仕事をしている気がしない時の方が、捗る理由。
めちゃくちゃ仕事を頑張って、夜まで働いて。
一心不乱に働いた時ほど、意外なほど評価もされず、給料も上がらない。
むしろ、働いている気がしないんだよね〜とか、もう流れでやっちまおう!って時ほど、周囲の同僚や仲間に評価される経験、ありませんか?
意外なほど「頑張ってる時ほど評価されない世の中」だと思いませんか?
実は、それには科学的な理由があります。
仕事をしている気がしない時の方が、仕事のパフォーマンスが上がるとたくさんの分野で証明されているのです。
今日は、不思議な仕事と心理の繋がりの原因を探っていきます。
・なんで、頑張ってないときの方が評価されるんだろう?
・人のパフォーマンスってどんなとき最大化されるんだろう?
・チームを効率的に動かすにはどうすれば良いんだろう?
などなど、いっけん不合理に見える現象を科学的に読み解いていきましょう。
■手癖で仕事した方がパフォーマンスが向上する?
慣れている仕事ほど、適当にやった方が良いかもしれません。
自分の慣れた方法がある仕事やスポーツで、もっとパフォーマンスを上げるために他の人の真似をすると、かえって下手くそになる現象、経験したことありませんか?
教えたがりの人が、「左手は添えるだけで良いんだよ!」
と言ったとき、今までの自分のやり方と違うせいで、かえってミスが多くなってしまう。そんなアドバイスに耳を貸すより、今まで通りやっていた方が、スコアが伸びる。そんな経験って誰にでもありますよね。
いったん熟達したスキルに、下手な口出しをするとパフォーマンスが下がってしまう現象は、心理学的にも証明されています。
2002年にミシガン大学によって行われた、サッカーを使ったオモシロい実験をご紹介します。
■集中パターン
足のサイドに注意しながらドリブルして、足の外側と内側のどちらにボールが触れたかチェックしながら進むよう指示されました。
■注意そらしパターン
2秒毎に流れる単語の音声が流れる度に、それを口ずさむよう指示され、そのままドリブルを完了するように指示されました。単語に集中しなければいけないので、注意が削がれます。
2つのパターンで、1.5mおきに行われたポールを避けながら、どれだか早くドリブルすることができるかをテストしました。
初心者と、サッカー経験者に分けて行った結果がコチラ。
「初心者」の場合、ボールと足に集中したときの方が、早くドリブルできます。
しかし、「経験者」の場合、注意が削がれている方が、圧倒的に早くドリブルすることができるのです。
経験者に利き足ではない「左足」でドリブルをしてもらった時は、ボールと足に集中してもらった方が早くドリブルができることまで確認済みです。
つまり、熟達したスキルを使う時は、緊張感や過度な集中はパフォーマンスを下げてしまい、むしろ注意がそがれている方が丁度いいのです。
スキルの上達とは、より自動的に行動できることを指しています。上達した状態で改めてその部分に意識を向けると、自動性が失われてしまうのでパフォーマンスが低下するのです。
逆に、初心者の場合は、そもそも自動的に行動できないので、集中しないとうまく体を動かせず、注意力が削がれるとパフォーマンスは低下してしまうのです。
ここまで、スポーツの話を進めてきました。
では、勉強など頭を使うタスクではどうでしょうか?
■頭を使う仕事はどう?
頭を使う仕事も、気楽にやった方がパフォーマンスアップに繋がります。
計算問題を解いてもらった実験をご紹介します。
高プレッシャーな状況では、パフォーマンスが20%上がったら1000円あげると言われたり、教師が状況をビデオで全て確認しているとつたえられ、ビデオに囲まれながら計算問題をとくことが行われました。
高プレッシャー時の方が、成績が良ければお金がもらえるので、それがモチベーションになって成績は上がるような気もしますが、結果は真逆でした。
低プレッシャー時と比べて、高プレッシャー時の正答率は極端に落ち込んでしまったのです。
その理由は、プレッシャーが脳の領域を圧迫し、本来持っている計算能力を発揮できなくしてしまうからです。高プレッシャーにおかれると、数学を解く能力が高い人でも、数学が不得意な人と全く同じような方法で問題を解いてしまうことが明らかになっています。
本来、もっと効率的に問題を解く方法を知っているのにもかかわらず、このような結果になってしまいます。
プレッシャーと計算能力が脳機能を取りあってしまうのです。
では、チームでのパフォーマンスはどのように変化するでしょうか?
■Googleが結論付けた、チームパフォーマンスを上げる最も重要なファクターと言えば...
Googleが結論付けた、チームパフォーマンスを上げる最も重要なファクターといえば、「心理学的安全性」です。
心理学的安全性とは、チャレンジを推奨し、失敗に対する罰や、無視などの報復や罪悪感を感じにくい環境のことです。
さきほどの実験を思い出してみましょう。失敗に対する罰や罪悪感とはすなわち、「プレッシャー」です。プレッシャーは脳の領域を圧迫し、本来あるはずの機能を極端に弱くしてしまいます。その結果、本来のパフォーマンスを出せない状況を作り出してしまうのです。
心理学的安全性が保たれた職場では、プレッシャーを過度に感じることなく、自分のパフォーマンスを最大化できます。自分が役に立っているという感覚は、仕事への愛着を高めます。
自分のイメージや地位、キャリアへの悪影響を恐れることなく、対人コミュニケーションのリスクを最小限に抑える職場となります。
驚きや感動をシェアできるコミュニケーション密度の高まりは、熟達したスキルを最高のパフォーマンスで利用するために重要です。ポジティブな意味で注意がそれることは、最初に示した実験のように熟達したスキルパフォーマンスを最大化します。
心理学的安全性について書き始めるとあまりにも長くなってしまいます。しっかり学ぶためには本などを使って体系的に学ぶことの方が重要なので、今回はこの辺にして、本の紹介に留めておきたいと思います。
心理学的安全性は、Googleがチームのパフォーマンスを最大にするために、最も重要なファクターとして位置付けた性質です。Googleで人材育成に関わるピョートル氏が出した「世界最高のチーム グーグル流「最少の人数」で「最大の成果」を生み出す方法」から学ぶのが最も効率的です。
チームを率いる立場にある方必見です。
もし、心理学的安全性にもっと詳しく説明して欲しいと言う方がいたら、コメント欄にお書きください。多く集まった場合は、心理学・ビジネス論文における心理学的安全性について別の記事を書いてもっと細かく説明します。
今回のギモンの提供者
今回は、Nanami Tohse/ブラック企業アラートの中の人さんからギモンを頂きました。「仕事をしている気がしない」ときの方が上手くいくという感覚は、みんなにある感覚だと思うんですが、意外にもちゃんと説明している記事は少ないモノでした。
そんなNanami Tohseさんのギモンはきっとみんなの役に立つはず・・・!と書き始めた記事は、スタッフを持つわたしにとっても勉強になる記事になりました。ありがとうございます!次のギモンもお待ちしています^^
そんな、みんなでギモンを出し合って、面白おかしく解決していくサークルはコチラ!私はメンバーの為に記事を書いています。
みんなでギモンを共有して、話し合いながら、
「面白い答え」を考え出していきましょう!
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引用
Beilock, Sian L., et al. "When paying attention becomes counterproductive: impact of divided versus skill-focused attention on novice and experienced performance of sensorimotor skills." Journal of Experimental Psychology: Applied 8.1 (2002): 6.
Beilock, Sian L. "Math performance in stressful situations." Current Directions in Psychological Science 17.5 (2008): 339-343.