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桃太郎

僕は暗く閉鎖された空間に閉じ込められている。
辺りは一向に眺められず、手足を伸ばせるほどの広さもない。
この空間の壁は、うるうると瑞々しく、仄かな甘みのある馥郁を発している。
少し舐めてみると、それは確かに甘い。
しかし、如何せん真っ暗闇の中にあっては、これが何であるか分からない。
そして、何より恐ろしいのは、この空間自体が、どんぶらこ、どんぶらこと右往左往に揺れ動いていることだ。
時に大きく揺れる時には、思わず均衡を失って、壁に打ち付けられる。
もう既に、壁にはいくつもの凹凸を作っている。
幸い、壁は柔らかいので大事には至らないが、三半規管はとっくにやられている。

一体ここは何処なのか?
胎内か?何かに閉じ込められているのか?

おっと、急に揺れが治まった。
かと、思うと空間そのものは回転をし始める。
やっと止まったかと思うと、何やら空間の外部から声が聴こえてくる。
しかし、聞き取れるには至らない。

すると、次の瞬間、突如眩い光が舞い込んだ。
酔い狂った身体に目眩を喰らわされて、思わず噎び泣いてしまった。

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にわ。
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