池尻大橋のNewスポット、居酒屋OMAとは?
昨年9月、池尻大橋に新しくオープンした飲食店・OMA。
OUWN・石黒がお店の共同オーナーを務めています。
いつの間にお店を?いつから構想していた?等々、気になることを全部聞いていきましょう!
OMAができるまで
石黒 : そうなんです。お店、作りました!
ー 気づいたらお店を作っていてびっくりしました(笑)始まりはどこから?
石黒 : 元々ご飯もお酒も好きでしたし、私的には食に例えてデザインの話をすると説明しやすいということもあり、講演会等で食とデザインをリンクさせながら話すなどもしていました。食の分野には少なからず興味があったけど、自分は本職がデザインなので、機会があればやってみたいなくらいの気持ちでした。今までのOUWNの案件で、阿武の鶴酒造の日本酒 三好や大阪箕面ビールのBATONなど、お酒のパッケージを作っています。例えば、三好は山口県にある酒蔵で、とても美味しくて味・デザイン共に受賞もしてるけれど、大量に流通しているわけではないので、東京ではいつ行っても三好があるよねってお店は多くありません。今から6〜7年くらい前の話ですが、三好のデザインをいくつかやらせていただいた頃に、杜氏の三好隆太郎さんとの打ち合わせで、「いつか東京で常に三好が飲めるお店を作ります」って宣言しました。根拠はなかったのですが、何より自分が飲みたかったし、他の人にも飲んでほしいし、デザインも見てほしい。共感・共有ができる、想いを繋げる場所を作りたいという思いで、希望を込めて宣言したのを覚えています。
昨年、デザイン賞に出すということが一区切りついて、OUWNも10年目を迎えた節目の年でした。一般的には10周年パーティーとかするのかな?とも思ったのですが、今までのOUWNの軌跡をパッケージしてお祝いするのってちょっと違うような気がしました。大事なのは10周年より11周年、10周年+1ステップかなって。だから10周年をお祝いすることはせず、次の11年目に向けて何ができるのか考えました。いつもだったらデザインで考えるけど、こんな機会はなかなかないので、何か違うことができないかなって。そこで1ステップ年の今こそ、切り口を変えて場所を作りたいと思いましたね。
そう思っていた矢先、TRACTION inc.の榊原さんに「一緒にお店を作るのも楽しそうですね」と声をかけてもらいました。
榊原さんとは自分がMR_DESIGNにいたときに佐野さんの下でTRANSIT GENERAL OFFICEという会社のロゴをデザインしてる時期があって、その時の担当者さんが榊原さんでした。当時はどちらも偉大な上司がいて、部下として仕事をしっかりとこなす身分で仕事上のやり取りだけでしたが、私がOUWNを立ち上げて数年経ったときに、当時のことを覚えていてくれて連絡をくれました。その内容は榊原さんが自身の会社(TRACTION inc.)を作るので、ロゴを作ってほしいという内容でした。
連絡をとっていたわけでもなかったのに、5年以上たった今、そのような連絡をくれたのはとても嬉しかったですね。「会社を立ち上げる時、ロゴマークを作るなら一緒に奮闘した石黒さんにと思っていました。」そのようなことを言ってもらえたのを覚えています。
榊原さんの前身のTRANSIT GENERAL OFFICEは、様々な企業のブランディングはもちろん飲食事業にも強くて、そこから独立された榊原さんも空間・飲食事業をプロデュースする力に長けています。自分もちょうど転換期でしたし、飲食に長けた信頼できる方と一緒にやった方が頼もしいので、協働してお店を作りたいと思いました。そこで複数人オーナーという形で会社を設立して、新しいものを作っていった感じです。OUWNと同様にTRACTION inc.もオフィスが池尻にあるので、一緒に池尻という、この場所を盛り上げられたらなと。
そして、やるからには中途半端は嫌なので、飲食だけに留まらず広い視野も持つことができて化学反応が生まれた方がよいので、他メンバーには今後の展望も見据えて全く異なる得意分野を持つメンバーが揃っています。サービスやビジネス開発に長けている平松圭さんや、店舗企業のDX支援やM&Aに長けている島田大介さんです。それぞれの強みがあり、異なるからこそ、新しい切り口が生まれるのではないかと思っています。
ー 今までとは分野が違う、新しい挑戦ですよね。大変なことも多かったんじゃないかと思います。
石黒 : 作業量として多いわけじゃなくても、今までやったことがないから肌感としてはだいぶ大きかったですね。飲食は、その場でライブ会場のように直接的に人が動くものなので、どういう料理を出したらどういう表情をするのか、何回転させたら売り上げは高まるけど居心地って意味ではどうなのか?など、いつも考えないようなことも多かったです。でも、やったことがないからこそ楽しさもあります。
全員にフィットするお店づくり
ー 空間の中でこだわった点はありますか?
石黒 : たまたまではあるのですが、個人的には大きな窓は好きです。そこから国道246号の大橋ジャンクションが見渡せて、そんなに広いお店ではないけど開放感があって、都会的な印象があります。コの字のカウンターには静岡で選んだ木を使っていて、3面で違う木になっています。入り口付近に座るときもあれば別のカウンターに座るときもあって、手を置く瞬間に、ふと質感の違いを感じるかもしれない。ほとんど気づかないけれど、何か違う。押し出すものではないけど、些細な部分をこだわってます。
あとは、ダイナミックなクラシックなスピーカーですかね。あまり僕は詳しくなかったのですが、いざ音を聞いてみると違うなぁ〜って。榊原さん、さすがだなって思いました(笑)。
ー OMAの名前の由来は?
石黒 : OMAという名前は僕が考えたのですが、飲食店はデザインとは考え方が微妙に違うなって思っていて、自分が作ったOMAは食事をする場所で、全部を徹底的におしゃれにするっていうのは感覚として美味しさが伴わないような気がしました。だから名前も、うんちくを並べて説明するのではなく、簡単に決めてしまったようなパッと伝えられる抜け感のあるものにしたいなと。そこで、お店は大橋ジャンクションの下にあるから、「大橋」がそのままOMAになっています。「橋(はし)」っていう漢字の由来は、「間」だったんですよね。間を繋ぐという意味から橋という字になったそうです。その場所がいろんな人との架け橋になったらいいなとも思うし、間を繋ぐ、大きな橋になるといいなって思いもあります。OUWNと名前も近いので、そこも良いなと思い「OMA」としました。
ー 覚えやすくて、そんなに気張っていない感じがします。
石黒 : そうそう。だからお店を作りましたって言っても、徹底的にデザインをしてるわけじゃないんです。僕がいるからみんな気を遣ってくれてなのか、「メニュー表とか箸袋とか、石黒さん作りますか?」って聞いてくれたんだけど、ある程度のことはやっても「良い意味で徹底的にはやりません!」って(笑)。
やったところで言うと、ロゴと暖簾かな。ロゴは前者の考え通りであまりやり込まないスタンダードなデザインです。暖簾は店内のお座敷を区切るための用途ですが、店内のどこからも見える場所だったので、お店の雰囲気を劇的に変える力がありました。なので、定期的に暖簾は替えることで常連さんも違う雰囲気を楽しめるかなと思い、数パターンデザインしました。
メニュー表は、それこそ手書きくらいの方が理想なのですが、オペレーションもあるので、フォントの指定とベースのデザインは作って、あとは店舗の方にやってもらっています。だから微妙に文字間が変わったりするのですが、それが味になるかなって思います。あくまで玄人があんまりやらないようにしていて、それが愛嬌や味に繋がっていく。引き算のデザインというか。
以前、アートディレクターの窪田新さんと食事をしていたときに、僕がOMAのお店に関してあまりデザインしていないことにびっくりしていて「普通そこ全部徹底的にやるでしょう。そこをあえてやらないってのが、いいと思う。自分じゃ考えられないな〜」と言っていました。確かに普通なら、実績にもなるしやるか…と思ったのですが、やっぱりブランディング視点で考えたのかなと思います。
ー メニューはどうやって決めているんですか?
石黒 : 料理に関してはある程度シェフに任せつつ、こういう料理がほしいとか、お酒はこういうものにしたいとか伝えて、作って頂いてます。ベースはリーズナブルな小料理で、少し池尻っぽいカルチャーや土地を感じられるようなメニューに寄せたり。池尻はデザイン会社だったりスタイリストさんが多い街だから、居酒屋料理なんだけどちょっとそのままの提供ではない一手間かけるような品にしています。
三好さんのお酒は常に置いてあります!夢を実現できました。
ー 近くに住んでる人や働いている人も気軽に来れそうですし、インスタから見て来る人も多そうです。絶妙な匙加減ですよね。
石黒 : OMAは全員にフィットするのを目指してます。今は何かに特化したお店が多くて、ナチュールワインと小料理とか。絞ることでワインだけでもたくさんの種類を楽しめたりして、自分もそういうところ大好きなんだけど、OMAは真逆です。おでんもあれば小洒落たメニューもあって、お酒も日本酒、ワイン、焼酎、ジン、ほぼ全種類置いてます。1人でも行けるしデートでも使えて、いろんな世代、いろんなシーンで使えると思います。
これはOUWNやOMAのコンセプトでもある、共感や共有、繋がる場所など、そんな多面的で広い思想が入ってると思います。
ー ランチの通常メニューに貝汁定食があって、珍しいなと思いました。
石黒 : たしかに。自分が2日酔いのときでも楽しめますね(笑)。ランチのメニュー構成は気軽な感じで決定したかもしれません。意外とみんな貝汁定食を頼んでくれるんですよね。この池尻エリアでランチ、定食でしっかりと食べれて、そこそこ洗練されているって意外となくて、抜け道なのかな?OUWNのスタッフもよく行ってます。
ー 意外とないです!私もOUWNで働いてたとき、ない!って思ってました。
石黒 : そうだよね。これでも池尻って良いお店が色々できてるから、これからは雑誌とかでも特集されやすい場所なのかなと感じてます。中目黒や三茶、神泉とかの近場は特集されきっていて、池尻の方が今行きたい場所になってるというか。
昨年大橋会館っていうのができたり、下北や祐天寺で人気なお店の2号店がこの辺りにできてたりね。どんどんこの業界での池尻の意識も変わってるし、活気があります。植原亮輔さんと渡邉良重さん率いるキギが運営するOFS galleryも白金から池尻に引越してきましたね。キギの忘年会、OMAでやってくれました。嬉しかったなぁ。
11年目と、新しい場所
石黒 : OMAができて面白いなと思ったのが、今までご飯屋さんとかで「職業何してるんですか?」って聞かれたときに「デザインしてます、OUWNって会社です」ってことくらいしか話せなかったんですが、今は飲食もやってますって話すと、やっぱり食いつきが全然違う(笑)。訴求力のスピードが違くて、10年かけてOUWNを築き上げてきたけど、それ以上に飲食店ではOMAの人っていう認知度がどんどん広がってる感じがします。
ー 飲食って多くの人が興味を持つものですよね。
石黒 : だから面白いんですよね。OMAで会った人には、デザインをメインでやってる人とは思われてないかも。オーナーの人としか(笑)。
OMAが昨年9月末にできたので、ちょうど半年くらい経ちました。新しいことは特にトライアンドエラーだから、半年経ってちょうど整ってきた感じかな。今ラストオーダーは22時でその後バータイムなんですが、日々ここはこうしたほうがいいよねって話したりして、3月を目処にご飯を長めに食べられるようにラストオーダーを遅くしようかなと思ってます。これからも柔軟にトライしながら更新していけたら良いかなと。
そしてOUWNの11年目、OMAっていう場所と絡めたOUWNの11年目ができたらいいなと思ってます!色々な人と対談したり、ポップアップイベントをしたり。三好さんの利き酒イベントとかも楽しそう。ご飯を出せるから、食べながらのデザインや企業のトークショーを開催したり。
ー 食べながら聴けるの良いですね!
石黒 : わざわざトークショーだけってちょっと堅苦しいのは、石黒っぽくないじゃないですか。ワイワイ話して、トークショーが終わったらお客さんたちと適当に飲んで食べて、その場所を共有して、そこに居れる、みたいな。必然のゆるさがあるトークショーをやれたらいいなって思ってます。
ー OMAが石黒さんの中でも架け橋になってますね。
石黒 : そうだね。大きな橋になるといいですね!良いまとまりにしてくれてありがとうございます(笑)。
Creative Studio OUWN
ATSUSHI ISHIGURO / @ai_ouwn
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聞き手 ・ 執筆 : 星成美 / @narumihoshi_castlru
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Architectural Design : BORDERLINE / 加藤忠弘
Construction : 株式会社凜然 / 新保智之
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