コメントリレー小説『三枚のお札』
ご参加いただいた皆さま
※この記事は、毎週土曜日開催の企画『コメントで、リレー小説しませんか』で紡がれた物語を編集したものです。
本編
「それでは行ってきます!」
和尚さんにもらった三枚のお札を携える小僧の元気な声が、深い山々にこだました。
小僧は栗拾いに夢中になるあまり、山を一つ越え、二つ越えして全く知らないところで老婆に出会ってしまうのでした。
老婆は齢八十を過ぎているように見えた。
いや、老婆に見えたのだが…それは歯を黒く塗りつぶした志村けんひとみ婆3だった。
志村けんのひとみ婆さんは、小僧に三度「栗をくれ」と同じ話をし、四度目の「栗をくれ」と言おうとした時に、栗を自分で持っていることに気付いた。
「それでは今から栗を茹でて来ますんで、30分ほどお待ちくださいねぇぃぇぃぇぃ」
ひとみ婆さんは、やけに間延びしたクセの強い話し方でそう言った。
小僧は、ひとみ婆さんの栗が栗の形をした何かだと気付いたので「一度その栗を見せてくれませんか」と問い掛けた。
「それはようぉ~ぉ~♪あたしの2本の前歯だよぉ~ぉ~♪」ひとみ婆さんはおどけてみせた。
「冗談だよぉ~♪本当は私のよぉ~♪…」
その時 「数字(縛り)を忘れるな!」という天の声が3回聴こえた気がした
「これはお告げだ!」
なにかを勘違いした小僧は、1枚目のお札を使った。すると、
一つの大きな鍋があらわれた。
「この鍋に沢山のお湯を100℃まで沸騰させてのぉ〜、ぉ〜。栗を茹でるんじゃ」
小僧は
「お湯、沸騰させるんじゃなくて水じゃね?」
とひとみ婆さんに悪態を付いた。
ヤバい(笑)
「二度とそんな口がきけないようにしてやろうかねぇ」
ひとみ婆さんは言った。
こうして小僧はひとみ婆さんに小突かれて、風呂のように大きな鍋7分目まで水を入れることになった。
そうして湯がグラグラに沸いたころ栗と小僧が放り込まれた。
「アチチ!」驚いた小僧は反射で叫んだが、熱くない。
なんと小僧は、自分が拾ってきた100個の栗と同じ姿になっていたのだ。
「これじゃあ、小僧じゃなくて栗じゃね?」
ふたたび、悪態。
「そうです!わたすが変な栗さんです」
へんな栗さん♪だから変な栗さん♪
ひとみ婆三は、へんな栗さんに変身💧
恐怖で2度見する小僧に襲いかかろうとした。
驚いた101個の栗たちは鍋から飛び出して坂を転がり始めた。こうしてひっつきもっつき転がっているうちに大きな1つの栗になって手足も生えてきた。
「お風呂のあとはちょっとコーラが飲みたいな。」
大栗小僧は自動販売機でコーラを買おうと立ち止まり、鬼皮ポケットからお札を取り出して自販機につっこんだ。
するとどうしたことだろう、自販機からは何百個もの小さなだるまが雨あられと吹き出してくる。
大栗小僧はなだれを打つだるまの波に揉まれ、追いかけてくるひとみ婆さんから山一つ離れた辺りまで押し流されたのだった。
ひとみ婆さんからは逃れたものの、大栗小僧は途方にくれた。辺りは見知らぬ山、足元には無数の小だるま、そして鬼皮ポケットに残り一枚となったお札。
そのとき、小だるまの一体が話しかけてきた。
「こんなに転がっちゃぁお腹がすいた。口からコーラが出そうだよ。」
すると残りの99体の少ダルマ達もそうだそうだと頷いた。「ちょっとでいいから栗が食べたいなぁ♡」
「あのね~♪そんなもんね、適当に何でもいれて、栗チャーハンでもなんでも炒めちゃえばいいのよ!」
レミパン🍳片手に、レミちゃんは栗チャーハンを作る。99体の少ダルマ達も1列に並んで、ソワソワ待ちきれない(´ρ`)
「残り時間、3分です!」
番組スタッフの1人が声をかける。しかしレミちゃんは重大な見落としをしていた。むき忘れていたのだ、栗の皮を。
1台のカメラがむき忘れた栗の山を映し出す
するとヒナが生まれる前の卵のように栗の皮に徐々にひびが入っていくのが見て取れた
カメラがズームアップする
栗から何が生まれるのかを固唾を飲んで見守る100体の少ダルマ
中からは絵に描いたような神が現れた。
両の手に2枚ずつお札を持っている。
「お前たちが使い損ねている札は、この金の札か?それともの銀の札か?」
と尋ねた。
4枚のスーパーデッキ登場!!相手は神!
全小栗が見守る中
大栗小僧は口を開いた
「オラの札はこれだけだ!」
いうや否や大栗小僧はポケットから最後の札を出した。
デュエル!!
大栗小僧の最後の切り札『封印されしボルシャック・次元の超越・お札』は神の5枚のシールドすべてを破壊し、4000あるライフを削りきり、フィールドの敵モンスターをすべて墓地送りにした。
大栗小僧は無事デュエルに勝利し、元の小僧の姿となってお寺に生還することに成功した。
するとなんとそこにはレミちゃんと和尚、ひとみ婆さんが仲良くいろりを囲んでお茶を啜っているではないか。
「いや〜、お使いを頼んだ小僧がまだ帰って来んでのお〜。
久しぶりに3人でパーティ🪅するために、色々買いに行かせたんじゃが…」
と和尚が2人に向かって喋っている。
「いや~遅くなりもうした💧いろいろ手こずっておりましたが戻りました」
小僧が頭をφ(..)カキカキしながらそういうと、
「はっ❗1.2.3危ない」和尚がとっさに一枚の袈裟を広げ、みなのものを守った。
そこには、天井からつり下がるスパイダー山姥が🕸️👹((( ;゚Д゚)))💧
「結界を破って現れるとは」和尚が言う。
小僧は思った。先程山姥・ひとみ婆さんを倒したのではないか?
「ふん。小僧。儂らは山姥3姉妹。さっきはひとみをかわいがってもらったようで」
スパイダー山姥がニッカリと笑って言う。
「小僧、次は儂の相手をせぬか?」
とスパイダー山姥の歯のない口が笑う。
「歯がないのも気持ちが良いというぞ」
小僧を押し除け和尚がいの一番に手を上げた。
「そう言う勝負なら儂がお相手いたそう」
こうして、歯がない和尚とスパイダー山姥の『わんこそば早食い対決』が幕を開けた。用意されたそばはおよそ100皿。こうしている間にも、レミちゃんによってその数は増えていく。
和尚がそろそろ限界を迎えそうな頃、スパイダー山姥は全然平気でガンガンわんこそばをかっ食らっている。
それもそのはず、未だ姿を見せぬ山姥3姉妹のもう一人に知らぬ間に入れ替わっていたのだから。
「おばば、儂の負けじゃあ」
「アーラ♡和尚さんもうお腹いっぱいになっちゃったの?おいしい〜?おいしかったでしょう?そうなのみんな美味しいって言ってくれんのよコレ♪。おばばさまはまだまだ100皿くらいいけるでしょ?」レミちゃんは勝負を無視して、どんどん入れ替わるおばばにわんこそばをすすめた。
こうして山姥達は、際限なく提供されるレミちゃん蕎麦を食べ続け、レミちゃんの陽気キャラに完全に食われてしまったのだった。
気がつけばみんなお腹いっぱい♡。
秋っていいですね!
おしまい。
めでたしめでたし。
編集後記
小説の可能性、というものをよく考えます。
自分が書けるものの限界、それが誰かに届くということの神秘、計算と誤配。
こうして完成したコメントリレー小説を眺めていると、たしかにそこには特定の個人がいて、ああここは誰々が書いていたなここでシーンが切り替わるんだよなここは時空が歪んでいたなとか色々思い出せるのですが、思ったよりもすらすら読めてしまう。
誰かが『封印されしボルシャック・次元の超越・お札』とか言い出しても、流れのひとつとしてしまうことができる。(かたなしさん、ありがとうございます)
「二度とそんな口がきけないようにしてやろうかねぇ」とか言ってひとみ婆さんが急にキレても、突如として天井からスパイダー山姥がつり下がってきても、大栗小僧がお札を自販機につっこんでも、それが流れになる。(ここらへん、爆笑してました)
そういう流れが、教えてくれる気がするのです。
小説は可能性に満ちていて、楽しくて、型にはまらなくて、メッセージ性とか、みてくれとか、意外とどうでもよくて。
小説はもっと自由でいい、と。
▼現在進行で、流れています。
▼よければ、ひとつ。