようなことが起きるわけです。
それにしてもしずかの返答です。妙にとんちの利いた言い回しでございます。友人の冷たい一言と比べても差は明らかです。作者の藤子・F・不二雄は制作にあたって、落語から学ぶ点があったと発言しておりまして、笑いに関する名言集でも取り上げています。
しずかの返答は、作者が落語から学んだことを応用したのかもしれません。落語には実際、似たような切り口のセリフがしばしば見られます。
「おう、甘酒屋ァ」
「へい」
「あついかい?」
「あつうござんす」
「じゃあ日蔭を通んな」
当たり前すぎて誰も言わないようなことを敢えて言うボケでございますね。それゆえに、相手が想定していない返答となる。考え方としては先ほどの「うしろについてたらかみの毛がじゃま」と同じです。
落語には笑える噺が多いですから、笑える余地の多い会話があるのは当然です。笑いに関する名言集としては反則な気もしますが、一応は落語由来の名言は他にも収集しています。例えばこちら。
「どこ行くのさァ!」
「大きな声だね。おらァ屋根に上がってンじゃないよ。お前の鼻ン頭の、すぐ前にいるんだよ。家ン中で船ェ見送るような声出さなくたっていいじゃねえか」
例えで笑わせる形でございますね。現代もなお使われている手法でございます。同じ国でも時代が変われば価値観も変わりますけれども、笑えるものは笑える。だから、今も古典落語が人々に親しまれているのでしょうし、創作の素材となっているのでしょう。
続いては、こちらの名言です。
(入院の時、回診に来た主治医から「どこか不快なところはありますか?」と聴かれて)
君の顔。
赤塚不二夫(1935-2008)
赤塚不二夫は漫画家でございまして、「おそ松くん」や「天才バカボン」といったギャグ漫画で特に有名な方でもあります。
赤塚さんは作品だけでなく日常生活でも面白いことを常に考え、実践した方のようでございまして、上記名言も主治医が嫌いだったわけではなく、単にみんなを笑わせようとしての結果だと考えられます。考えるだけでなく、実際にやってしまうところが赤塚さんの赤塚さんたる所以でございまして、現在の言葉で表すなら「芸人気質があった」のかもしれません。
続いてはこちら。
(飛行機でシートベルトの着用を勧める乗務員に対して)
スーパーマンにシートベルトはいらない。
モハメド・アリ(1942-2016)
モハメド・アリさんはアメリカの元プロボクサーでございまして、元WBA・WBC世界ヘビー級統一王者として知られています。また、独特な発言も有名で、代表的なものに「蝶のように舞い、蜂のように刺す」などがございます。
発言が独特だから、飛行機でシートベルトをするよう言われても、上記のような発言をするわけです。ちなみに、発言を受けて乗務員はアリさんに「スーパーマンには飛行機はいりませんよ」と返したそうです。創作を疑うくらいにはよくできた話です。
最後にちゃんとした舌戦をひとつ。
母親を蹴倒してでもこの試合に勝ちたい。
ラス・グリム(1959- )
グリムさんは元プロアメリカンフットボール選手でございまして、2010年にはプロフットボール殿堂入りを果たしています。
そんなグリムさんがスーパーボール直前に上記発言をしたんです。勝利への執念を表した言葉だと思うんですが、その発言を受けて対戦チームのマット・ミレンがこんなことを言いました。
グリムの母親を蹴倒してでもこの試合に勝ちたい。
マット・ミレン(1958- )
アメフトは格闘技にも形容されるほど激しいスポーツでございますけれども、試合前の舌戦もまた格闘技並みに激しいようです。お国柄もあるとは思いますが。
◆ 今回の名言が載っていた書籍