ハンドクリームは、僕たちから自由を奪う。
近頃、寒い日が多くなって肌がやけに乾燥する。
お風呂あがりなんかに、指先がかさかさすることが増えた。
ハンドクリームを引っ張り出して塗る。
しかしそれを塗ると、他のものに触れなくなる時間が生まれてしまう。
自分の手指にありとあらゆる種類の汚れを吸着し、触れたものをすべてベタベタにする。
まさに百害あって一利なし、だった。
たとえば、外に行く際にハンドクリームを塗っていくと、色々な不便がある。
車や自転車のハンドルを握ることができなかったり。
スマホや鍵に、べっとりと指紋をつけてしまったり。
塗ったハンドクリームが乾くまでの時間は長い。
なので道すがら女性がチンピラに絡まれていても、助けることはできない。
もしも殴り合いになってしまったら、相手の服や顔をベタベタにしてしまう恐れがあるからだ。
通りすがりの黒服の男に拳銃を突きつけられ、指で弾丸を挟んで止めても、その弾丸を汚してしまうから、どうもためらいが生じてしまう。
これはハンドクリームに、僕たちの自由が奪われているといっても過言ではないのではないか。
いつだったか『ニベア風呂』が話題になったが、あれなんかは厳重な牢獄と同じような心理的効果をあわせもっているにちがいない。究極の拘束。不自由。そういった倫理的問題ゆえの炎上だったのかもしれない。
そんな悪いことづくしのハンドクリームなのだが、一つだけそれに対処する術がある。
塗ったあと、洗い流せばいいのだ。
これでベタベタにならず、指につく汚れも最小限にとどめることができて、衛生的だ。
水よりはお湯をおすすめする。
ハンドクリームは油なので、お湯のほうがよく落ちる。
これから乾燥の季節がやってくる。
外出の際などは、ぜひ試してみてほしい。