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シャイネスと対人恐怖症
「人前に出ると不安になる」という人がいます。
中でも「シャイネス」とも呼ばれる人は、「内気」とか「恥ずかしがり屋」と言われますが、この性質は、生まれつきのものなのでしょうか。
このことを、掘り下げてみたいと思います。
どこまでが生まれつき?
子どもは、生後半年も過ぎると、どの子も人見知りが始まりますね。
これは、人生初のシャイネスの出現です。
なので、どの子もシャイネスの要素は持っているのです。
ところが、生まれつき違うのは、その程度、つまり強弱です。
生まれつきシャイネスの強いお子さんの場合、人見知りも強く出るようです。
でも、それが重要なことではありません。
むしろ、大切なのはその後。
つまり、一層強いシャイネスになるか、それとも、強みとして活かせるシャイネスになるかは、周りにいる大人の態度によるのです。
例えば、育つ中で、批判的で拒否されることの多い環境に置かれれば、より強いシャイネスの傾向を持つようになります。
つまり、感じやすい気質を持っているところに、更に、批判的・否定的な養育を受ければ、人に対して安心するというよりも、強い恐怖を感じるようになるのは想像できると思います。
お子さんが、感じやすい気質を持っている場合は、そもそも敏感だし、用心深く、守備範囲をしっかり守る傾向を持つわけですから、声を荒げて叱らなくちゃいけないほどのことは、ほとんど起こりません。
それなのに、彼らの性質に合わない態度でしつけられれば、人に対して警戒心を持つようになるのは、当然かもしれません。
また、感じやすさは、相手の心模様を敏感に感じてしまうという部分においても力を発揮します。「疲れているな」とか、「本当はいやなんじゃないかな」など、表面には出ていない相手の心の背景を鋭く読み取ってしまうところがあるのです。
周りの大人が、そのことに気づいてあげられるか否かは大きいですね。
子どもは驚くほど敏感で、大人自身が、自分が心の余裕を無くしていることに気づけるかどうか。
そして、そのことを、子どもは敏感に感じ取っていると想像できれば、無防備な言動にブレーキをかけることができるようになりますからね。
幻の自己を抱えていると
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また「対人恐怖症」という、神経症の一つの型があります。
どのようなものかというと、以下の通りです。
『他人と同席する場面で、不当に強い不安と、精神的緊張が生じてしまい、そのために、人から軽蔑されるのではないか、嫌がられるのではないかと案じてしまい、対人関係からなるべく距離を取りたい、と行動してしまうこと』
(精神医学辞典 弘文堂)
強いストレスに、長いことさらされ続けてきた過去があれば、人と会って、リラックスするよりも、心が落ち着かず、時には恐怖を感じてしまう、というのもうなづけます。
そして、それだけではありません。
本人自身も気づかないうちに、「幻の自己像」を抱えていることがあるのです。
「幻の自己」とは、現実の自分ではない、幻の自分です。
どういうことかというと、多くの場合、コントロールの強い、万能感に満ちた親御さんがいて、まさにその親が自分に向けた期待であり「親の理想像」のことを指します。
親の期待する「いい子」に、一生懸命に近づこうと必死になることで、「幻の自己像」を抱えてしまうのです。
多くの場合、小学生までは、この幻の自己像を必死に守り続けて成長するのですが、青年期に入ると、幻ではなく、現実の自己像が見え始めます。
期待に応え続ける「理想の自分」と、その自分を客観的に眺める「現実の自分」。
そして、常に他人の言いなりになっている、自分の不自然さに気づくのです。
ところが、本当の自分は、一体何を求めているのかがわからない。
「真の自分」を持つことなく青年期に入ってしまったことで、「理想」と「現実」のギャップ(乖離)に苦悩するようになるのです。
この場合、「真の現実的な自分」を見つけることが、大きな課題となります。
苦悩は悪いものではありません。
次のステージに上がるための、通らなければならない道なのです。
感じやすさを武器に仕上げる
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この山を越える方法として、有名な治療法に森田療法があります。
(興味のある方は「森田療法」と検索してみると詳しく書かれています)
とても参考になる内容なので、簡単に解説しますね。
森田療法では、様々な神経症の症状に対して、あるがままを受け入れ、その上で、現実生活でやるべきことをやる、ということを実践していきます。
例えば、人と関わることに対する不安や緊張も受け入れます。
付随する様々な身体症状も、そのまま受け入れます。
ところが、実生活においては、やるべきことがたくさんあります。
仕事でも、家庭生活においても。
その「目的」に沿った、やるべき「行動」を、実際に実行し続けるということを目指すのです。
途中で逃げ出したり、投げ出すことなく、継続させる。
その中で、自分を苦しめてきたものは、日常生活に支障がなければ個性の範疇であり、大切なのは、生き生きと自分の人生を生きることができればいい、ということに気づいていくのです。
これは、何も治療を受けるか否かの話ではありません。
生きる上でとても大切なことです。
感じやすい性質を持つ人は、そのことに気づくチャンスがいっぱいあって、それが「対人恐怖」であり、「シャイネス」なのだと思うと、大切にしなければいけないのは、その性質をどうやって生かすかということだと思うのです。
鶯千恭子(おうち きょうこ)
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