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"聡明才弁"と"厚顔無恥"は隣り合わせ

自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件や石破総理が総理就任後のブレにブレた一つならずの発言を思うにつけ、政治家とは何と因果な商売ではないのかと思う。

中国明代の哲学者である呂新吾は、著書『呻吟語』で述べている。

深沈厚重なるは、これ第一等の資質
磊落豪雄なるは、これ第二等の資質聡明才弁なるは、これ第三等の資質


(訳)
どっしりと落ち着いて深みのある人物、これが第一等の資質である。
積極的で細事にこだわらない人物、これは第二等の資質である。
頭が切れて弁の立つ人物、これは第三等の資質に過ぎない。

「人物とは如何にあるべきか」と、
人物の評価基準を述べている一節であるが、この基準は、特に、"人の上に立つリーダーが心すべきこと"ではないかと思う。
その中でも、政治家は国や国民を良き方向に導くリーダー中のリーダーである。その人たちは、絶対"深沈厚重なる人物"であってほしい。

明治維新の三傑である西郷隆盛は、「人を愛し、天を敬う」という"敬天愛人"を座右の銘とした。当に国民的大政治家だった。全国民に"西郷どん"と慕われた。
大西郷没して一世紀半、この大西郷に匹敵する政治家は、未だ日本に登場してはいない。

昨今の日本を取り巻く現実は、当に内憂外患を呈している。こんな時にこそ大西郷の登場が求められる。しかし、今はそれに180度逆行している寂しい限りの、いわゆる政治屋揃いではないか。

私は、石破総理はある意味では第一等の深沈厚重の人物かと思っていたが、さにあらず、昨今の政治家先生(先生とは嫌味ないいようだ)と似たり寄ったりの、第三等の資質である聡明才弁だけの人物ではなかったかと大変ガッカリした。

頭が切れて弁が立つ聡明才弁な人物がリーダーになると、ともすれば、自らの才能に酔いしれて、身の回りに起こる全ての成功は、全て自らの才能のなせるわざだと勘違いしてしまう傾向がなきにしもあらずだ。
そして、謙虚さを失い、傲慢になってしまう。そのため、お世話になった人たちへの感謝の心を忘却の彼方へと消し去ってしまう。

石破総理はそうではない、深沈厚重、真っ直ぐに想いを通す政治家だと私は思っていた。
しかし、総理になったら、自民党の老練政治家先生たちに、「あなたの今までの主張を封印しなければ、自民党は生き延びることができない」と、とうとうと説得され、総理になってからの発言がブレにブレてしまった。

元内閣参事官・嘉悦大教授の高橋洋一さんは言っている。

石破茂首相はこれまで自民党内で非主流派として、「反安倍(晋三元首相)」の急先鋒だった。このため、政権批判したいマスコミにとっては好都合の政治家だった。石破氏も、どのようなマスコミにも「安倍批判」であれば丁寧に対応してきた。これが「石破人気」の本質だろう。

いまは首相として主流派になった。相当な左派政権であるが、自民党なので政策転換するには相当な無理がある。

石破首相は総裁選の際、早期解散しない▽金利正常化(利上げ)▽金融所得課税の強化▽リニア中央新幹線反対▽原発ゼロ▽女系天皇否定せず▽選択的夫婦別姓賛成▽マイナ保険証は強制しない▽アジア版NATO(北大西洋条約機構)創設―などと発言していた。

しかし、首相になると、早期解散する▽利上げしない▽原発推進▽投資立国(金融所得課税強化見送り)▽リニア推進▽原発推進▽女系天皇封印▽選択的夫婦別姓先送り▽マイナ保険証強制▽アジア版NATOは長期課題―と総裁選時と真逆のことを言っている。

以前は何も考えずに、当時の体制の批判をしていたとしか思えない。
いざ自分が政策の推進側になったら、以前の自分の説明を続けられずに、意見を撤回したのだろう。まさに、ブレにブレまくっている。

まさに、聡明才弁が厚顔無恥に成り下がった醜い成れの果てだ。
このような厚顔無恥な台詞や態度は、聡明才弁だけの厚顔無恥なる人物の真骨頂ではないだろうか。

私は、自分自身に思いを致す。
「少なくとも、私は聡明才弁でなくて良かった」と。

聡明才弁なる人物は、自らを聡明才弁だと思っているがために、決して人に弱みを見せない。たとえ、弱いところがあると自覚していてもそれを隠そうとする。
そして、人に対しては、どうしても"上から目線"になる。
まさに、聡明才弁と厚顔無恥は隣り合わせだ。

聡明才弁だけの資質で自分を売っている人間は、ともすれば厚顔無恥な人間に成り下がる傾向がある。

浅学非才の私である。失礼と誤解を省みずに、一言物申したい。

深沈厚重の資質で自分を売っていた人間が、実は聡明才弁だけの資質の持ち主だったとしたら、それが内閣総理大臣だったとしたら、それは当に日本の悲劇ではないだろうか。

私は私ができることをする。私しかできないことをする。そして、微力ながら、私が生まれた日本のために尽くす。

不動院重陽博愛居士
(俗名  小林 博重)




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