S・O・S
確か、今来ている実習生の女の子二人は、看護師学校から来ていた筈だ。
「君たち、血の止め方分かるだろ?!」
僕は思わず声を荒げてしまった。
彼女たちは、身をすくめ、膝から座り込んでいた。
彼女たちは今にも泣き出しそうだった。
その時、学生時代にボクシングをやっていた男性職員が言った。
「ワセリンがあれば血が止められる。わせr院には血止めの効果がある!」
続けざまに男性職員は女性職員に向かって叫んだ。
「誰か、ワセリン持ってないか!」
女性職員は動揺しながら、その目の中の動揺を隠せずにいた。
「私、持ってます!」
手に持ったワセリンのリップクリームをかざしたのは、作業所の女性メンバーの一人だった。
メンバーの女性は、僕にリップクリームを渡した。
僕は上向きに寝かせた所長のワイシャツがどんどんと血に染まっていくのを見ていた。
「早く!」
誰かがそう叫んだ。
僕はリップクリームの蓋を震える指でこじ開けた。
僕はワセリンをチューブから手に取り出し、
所長のワイシャツのボタンを外し、シャツをまくり、ワセリンを患部に塗り込んだ。
「うわーー!」
ワセリンが染みるのか、所長はうめき声を挙げた。