悪い夢ばかり見ている人は自殺リスクが1

悪い夢ばかり見ている人は自殺リスクが1.8倍。誰でもできる対処法を調べてみた。

ハイライト
・悪夢を頻繁に見る人は自殺リスクが80%増加!
・悪夢をよく見る理由は、恐怖のデリート失敗!?
・イメージリハーサルセラピーはカンタン。悪夢はかなり改善する!

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■意外と怖い、悪夢の副作用。

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あるアメリカの調査によると、悪夢に悩まされている人は成人人口の4%です。悪夢は睡眠を強く悪化させるので、不眠症、日中の眠気、疲労感につながります。メンタル的にも強いダメージがあり、精神病やうつ病と関連していることが明らかになっています。

フィンランドのFINRISK studyをもとにした、総勢71,068人のデータを解析した結果によると、悪夢を頻繁に見る人は自殺のリスクが1.8倍に増加することが明らかになっています。

さらに、悪夢を頻繁に見る人は、幸福度が低く、強い不安を感じることが明らかになっています。


逆に悪夢の治療に成功すると、睡眠の質が向上し、活力を感じることができます。さらに日中の疲れや眠気が改善し、もちろん不眠も改善することが明らかになっています。


今回は、

怖い悪夢がナゼ起こってしまうのか?
なぜ、悪夢を見てしまうのか?
悪夢を見ないようにする方法はあるのか?

について真剣に調べてみました!!


■そもそもなんで悪夢を見るの?

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ヒトは、夢をナゼ見るのでしょうか?

2009年Rossらによってその理由がモデル化されているので、カンタンに紹介します。

まず、普通の夢をみる理由。

それは、日中に感じた不安やストレス、恐怖など『ネガティブな感情を消去するため』です。夢を見ている間、記憶は脳の中で整理されます。

最初に記憶が分解され、次に組み合わせを変え、最後に脳に都合の良いように再結合します。記憶の組み合わせを変えたときに画像イメージが作られます。夢で頭に思い浮かべる絵は、まさにこの画像イメージなのです。

分解された記憶にネガティブな感情が含まれている場合、ヒトはそれを忘れた方が得です。したがって無意味な情報と組み合わせて、忘却を促進させ、忘れやすくする処理が行われます。

夢の内容って、覚えていないことが多いですよね?
それは、忘却するべきものだからなのです。


逆に、悪夢の場合、忘却のための記憶の組み合わせが失敗したり、忘却システムのエラーが起こりやすい状況になっている為、恐怖感などの『ネガティブな感情が強く残ってしまう』のです。

したがって、

夢は「恐怖を消去するため」に存在している。

悪夢は「恐怖のデリート失敗」と言えます。


■悪夢治療の最適アプローチとは?

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Journal of Clinical Sleep Medicine誌に2010年に掲載された論文では、悪夢の治療について網羅的なレビューが行われました。いくつも治療法がある中から、治療法として効果が高いものをピックアップしてご紹介します。


今回紹介するのは、研究チームがレベルA、レベルBと名付けた、非常に高レベルで進められる悪夢の対処法です。

レベルA:かなりの量・高品質で臨床判断の基準にしても良い、推奨されるべき方法です。
レベルB:レベルAほどではないにせよ、複数の根拠に基づいて、試しても損がない方法です。

さらに、どれも『自分でカンタンに試せる便利なシロモノ!』

レビューの中には抗うつ薬や精神病薬、抗不安薬などを使う方法も調べられていますが、レベルCの方法が多かったです。したがって、今回紹介する方法は、これらの薬物療法よりも効果的かつ信頼できる方法です。

まずは、これから試してみてください!


■悪夢を頻繁に見る場合

 :イメージリハーサルセラピー(レベルA)

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悪夢に悩まされる方が”誰でもできる効果も確かな方法”。それがイメージリハーサルセラピーです。

仰々しい名前がついていますが、やることは単純です。

①:悪夢を思い出す
②: 内容を書き留める
③: 悪夢のストーリーやエンディングをポジティブに書き直す
④: 書き直した夢を頭の中でリハーサルする

1日10分程度やるだけで、悪夢がカイゼンすることが示されています。

168人の女性が参加した二重盲検比較試験(質の高い研究)では、イメージリハーサルセラピーによって悪夢・睡眠の質、PTSD症状が60%以上改善されました。

さらに、その効果は3か月後、6か月後も続きました。


なぜ、イメージリハーサルセラピーには効果があるのでしょうか?


悪夢の原因は強いストレスや不安です。しかし、それは過去のものであり、現在の自分を傷つけるものではありません。

イメージリハーサルセラピーでは、過去の記憶の認知を変化させ、『現在の自分を傷つけるものではない』というイメージをさらに強化します。

心理カウンセラーが用いる認知行動療法(CBT)も同じように”認知を変える”ことでメンタルを改善するアプローチです。イメージリハーサルセラピーはCBTによく似ています。

バカみたいに聞こえるかもしれませんが、イメージリハーサルセラピーが悪夢に効果があるのは事実です。お悩みの方はぜひ試してみてくださいね!


突発的に悪夢を見る場合:筋弛緩法(レベルB)

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筋弛緩法は、体の一部に70~80%程度の力を入れて、一気に開放することで、体をリラックスさせ、不安やストレスを改善する方法です。

①:力を70~80%入れる
②:5秒程度維持する
③:スーッと力を抜いてリラックスする
④:10秒休む
⑤:腕、首、腰、足の順に繰り返す
⑥:1回のルーティンは5分程度で終了してOK

力を入れたとき緩めた時との違いを十分に感じるのが大切です。

筋弛緩法の研究では、悪夢を見る頻度が80%減少し、治療期間が長いほど効果が高まることが示されています。

かなり良い治療成績ですね!

イメージリハーサルセラピーと筋弛緩法の利用によって悪夢の大部分に対処ができるでしょう。


PTSDによる悪夢:プラゾシンなどの薬物治療

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PTSDによる悪夢限定ではありますが、薬物療法にもレベルAの治療法があります。それがプラゾシンという薬による治療法です。

PTSDについて分からない方のために”超簡単”な説明!
*PTSDとは、災害や戦争、虐待などひどいストレス状態に陥った経験がある人が、時間がたったあともそのストレスや恐怖を感じる症状のことです。

プラゾシンは高血圧や前立腺肥大に使われる薬ですが、最近はPTSDの症状に改善効果があることが判明している薬です。日本ではミニプレスという名前で処方されます。

PTSDの患者は脳内のノルアドレナリン濃度が異常に上昇しています。脳内の受容体に激しく作用することで不眠や悪夢の原因となっています。

プラゾシンは、ノルアドレナリンを脳内の受容体にくっつかないようディフェンスすることで、効果を示します。

過去の研究では、ベトナム戦争経験によるPTSD患者の悪夢に対してプラゾシンが有効であることが示されました。

したがって、強力なストレス体験をもちPTSDによる悪夢が疑われる方は、心療内科等での相談と処方によって悪夢が改善する可能性は高いでしょう。


他の薬については、一定の効果があるものの、大規模な臨床試験データなどが少なく、まだまだ推奨レベルに到達していません。


まとめ

悪夢を頻繁に見る人は、あまりにもストレスの強い環境にいるヒトかもしれません。本当なら環境を変えることが良いのだと思いますが、すぐに環境を変えるのは無理というもの。

今回紹介した方法はいずれも試しやすい方法ですから、まずはイメージリハーサル法や筋弛緩法でストレスを軽減し、必要な第一歩を踏み出すエネルギーとしてください!


おしまい

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引用

Sandman, Nils, et al. "Nightmares as predictors of suicide: an extension study including war veterans." Scientific reports 7 (2017): 44756.

American Academy of Sleep Medicine. International classification of sleep disorders, 2nd ed.: Diagnostic and coding manual. Westchester, IL: American Academy of Sleep Medicine; 2005.

Zak, Rochelle S., et al. "Best practice guide for the treatment of nightmare disorder in adults." Journal of clinical sleep medicine 6.04 (2010): 389-401.

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