現代美術作家である宮谷明来さんの『自分史』の制作について
現代美術作家の宮谷明来さんが、ご自身の半生を綴ったコミュニケーションツールとしてのリトルプレス「 自分史 」の制作にたずさわらせていただきました。
文字のデータ化から装丁とDTPを担当しております。
2019年の春頃から何度も打ち合わせを重ねて、ご予算とご相談しながら、今冬にようやく形に。
以前よりご自身の頭の中にはあったというこの「 自分史 」の執筆を、何度も挑戦しては頓挫していたそうです。
それを考えると、もっともっと長い時間をかけて、本当にようやく、形になりました。
「自分史」には極めてプライベートな内容が書かれているため、限られた方のみしか、目を通すことは叶わないのだと思います。
そのような内容ですから、ボクが目を通しても大丈夫かとうかがったところ
「むしろ、ぜひ読んでいただきたい」と言っていただけて
その信頼に応えたい気持ちで、お仕事を引き受けさせていただきました。
このような個人にとって、とても大切にしたいものに、たずさわらせていただけたこと、深く光栄に思います。
みんな忙しくて、話す時間が限られている。
限られているのに、自分から積極的に話しかけていくことができないため、ますます自分のことを相手に伝えることができなくなる。なので、この本を渡すことで、自分のことを知ってほしいという気持ちがある。僕個人のことしか書いていないので、読む方はあまり面白くないだろう。
しかし僕は、口で話すより絵を描いたり文章を書いたりした方が本当の自分を表現しやすいのかもしれない。
もし良ければ、ゆっくりでいいので、読んでほしい。
あなたとのコミュニケーションを、もっと円滑なものにしたい。
(「まえがき」より許可を得て一部抜粋 )
ここに「 自分史 」を形にしたかった、彼の想いのすべてが込められていると思う。
コミュニケーションは個人にとって、一生をかけた大きな課題のひとつだ。
そして「自分史」には、とても鮮明な思い出がたくさん綴られています。
宮谷さんとボクは同い年なのだけど、ボクは彼と同じように自分のことを書くことはできないなと思いました。
良いことも良くないことも、清濁あわせてそれを吐露することは、並大抵のことではありません。精神的な負担もあったことでしょう。
なにより(ボクの場合は)そもそもそれを思い出せません(笑)
だからこそ、そういう意味でも、個人的にコミュニケーションの為にこの「自分史」を綴り、本という形式にしてつくられたことに、敬意を評したいと思いました。
人を知ること。
噂や風潮、自身で勝手に抱いているイメージは案外とあてにならないものです。
もし、手にすることがありましたら、時間がかかってもいいので、ぜひ向き合ってみてください。
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宮谷明来(みやたにあきら)
広島を拠点に、絵画や陶芸、針金を使った立体作品のほか、写真や身体表現など幅広い活動を行っています。広島や東京などでの展示会参加やワークショップなども。現代美術家協会所属。
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