日本にいられなくなるから赤ちゃんを「捨てる」実習生の件
▼児童虐待をしてしまうのは日本人だけではない。2019年1月30日付毎日新聞の「にほんでいきる 外国からきた子どもたち」の右下に、次のような見出しの囲み記事が載っていた。
〈日本にいられなくなる/実習生の母 乳児置き去り/遺棄容疑・逮捕〉
どういうことだろうか。
〈産んだばかりの男児をビニール袋に入れて他人の家の敷地に放置したとして、神奈川県警は29日、川崎市川崎区小田2、中国籍の技能実習生、戦美娟(せんびえん)容疑者(22)を保護責任者遺棄容疑で逮捕した。戦容疑者は「会社に知られたら日本にいられなくなってしまう。日本人の家に赤ちゃんを置けば育ててくれると思った」と話し、容疑を認めているという。
逮捕容疑は、昨年12月19日午後2時50分ごろ、川崎市川崎区の民家の敷地に、生んだ男児を毛布に包んでビニール袋に入れ、放置したとしている。約30分後、通行人が見つけた。男児は低体温症で入院したが、命に別条はない。男児は事件当日に生まれたとみられ、へその緒はちぎられたような状態だった。戦容疑者は、県内の食品工場で働いていたとみられる。【杉山雄飛】〉
▼「日本人の家に赤ちゃんを置けば育ててくれると思った」というコメントが胸に痛い。
それ以上に、前段の「会社に知られたら日本にいられなくなってしまう」という一言が気になる。よくある話なのだが。
▼さて、この犯罪は「自己責任」だろうか。筆者は自己責任と思えない。
まず、相談できる人がいなかったのだろうか。日本人には。同僚には。
働く環境はどうだったのだろうか。
食品工場でどんな技能を習得していたのだろうか。
充分にコミュニケーションがとれるように、会社はどのような努力をしていたのだろうか。
彼女は赤ちゃんを「捨てた」のだろうか。それとも日本人に「預けようとした」のだろうか。
彼女は日本人にとって「人間」なのだろうか。「労働力」なだけなのだろうか。
ひとまず赤ちゃんが助かってよかった。
この赤ちゃんは「日本人」になるのだろうか。
これから日本社会に移民が増えるが(日本国家は移民と認めないそうだが)、こういう「会社に知られたら日本にいられなくなってしまう」から一線を踏み越えてしまうケースは増えるのだろうか。
さまざまなことを考えさせられる記事だ。
(2019年2月8日)