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小さな生命の大合唱

    今年も力強く蝉が鳴いている。
朝起きたら、それはもう大合唱だ。

    人間の世界では、コロナだ熱中症だ異常気象だと騒いでいるけど、君たちには関係ない。

    いや、 " 地球の病気 " は、もちろん君たちにも関係あるよな。
    昔とはだいぶ温度も変わっている。
それでも君たちは、その小さな体で一生懸命、存在をアピールしている。

    凄いよな。

    君たちが長い間土の中に居ることは知っている。どれだけ短くても3年、そして地上で運良く長く生きれて1ヶ月。

    天敵だって多い。
夏に蝉取りをする人間の子供たち、鳥、蟻、そして、昨今では土が少なくなって、土の中にいた君たちが出てきた場所の近くが、木もなくアスファルトだったり。


    日中に熱せられたアスファルトはなかなか熱が抜けないから、羽化しようと出て来た君たちの体力を、どんどん奪うだろう。

    それらを乗り越えた君たちの大合唱は、今ある生命を正に謳歌していて、俺は本当に素晴らしいと思っている。

    だから、今日も力いっぱい生きてくれ。
君たちの力が、俺にも力を与えてくれるんだ。



    妻には言われたよ。
「 蝉の声で力が湧くなんて珍しいひと。私はあの音を聴くだけでうんざりよ 」

    恐らく妻のように思う人間は多いだろう。


    けれど、俺にとっては、君たちは特別な存在なんだ。
    起床して君たちの合唱を聴くと、俺も、君たちに負けないくらい今日を頑張ろうと、力が漲ってくる。

    さあ、今日も一緒に、力いっぱい生命を削ろうじゃないか。


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