非実在エンゲージリングショップ
折り紙でつくった赤色のわっかに指をゆっくりとおす、こころとあたまが別にあるって、どうやったら証明できるかわからない、こころとあたま、約束は、ケイヤクは、どっちで交わすんだろうね。わからないまま薬指のいちばんおくまでとおしたわっか、かんたんに破れてしまうものにしか守る価値を見出だせない、だからわたしも破れやすくいるのだ、と、言い訳をする。
もう一枚、引っ張り出した折り紙、丁寧に丁寧にたたんでも、ぴったりは合ってくれない端、うすくはみ出した、白、無視できてしまうこと、と、ちいさくちいさく書かれたケイヤクショ、に、サインする手が震えている、いつも、自分自身をいちばん、信用できない。
きみの指輪は真っ白な折り紙でつくってあげる、はみ出したって気づかない、うらもおもてもない、真っ白な折り紙、に、ほんの少し、赤色がにじむ、うすくうすく、切ったことに気づくまで痛くない指先、何かの罰かもしれない、と、思う癖をやめたくて、今日も心臓を叱りながらながいながい白線をおりる、
はじめから約束なんてしなくてもいいくらい、粉々に、崩れていてしまいたかった、それでどんな形にでもなってしまえるくらい、やわらかくいたかった。
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