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あなたが生まれた日のこと

成長するということは、できなかった事ができるようになること。
知らない場所で、これまで出会うことのなかったタイプの人と出会い、やったことのない事をやってみる。無我夢中になる中で、気付いたら成長していた、ということなんだと思います。

だから、子どもは成長のプロ。
大人顔負けのチャレンジャーなのです。

成長のプロであり続けるためには、栄養補給が必要です。
効果的な補給の方法がありますので、ご紹介しておきたいと思います。

物語「あなたが生まれた日」を語る

まず、ママのお腹が大きくなる妊娠期から、お子さんが生まれた頃の写真をご用意ください。
そして、お子さんに「あなたが生まれた日のこと」を話してあげてください。

ポイントは、状況が目に浮かぶように話すこと。
できれば、その時の周囲の人たちの様子も細かく話してあげてください。
『…あの日は確か、桜が満開の季節だったわ。
突然お腹が痛み出してね‥』といった感じで、まるで物語を話すように語ってあげてほしいのです。

「また同じ話?」なんて思わなくていいです。
求められれば、まるで初めて話すかのように、繰り返し話してあげてください。

これは、成長を加速させている子どもにとって、とびきり高栄養のエナジードリンクになります。
なぜかというと、無条件に「愛されている」ことを確認できるからです。

自分のことを大切に思ってくれていたんだと感じられることで、子どもの心は大きな安心感に包まれます。
「安心感」は、窮地を救う武器となるので、子どもが求めてくる時は、惜しみなく与えてあげてください。

心の貯金箱

人は、長い人生の中で、踏ん張らなくちゃいけない時が何度もやってきます。
時には、生きることを辞めたくなる時だってあるかもしれません。

崖っぷちに立った時に、踏ん張れる力とは何か。
それは小さい時から、少しずつ積み上げていくものです。

そう、それはまるで貯金箱。
いざという時のために備えておく「心の貯金箱」なのです。

思い出を手繰り寄せる

いつだったか、児童精神科の先生がこんなことをおっしゃっていました。
「学校に行かれない」
「死にたくなる」
といって苦しんでいる子どもたちが診察にきた時に、必ず聞くことがあるというのです。
それが「あなたが生まれた日のことを教えてほしい」というものでした。

「君、生まれはどこ?」
「生まれた時、おじいちゃんやおばあちゃんはどこにいたの?」
そんなたわいもない会話から「生まれた日のこと」を引き出していきます。

そして、語るうちに、幼かった頃を思い出し、その思い出の中で温かい記憶を手繰り寄せられた子は、今がどんなに苦しい状況にあったとしても、大丈夫なんだとおっしゃるのです。
必ず乗り越えていけるんだと。

確かにそうかもしれない。
成長する時というのは、時に容赦無く、勾配の急な坂を登ることを強いられます。
登り切れるか自信が持てずに、尻込みしてしまう時、そっと背中を押してくれるものは、「がんばれ」というストレートな励ましの言葉ではなく、ただ「安心感」に包まれる<体験記憶>のようにも思います。

「あなたが生まれた日のこと」をぜひたくさんしてあげてください。
そして「心の貯金箱」を満たすのです。
お子さんが将来大きくなって、親の手が離れたあとも、いざという時に守ってくれる財産となりますからね。

鶯千恭子(おうち きょうこ)

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