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「平成31年」雑感17 松本サリン事件からマスメディアは変わっていない件

▼オウム真理教の幹部13人が処刑された件で、松本サリン事件について、「今」の話をメモしておきたい。

松本サリン事件の概要については、先にメモしておいた。

▼「創」2018年9月号に、かつて松本サリン事件の際、凄絶(せいぜつ)な報道被害をこうむった河野義行氏のコメント。2018年7月6日、オウム死刑囚13人のうち、7人が処刑された日の災難について語った。適宜改行。

〈6日の執行のニュースが流れた後、自宅にメディアが押し掛けてきた。がんで入退院をしている兄ら3人と住んでいるので、迷惑になるので慎んでほしいと要請しているのに、車が15台も来ました。家にメディアが押しかけるのは恐ろしいことです。24年前は、「容疑者」として、今回は「被害者」として、同じような状況になりました。

▼自宅に車が15台も来る恐怖、かつては「容疑者」呼ばわりされ、今は「被害者」として消費されるストレスは、当事者でないとわからないだろう。

この報道被害の事実そのものにニュース価値があると思うが、報道するマスメディアはない。当たり前のことだが、言語化しておくと、報道による加害者はマスメディアだから、自分の加害事実は報道しないわけだ。

〈「迷惑だから家には来ないでほしい」と言ってあったのに、6日、家の中に入って来た記者が3ぐらいいました。兄は、マスコミがうるさいので、しばらく家を離れて避難していました。

午後10時ごろ家に帰った時、周辺に15台ぐらいの車両が止まっているのが見えたので、家の前をメディアに気づかれないように通りすぎ、浜名湖のパーキングに潜んでいた。朝刊の締切は午前2時ごろだから、午前3時ごろなら、記者たちも消えると考え、家に戻ったのです。

7日、8日も数社が家の周りに来た。私はメディアからの電話に出ないし、断っていた。それでも、電話が入っていました。テレビ局は特番を組むから出演してほしい、電話でもいいので取材をと言ってきました。

メディアの状況は変わりません。家へ、ああやって張り込むのはいい根性をしていると思います。警察から情報をもらって報道する姿勢も同じです。マスコミの彼らは何も変わりません。

▼つまり、7月6日の夜、河野氏はまともに家で寝れなかったわけだ。

河野氏に「メディアの状況は変わりません」「マスコミの彼らは何も変わりません」という一言を言わせる現実は重い。

「平成」から「令和」に持ち越す、日本社会の現実の一つである。

(2019年4月28日)

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