僕たち/私たちの街案内 000 大濠公園周辺
今後さまざまなゲストに街を案内していただくことを計画している,シリーズ「僕たち/私たちの街案内」
今回は第0回プロトタイプとして,Our代表の里崎が大濠公園周辺をご案内します。
大濠公園周辺を選んだ理由
僕は大濠公園を福岡市のセントラルパークだと思っています。
散歩やランニングをする人やピクニックを楽しむ家族連れ,遊具で遊ぶ子どもたち,デートするカップル。いろいろな人が公園を利用していて,いつも平和な時間が流れています。
中心部の天神から近いのもポイントです。
街中から歩ける距離にこの景色があるのは貴重なことだと思います。
僕は幼少期に大濠公園から程近い鳥飼という街で育ちました。
放課後によく友達と遊びに来ていましたし,親に反抗して「家出してやる!」と向かった先も大濠公園でした。
家から300mくらいでしたが。笑
学生時代テニスをしていたので,その自主トレ(ランニング)の場所としても利用していました。
福岡で生活している期間において常に身近にある公園であり,大濠公園に育てられたと言っても過言ではないと思っています。
大人になった今も大濠公園まで徒歩圏内に住んでいて,休みの日には早朝にランニングをしたり,子どもを連れてよく遊びに来たりしています。
我が子にとっても,この公園が幼少期の思い出になれば良いなと思っています。
近年は周辺に素敵な店もどんどん増えており,中心部に近い割に静かなため,とても快適に生活できる地域だと思い,このエリアを紹介することにしました。
お気に入りの場所やお店
①南西堂
まずおすすめしたいのが大濠公園の南西に位置するパン屋さん,その名も南西堂さんです。
国産小麦を使用してサワー種(天然酵母)で作られるパンを販売しています。
店内のパンの陳列はとてもシンプルで,大きなパンが奥にどーんと並べてあり,手前のショーケースにはサンドイッチと切り分けられたパンが並んでいます。
ずらっと惣菜パンや菓子パンが大量に並べられた一般的なパン屋さんに慣れている方には少し寂しく映るかもしれませんが,僕には「これが私のパンです!これを買って!」という,潔さみたいなものを感じます。
という店主の坂本さん。
大きなパンを丸ごと買って,食事の都度切り分けるスタイルは,ヨーロッパの方々の生活のようでとても素敵だと思います。
ハムやチーズを乗せたり挟んだりするも良し,煮込み料理のお供にするも良し。このパンをどうやって楽しもうかなとワクワクします。
日に日にパンの味わいが変化していくのも楽しみのひとつです。
朝7:30からオープンしていてサンドイッチも販売しているので,休日の朝にサンドイッチを買って大濠公園でモーニングなんていうのも贅沢だと思います。近くにはコーヒーとワインを販売しているécruさんもあるので,南西堂さんのパンとセットでお持ち帰りするのもおすすめです。
南西堂さんはぜひ日常の中に取り入れていただきたいパン屋さんです。
シンプルなパンが日々の食事を豊かにしてくれることを教えてくれます。
②mêek
次は大濠公園の北側,大手門にあるタイ料理のお店mêek(メーク)さんをご紹介します。
こちらのお料理はもちろんですが店主の橋本さんやスタッフさんの人柄もとても素敵です。50年続いた喫茶店「雲」の内装を引き継いだ店内がとても良い雰囲気。
店名のmêekはタイ語で,日本語に訳すと「雲」という意味だそうです。この物件を長年大切に使われてきた以前の入居者さんへのリスペクトを感じます。
味のある店内から窓越しに見える簀子公園の景色は,幼少期の原体験のようなものを呼び起こして,どこか懐かしい気持ちになります。初めて入って時から落ち着くなと思ったのは,この雰囲気と景色からくるのかもしれません。
今回注文したのはゲーンペッガイというココナッツレッドカレー。
美味しい!橋本さんのお料理はいつも野菜の美味しさを教えてくれます。
と語るのは店主の橋本さん。
なるほど,「美味しい」にはきちんと理由があります。
そして橋本さんやスタッフさんとのトークが本当に愉快です。
丁寧なお料理が楽しみなのはもちろんですが,橋本さんたちとの会話も楽しみでこのお店に通っています。いつも大笑いして元気になって帰ります。
mêekさんはお腹も心も満たしてくれる場所です。
今日はランチでの利用でしたが,夜はコース料理を提供されていて,そちらは僕もまだ未経験なので近々訪れようと思っています。
③Filles et Garçons
アフターコーヒーはmêekさんから程近いこちら,Filles et Garçons(フィーユ エ ギャルソン)へ。
ここは僕たちの会社が経営するカフェです。
手前味噌ですみませんが少し宣伝させてください。
このお店では自家焙煎のコーヒーと手作りの焼菓子を提供しています。
お酒も提供していて,昼夜問わずビールやワインを飲むことができます。
店内はフランスのパリにあるカフェをイメージしていて,実際にフランスの方々にも来店していただいています。
老若男女問わずいろいろな人が集まる「街の公民館」のような場所になれるよう,日々営業しています。
コーヒードリンクはエスプレッソをベースに作っていて,アメリカーノやラテを提供しています。
エスプレッソの豆はブレンドではなく,僕らが大好きなエチオピアの豆だけを使用しています。程よい酸と華やかな香りを楽しんでいただけるよう,抽出も焙煎も日々試行錯誤しています。
焼菓子は全て店内で焼いています。小麦粉は九州産のものを使用し,果物は近郊の農園から直接仕入れています。「美味しい」に加え,少しでも地域経済への貢献ができれば良いなと思っています。
大濠公園周辺のお散歩時の休憩場所として,ぜひ皆さんにご利用いただきたいです。
④Y’ALL WALL
食べてばかりなので,ここで少し違うジャンルを紹介します。
大濠公園からすぐ近くの福岡城跡のお堀沿いにあるY’ALL WALL(ヨール ウォール)さんという「街の印刷屋さん」。
1回で単色ずつ印刷する「リソグラフ」という印刷機を使って,家庭用のプリンタでは表現できない風合いの印刷物を仕上げてくれます。
店内は,まるで海外の街工場のようなインダストリアルでクールな雰囲気。
コンクリート壁と木を使用した什器,そして印刷機。
どれもカッコよくて男の子心をくすぐられます。
こちらでは,僕らのお店のギフト用商品にお客様が添えるためのメッセージカードや,コーヒー豆のラベルもプリントしていただいています。
店主の瀬口さんは
スタッフの隠岐田さんは
と言います。
日常的に,しかも気軽にこんなにセンスのいい印刷をできる場所があるのはとても恵まれています。
そしてこのお店はギャラリーとしての機能も持っていて,僕と仲の良いアーティストたちも過去に展示をしています。
お店の前を通る時に「今は何を開催しているんだろう?」と覗くのも楽しみの一つです。
一見コーヒースタンドかな?と思うような外観もクールです。
コーヒーショップに行くように,「今日はこれを印刷してよ」と気軽に通える「街の印刷屋さん」が増えてほしいと思います。
⑤酒場サークル
陽もだんだん傾いてきて,そろそろ1杯飲みたくなってきました。
そこで最後に紹介するのはこちらも大手門に位置する,酒場サークルさんです。
街でよく見る「手前に引けば液体,奥に押すと泡」が出る一般的なビールサーバーとは違い,蛇口の開け閉めだけでビールを注ぐ「スイングカラン」というサーバーでビールを提供してくれます。
まず,このビールの注ぎを見るのがとても楽しい!そしてかっこいい。
半円形のカウンター付近からはどこからもサーバーを見ることができて,ライブ感があるのでビールを待つ間もワクワクさせてくれます。
スイングカランで注ぐビールの特徴について
と語るのはスタッフの寺井さん。
それに呼応して,スタッフの香内さんが
見てるのはすごく楽しいけど,注ぐのは難しそうです。この美味しいビールは練習の賜物なのですね。
そして,スタッフさんたちはいつも元気で,カウンター立ち飲みスタイルならではのやりとりがこちらも元気にしてくれます。
2杯目はワイン。この日のおすすめをいただきましたが
との説明を受けました。
このようなストーリーを聞きながら飲むと,より一層楽しい。ただの「飲み物」として提供されるのではなく,そこに介在した人の想いやエピソードを感じながら味わう1杯は「体験」として記憶に刻まれます。
そして,サークルさんはお酒のあても最高です。
お願いしたメニューのお野菜は全て佐賀・鹿島の藤井農園さんのもの。余計な味を添加せず野菜本来の味を引き出すために,肥料も使用しないという「自然農」と呼ばれる方法で作られたお野菜は,食べる僕たちに元気を与えてくれます。ナチュラルワインとの相性がとても良く,気づけば2杯3杯と飲み進めてしまいます。
サークルさんは,堅苦しく押し付けるわけではなくリラックスした雰囲気の中で「食べること・飲むこと」への僕らの興味を大いに刺激してくれます。
スイングカランで注がれるビール,ストーリーを感じるワイン,愛のこもったお料理,そして気持ちの良い接客が常にウェルカムな雰囲気で待っていると思うと,ついつい足を運びたくなります。
これからも大手門から広がる「輪」の中心で居続けていてほしいと思います。
案内を終えて
こうして巡ってみるとこのエリアの魅力を再認識できました。
やっぱり大濠公園は良い公園で,周辺も素敵な街だなと思いました。
近くには福岡城や舞鶴公園もあり,福岡市美術館もあって歴史や文化に触れることができることも魅力だと思います。
住処の近くに公園があることは,それだけで豊かなことだと思います。
住環境を評価するときの基準のひとつとして「公園が近くにあるかどうか」を取り入れることを僕はおすすめします。
編集・撮影:里崎貴行