部屋に閉じ籠って一年が経つ。
彼はLINEに夢中な毎日を送っている。
毎朝、毎昼、毎夕、毎晩・・、毎夜スマホのディスプレイにかじりつきだ。
一人、自分の部屋に閉じ籠って、もう一年が経つ。
彼はその一年間、誰とも口を聞かずに、ベッドに潜って、疲れたら眠る。
彼は疲れていた。
彼は疲れて、心を病んでいた。
彼の心を癒す唯一の術は、スマホで彼女とLINEをする事だった。
LINEしては、疲れて眠る。
そしてまた疲れて眠る。
彼はずっと眠っていた。
眠る事が彼の出来る最高の癒しだった。
彼は傷ついていた。
誰に傷つけられたというのではない。
大切な人を失った悲しみが、彼を傷つけ、彼を眠りに誘った。
彼女は彼の親友だった。
彼女は彼の笑顔が好きだった。
彼女は彼の事が好きだった。
だけど彼女はもうこの世にはいない。
彼はその彼女の思い出とLINEをしていた。
彼の親友はもうこの世にはいない彼女の携帯を持って、彼とLINEをしていた。
それが彼女に出来る唯一の彼への救い。