エボラ出血熱が史上2番目の流行になっている件
▼2019年6月7日に、エボラ出血熱の感染者が再び増えているニュースについて、共同通信、BBC、朝日新聞の記事を紹介した。
▼それからひと月ほど経った7月17日、世界保健機関(WHO)は緊急事態宣言を発表した。日本経済新聞、BBC、読売新聞の記事を紹介しておく。
まず、2019年7月18日配信の日本経済新聞から。
〈【ジュネーブ=細川倫太郎】世界保健機関(WHO)は17日、アフリカ中部のコンゴ民主共和国(旧ザイール)で猛威を振るっているエボラ出血熱について「国際的に懸念される公衆衛生の緊急事態」と宣言した。終息する見通しが立たず、周辺国に感染が広がっている事態を重く見た。緊急事態の宣言は2016年2月のジカ熱以来約3年5カ月ぶり。(中略)
感染者が相次いでいるコンゴ東部では多くの武装組織が乱立していると言われ、鉱物資源を巡る衝突が治療や予防活動を妨げている。〉
▼次に、同日配信のBBC記事から。文中の見出しのうち、3つめの「なぜ流行を食い止められていないのか」が重要だ。
〈コンゴでは今週に入り、人口100万人以上の東部ゴマでも症例が確認された。今回の流行で、ゴマで感染者が確認されたのは初めて。ゴマは、コンゴとルワンダ国境の街で、主要な交通の拠点となっている。
WHOは、隣国への感染拡大のリスクは「非常に高い」と警告している。
ウガンダでは、5歳の男児と50歳の祖母の死亡が確認されている。
史上5度目の緊急事態宣言
PHEIC(国際的に懸念される公衆衛生上の緊急事態)とは、最も深刻なレベルの流行を対象とした警告。2014年から2016年に西アフリカで1万1000人以上が死亡した、エボラ出血熱流行など、これまでに4度しか出されていない。
国際赤十字・赤新月社連盟(IFRC)は声明で、「エボラの被害者や、エボラ感染への対応にあたる人たちの、現地の実情をこの宣言で変えることはできないが、この宣言によって世界の注目が集ることを望んでいる」と述べ、WHOによる緊急事態宣言を評価した。
コンゴでのエボラ流行はどれほど深刻なのか
北キヴ州とイトゥリ州では、昨年8月以降、エボラの感染が拡大している。史上2番目に深刻な状況とされる。
これまでに2500人以上が感染し、そのうち3分の2にあたる1600人以上が死亡した。224日間で、症例数は1000件に達し、それからわずか71日後には、2倍の2000件にまで上った。
毎日、約12件の新しい症例が報告されている。
なぜ流行を食い止められていないのか
コンゴでのエボラ感染拡大への対策をめぐっては、状況は難航している。理由は、治安の悪化だ。
今年1月以降、医療従事者やエボラの治療施設などへの襲撃が198件発生しており、7人が死亡、58人が負傷している。
別の大きな問題は、地元の人々が医療従事者へ不信感を抱いているということだ。これまでの死者の3分の1は、治療施設以外の場所で命を落としている。
つまり、治療を求めず、近隣住民や親族に感染するリスクを冒していることになる。
さらに、エボラウイルスの感染経路をたどるのも難しいのが現状だ。
相当数の症例で、感染者との接触が確認できていない。〉
▼BBCの記事を読むと、相当厳しい状況であり、医療従事者が命がけで予防と治療に取り組んでいることがわかる。
▼最後に、ゴマで感染が確認されたことの意味について、2019年7月20日付の読売新聞から。(ウガンダ南西部ムポンドゥエ、木村達矢記者)
〈コンゴでの感染はこれまで、ウガンダとの国境から約50~60キロ離れた東部の都市ベニやブテンボが中心だった。しかし、7月14日東部ゴマで感染者1人が見つかり、衝撃が広がった。
WHOのテドロス・アダノム事務局長は、ゴマでの感染について、「形勢を一変させるかもしれない」と警告した。
ゴマは人口約200万人の大都市で、国際空港もある。ルワンダとの国境にも近く、ゴマからルワンダには1日約1万5000人が越境しており、爆発的に感染が広がる可能性があるためだ。ゴマの症例は、WHOの今回の緊急事態宣言につながった。〉
▼「緊急事態宣言」が危険な事態だということは知っていたが、この読売記事を読んで、「爆発的に感染が広がる可能性がある」ことを具体的にイメージできた。
前回のメモで、〈「エボラ出血熱」の再流行は、決して日本の他人事ではない件〉と書いたが、それはおもに経済的な面だった。今年はラグビーのワールドカップが、来年は東京オリンピックが開かれる。
読売新聞はこの「緊急事態宣言」をかなり大きく報道したが、他のメディアも大きく報じるべきだと思った。とくに、迷信を悪用して医療従事者を殺している、コンゴ東部の内戦の現実について。
(2019年7月22日)