「編集」の効用ーー琉球新報のデマ退治で考える

▼12月3日付琉球新報1面トップで、〈ネットで県民投票デマ〉という記事が載った。その後、電子版でよりわかりやすい見出しになっていた。

県民投票のデマ、ネットで出回る 民間団体が主催✕ → 知事が執行〇 データ流出✕ → 県条例実施で情報保護〇〉(琉球新報2018年12月3日)

〈来年2月24日に投開票される辺野古新基地建設に伴う埋め立ての賛否を問う県民投票を巡り、インターネット上のツイッターで「民間団体主催」「全県民のデータが共産党に流れる可能性が高い」などとするツイート(つぶやき)が流れている。だが10月31日に県が公布した県民投票条例は第3条で「県民投票に関する事務は、知事が執行する」と定めている。民間団体ではなく条例に基づき県が実施するもので、ネット上のつぶやきは誤りだ。投開票事務は県民投票条例に基づき各市町村が担い、県民の個人情報については、市町村の選挙管理委員会が新たに名簿を作って管理し、情報は保護される。〉(滝本匠記者)

▼この記事の〈埋め立ての賛否〉を〈憲法改正〉に、〈県民投票〉を〈国民投票〉に置き換えれば、まったく他人事(ひとごと)ではないことがわかる。いま沖縄を攻撃している具体的なデマの中身もみておきたい。

〈ツイッターでは、ある個人アカウントが11月26日付で「今回の沖縄県民投票の怖いところは、県主導ではなく、民間団体主催で、さらに言えば、県民の選挙における個人情報が賛成反対無投票問わず、全県民の情報が民間団体に流出する可能性が高いことなんだよね」とつぶやいた。12月2日午後3時時点で、書き込みを他に拡大するリツイートは108件で「いいね」は155件あった。

 これに続けて「特に主催団体と名乗ってる代表自体が、基地反対やってる活動家で、共産党の後押しされてた元琉球シールズなので、全県民のデータが共産党に流れる可能性高いんだよね」とも書き込んでいる。

 県民投票は知事が執行し、実際の手続きは県民投票条例に基づき各市町村が担う。有権者の名簿などは市町村の選挙管理委員会が新たに名簿を作って管理し、情報は保護される。これまで選管が担った選挙事務では、特定の政党などに個人情報が流出する事態は起きていない。〉

▼今年の沖縄県知事選ではひどいデマが乱れ飛び、沖縄の県紙はその対策に力を注いだ。今回の1面トップで素早くデマ退治に乗り出したのも、その経験則からの編集だろう。

これからのジャーナリズムの生態、生理がどのように変容するか筆者にはわからないが、ネット空間に殺到するデマや言葉の暴力に素早く対応することは、これからもマスメディアが社会の「プラットホーム」、民主主義の「プラットホーム」たりうるためには必須の努力だ。

その努力をするメディアは「検証のジャーナリズム」の必要条件を満たしうる。努力しないメディアは、その不作為が自らを「断定のジャーナリズム」や「主張のジャーナリズム」「利益集団のジャーナリズム」に堕落させる予兆やきっかけになる。

沖縄を日本の合わせ鏡として見つめる目が、「世界の中の日本」を救う鍵の一つになるかもしれない。

(2018年12月13日)

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