ほめ方・叱り方
私のところには「叱り方がわからないんです」という声がよく届きます。
そして、それと同じくらい「ほめ方がわかりません」という声も届きます。
なので今回は、ほめ方・叱り方のコツについて記しておくことにしますね。
支援者の方だけでなく、子育て中の方もぜひ参考にしてみてください。
叱る時の心得
まず初めに、叱る前にぜひ心得ておいて欲しいことがあります。それは「叱るとは相手を不快にさせること」だという認識を持つことです。なぜなら、子どもの要求に対して「NO!」を提示し、気持ちにブレーキをかけさせ、場合によっては反省を強いるわけですから、子どもにとっては大変不愉快な体験になります。
そうなれば年齢が幼いほど、視点は自分から動きません。
多くの子どもが、不愉快な気分にさせられたことに対して、激しい怒りを感じて大きな声で泣き叫んで抗議してくるでしょう。
相手の立場がどうであれ、容赦無く強い感情をむき出しにして投げつけてくるのです。
そうなると、いくら相手が子どもであっても、大人側に心の余裕がなければ、受け止めることは簡単ではありません。
しかもそれだけではなく、一度叱って注意を促したのなら、叱りっぱなしにしてはいけないということも認識する必要があります。
必ず「そう、それでいい」というところまで、見届けなければいけません。
つまり、泣こうがわめこうが、結局あきらめて、結果的に大人の意向に沿ったのなら、必ず最後は「褒める」ことを忘れてはいけないのです。
感じやすい人は叱るのが苦手
人は感情をぶつけられると同じように感情が揺れるようになっています。
いい感情を投げられれば、いい気分になるし、嫌な感情を投げられれば、不快な感情が湧いてきます。
感じやすい人であれば尚更のこと、相手の表情が曇り出した瞬間を見逃さず、感情の動きに神経を尖らせるでしょう。
しかも、不愉快な気分にさせたことに対して、まるで責められているかのような気分にさせられるのです。
なので、感じやすい人は概ね、叱るのが苦手だし、下手です。
何を伝えたかったのか、ゴールはどこなのかわからないまま、尻切れトンボのようにあやふやで終わってしまったり、これ以上私を責めないで、と言わんばかりに、力づくで黙らせようと激しく叱責したり、なぜあなたは私をこんなに苦しめるの?と被害者意識が襲ってきたりします。
そうなると、双方にとって「叱る」行為はメリットが少なくなります。
なので感情に任せず、今、何を伝えなくちゃいけないのか、目的をちゃんと意識すること。
そして、なるべく「叱る」行為は最終手段に据えて、慎重に叱ることです。
では、これらのことを踏まえたうえで、上手なほめ方・叱り方をお伝えしましょう。
上手なほめ方・叱り方10カ条
1 ほめるテクニック・叱るテクニックをフル活用する
<ほめる時の表現方法>
声を少し高めに、抑揚をつけ、笑顔で、首をタテに振り、ゆっくり、穏やかに
<叱る時の表現方法>
声を低めに、抑揚はつけず、真剣な表情で、首をヨコに振り、鋭くズバッと
2 叱るのは最終手段の『どうしても…』の時に使う
3 黄金比(1:3)を意識する→1回叱ったらその3倍ほめる
4 最後は必ずほめて終了を忘れない
5 ほめる時は心を込めてほめる
6 子どもが信頼を寄せる人がほめる・叱る
7 スモールステップでほめる
望ましい行動をゴールとするなら、そこに至るまでのステップを細分化させてできることを増やしていきます。
<例:使ったあとは片付けなさい>
→step1片付けてから遊ぼうね
→step2おもちゃを持たせ手をつかんで箱に入れる
→step3おもちゃを手渡しながら一緒に片付けを手伝う
→step3タイマーを使いながらゲーム感覚で一緒に早く片付ける練習をするなど
8 成功体験を感じさせるためにご褒美を用意しておく
最初はわかりやすいごほうびがいいです(モノやオーバーリアクションなど)。徐々にシールやHUG、言葉をかけるというように、内容を変更させていきます。
9 普段から十分に楽しい時間を過ごし子どもとの信頼関係を強めておく
10 大人の心の安定がカギを握る
大人が心に余裕がなかったり、ストレスや悩みを抱えていると、いくらテクニックを磨いても、効果は半減します。自分の心のメンテナンスは重要です。
スキルはくり返しで磨かれていきます。
一度に全部をマスターする必要はありません。
振り返りながら「少しずつ上手くなっているかも♡」と思えることが大事ですので、思い出した時にぜひ活用してみてくださいね。
鶯千恭子