雪解け水のシロップ

 
幸福の重さを上手に測れない
体重計は壊れていてほしい
はじめていくカフェの小さなテーブルに飾られた
もっと小さなシェットランドシープドッグに
知らない街の写真を見せて
ここが故郷なのと
ずっと嘘の話がしたい
 
 
(冬になるとあたりいちめん雪が降って
それが溶けるまでわたしたちは眠るんだよ)
 
 
淡い異国の街で産まれたことになって
優しいだけのホットケーキを食べる
毎日こうしていれば
シロップ漬けのくだものみたいに
こころまで柔らかくなれるだろうか
柔らかいままでいても
わたしのような大きなひとに
噛み砕かれてしまわないだろうか
体重計は壊れていてほしい
幸福の重さを知りたくない
こんどのカフェでは小さなマグの
そのカフェラテの渦に
あなたに似た宇宙が
故郷なのと嘘をつこう








生活になるし、だからそのうち詩になります。ありがとうございます。