見出し画像

brownie ブラウニーと、茶色の石


brownie ブラウニーと、茶色の石  (英国の不思議な妖精と石達 その3)


イングランド南西部、コーンウォールの小さな村に、
スコット・トマスという男が住んでいた。

この地方は銅の産地として知られており、
スコットも日がな一日、暗い洞窟の中で銅を掘っていた。
泥にまみれて働き続けたところで、生活はいっこうに楽にならない。
仕事が終われば身体はぼろぼろに疲れ切り、やっとの思いで家に辿り着くと一切れのパンを口にしてただ寝るだけの生活を続けていた。


そんな毎日に疲れ切ったある日、
ランズエンドの海辺で、
切り立った崖に差す夕陽を眺めながら、
スコットはひとりぼんやりと海を眺めていた。


すると、
目の前の海が突然うねりを上げ、竜巻となり、
高く盛り上がった海柱の中から、見上げるほどの大きな巨人が現れた。
頭は荒々しい雄牛で、人間の手足を持ち、身体は山羊の毛に覆われている、
恐ろしい形相をした怪物だ。

ところがスコットは、不思議なことに少しも恐ろしいとは思わず、悠然とその怪物を見つめていた。
「おまえは、わたしのことが恐ろしくないのか?」
この世の者とは思えない声で、怪物が尋ねた。
「あなたは、海を守る神さまですね。」
怖がるどころか人懐っこく微笑みかけるスコットに、怪物は
「清らかな心を持つおまえに、これを授ける。」



何か小さな物が海からやってきた。
スコットの手のひらに乗っているのは、茶色の細長い石だった。
スコットは宝物のように、その石を握りしめ、帰路についた。
長いこと使っていない流し台で、その石を洗い、埃をかぶった台所の片隅にその石を置いて眠りについた。


次の日、いつも通りの退屈な仕事を終えて家に帰ると、
スコットは自分の目を疑った。
埃まみれの部屋は隅から隅まで綺麗に掃除され、
台所の流しもトイレもピカピカに磨かれている。
それだけではない、
作業用の泥だらけの服も綺麗に洗ってあり、アイロンまでかけてある。
(これはどうしたことだ?
まるで家に憑く妖精、ブラウニーが現れたかのようだ。)
密かにそう思ったが、言葉には出さず、
感謝の気持ちとしてコップ一杯のミルクを台所の片隅に置いた。

次の日、スコットは仕事に出かけるふりをして、裏口からそっと家の様子を覗いてみることにした。
すると、あの巨人からもらった茶色の石から、髪や髭をぼうぼうにはやした茶色の服を着た小人が現れた。
小人は忙しそうに動き回り、次々に家事をこなしてゆく。
スコットは、そっと仕事に出かけ、何もなかった顔をして帰路についた。
台所からはこんがり焼けたブラウニーの良い香りがしている。
テーブルには暖かいシチューと焼き立てのパン。
最後に口にしたデザートのブラウニーは、昔、母親がよく焼いてくれた甘く懐かしい味がした。こんなに幸せな気持ちになれたのは久しぶりだ。
その夜はブラウニーのお礼に、
ブラウニーに、山盛りのクリームをそっと隠しおいた。

その夜、スコットは大切な茶色の石を枕の下に入れて眠りにつくことにした。
夢の中に現れたのは、海で出会った醜い巨人。
そしてこんな歌が聞こえてきた。

こつこつ 働け、こつこつ 働け、苦しみ辛さ 解き放ち、
こつこつ 働け、こつこつ 働け、喜び楽しみ かたわらに・・・

次の日から、暗い洞窟での銅堀りの仕事が少しも苦にならなくなった。
この歌を心の中で唱えるよう歌っていると、嬉しさ、喜び、楽しさのうちに一日の仕事が終わっている。
そして家に帰れば、綺麗に片付いた部屋に暖かい食事。
寒い日には、暖炉に火までくべてある。

そして心優しいスコットは、
毎日忘れることなく、ブラウニーへの感謝の気持ちを小さなお返しで表していた。

そんな毎日をコツコツ続けているうちに、知らないうちにどんどんとお金がやってきて、仕事でも皆に信頼され頼られるようになっていった。
昔よりもずっと明るくなったスコットは、優しく愛らしい妻を娶った。
大きな家に引っ越しても、ブラウニーは家に憑くのではなく、
スコットに憑いてやってきた。


愛らしい妻は、ブラウニーの仕事を邪魔しないように、時々家を空けてのんびりした。そしてそのお礼にブラウニーにヒースの花を丘から摘んできた。

二人は度々ランズエンドの海辺に出かけ、海の巨人に手を合わせて感謝することも忘れなかった。
そして、スコットは茶色の石とブラウニーのおかげで、
いつまでも、いつまでも、いつまでも、幸せに暮らしたというおはなし。



<物語りの解説>

スコットは銅を掘る採掘の仕事に毎日疲れ果てていた。
ある日、海辺で恐ろしい形相の巨人と出逢う。
外見に惑わされることなく誠実に接するスコットに、巨人は茶色の石を与えた。
その石からは妖精のブラウニーが現れ、スコットのいないうちに家の仕事を手伝ってくれる。
海から現れた巨人は、昔アイルランドに棲みついていたフォモール族で、その後生き延びた者はブラウニーという妖精になったという。
ブラウニーに感謝しながら、茶色の石を枕の下に入れて寝ると、巨人からのメッセージを受け取る。
(真面目に楽しみながらコツコツと働け) 
茶色の石はブロンザイト、無気力をやる気へと変え強い精神力を与えてくれる石。仕事上、他人との信頼関係を築く、良いお守りとなる石だ。
ブロンザイトとブラウニーを大切にして、感謝の気持ちを忘れないことで、スコットは幸せな生活を手に入れることが出来た。




<ブラウニー>

ブラウニー(brownie)は、中世のケルト(ヨーロッパ北西部)、特にスコットランドやコーンウォール地方の民間伝承に見られる、家の精霊の一種で、ゴブリンともされる小妖精である。彼らは悪意がほとんど無く、善意のみの、家に憑く妖精( household deity)である。イングランドでは "brownie" また、brounie とも綴る。スコットランドでは broonie、urisk とも呼ばれる。

ブラウニーの容姿は、身長は1メートル弱、髪や髭は伸ばし放題、茶色のぼろを身にまとっている。 この茶色(ブラウン)を基調とした容姿から、ブラウニー(茶色い奴)と呼ばれている。性格は温厚で忠実。

ブラウニーは主に家に住み着き、家人のいない間に家事を済ませたり家畜の世話をするなど、人間の手助けをする。 人間はその礼として、食べ物などを部屋の片隅にさりげなく供えるなど、民間信仰的な様式を備えている。 一方で天の邪鬼な気質もあり、整理整頓された家を、家人のいない間に散らかしたり、悪戯小僧的な性質も併せ持つ。恥ずかしがり屋で、かまわれることを好まないので、自分の仕事に口出しされることを嫌う。彼らを見ることが出来るのは、子供か、正直者だけ。

ブラウニーへの礼は決してあからさまに付与せず、あくまでもさりげなく部屋の片隅など隠すように置き、ブラウニーに自発的に発見させなければならない。 もしあからさまに与えてしまうと怒って家を出て行ってしまうとも言われる。

また、ブラウニーが家で働く目的は衣類を手に入れることなので、衣類を与えてしまうと働かなくなり、家を去ってしまうと言われる。与えた衣類の材質が上等すぎると自慢しに妖精界へ帰ってしまう、かと言って粗末すぎても、やはりヘソを曲げて姿を消す。別の説では、ブラウニーは人間から贈り物をされるまで働き続けることが宿命なので、贈り物を貰った瞬間に解放され、妖精界に帰って行くそうだ。

ブラウニーとは、「妖精化された先住民族」

先住民族であったフォモール族は、太古の昔からアイルランドに棲みついていた。フォモール族は、恐ろしい魔力をもつ巨人の一族で、海の底に住み、巨石を苦もなく扱い、人間と同じ腕と足に動物の身体の部分を持つ醜い姿の怪物であったと言われている。アイルランドの最後の侵入者ダーナ神族は、フォモール族の隙を付いて彼らをアイルランドから駆逐した。その後生き延びた者は妖精としてひっそりと暮らしているといわれている。名前の由来となった茶色い服は彼らの伝統衣装であり、わずかの報酬と引き替えに簡単な仕事を手伝うというのは、部族の中で穏健・従順な連中が積極的に征服民の仕事に精を出したということを示す。服を贈ると怒って出て行くというのは、彼らが自分たちの服装(=文化)を何よりも大切にしているという証拠であり、束縛や口出しを拒むというのは、征服民と同化することを拒絶する、という意味合いともとれる。




<ブロンザイト エネルギー>

ブロンザイトは、やる気を引き出し、成功へと導く石。内面的な成長を促し、無気力をやる気へと変え、強い精神力を与える。その為、「成長の石」「豊潤の石」とも呼ばれている。対人関係では、自分が関わる人々に対して、敬意を持って接することができるようになる為、深い信頼関係を得ることが出来、成功へと繋がると言われている。

ブロンザイトを持つことで、公正で誠実になれるといわれ、『礼儀・礼節の石』とも言われている。仕事上、他人との信頼関係を築く上で、良いお守りとなるだろう。目上の方や年配の方と接する時に身につけると、周囲の人の信頼をより引き寄せてくれる。ひとりよがりの判断をせず、物事を見極める力を養う。自身にとって最も重要な選択に焦点を当て、決断力を強化する。自分ひとりでは解決出来ない問題に直面したときの助けとなる。何もしないという状態、ただそこに存在することの大切さを問う石。心に完全な平穏をもたらすので、感情の起伏が激しい人にお勧めの石だ。悪意、呪い、呪文などを跳ね返すエネルギーを持つ。ただし、自分が悪意を持って人の不幸を願って使用した場合は、極度の衰弱感を感じ、呪いが増幅されるという。悪意を吸い取り、エネルギーの交流を断ち切り、悪意の発信源を断つ為には、ブロンザイトとブラックトルマリンを合わせて持つと良いと言われている。パニックに陥りそうなときは、この石を握りしめることで、平常心を取り戻し、物事を冷静に見つめ、自己主張が出来るように促す。物事を客観的に見つめ広い視点から判断をくだせるように助けてくれる。ストレスを克服し、ネガティブな思考パターンを変え、正しい心で生きる方法を教えてくれる。



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?