卒業制作「野菜の典型」
多摩美術大学統合デザイン学科卒6期生の光本おとはと申します。深澤直人先生のプロジェクトに所属していました。
2023/1/18~22に開催された統合デザインの卒展(多摩美術大学統合デザイン学科卒業・修了制作展)で、「野菜の典型」をテーマに展示を行いました。お越しいただいた方、応援してくださった方、力を貸してくださった方本当にありがとうございました。
今回は、私が制作した卒業制作について紹介します。
包丁で野菜を切り、みずみずしい断面が表れた時の喜び。
空気の圧力の中育ったぱんぱんなプチトマト。
土の圧力の中育ったみちみちなにんじん。
一点に線が集まるたけのこ。
この先、野菜はかたちを失うかもしれない。
私は、卒業制作として、ボールペンで描いた野菜の線画と日常の素材を使った野菜のオブジェを制作しました。
キャプション文です。
未来の野菜はどうなっているのだろうか、品種改良、カット野菜。野菜のすがたは日々変化している。今の野菜は自然物と人工物のあいだにある。白菜の半分に切った断面は美しい、プチトマトはぱんぱんでつやつや。今の野菜のエッセンスを抽出したい。それが未来に残すべき野菜の姿なのではないだろうか。わたしたちがどう野菜を捉えているかを知りたい、わたしたちがどう野菜を認識しているかを知りたい。ボールペンの線画と日常の素材を使ったオブジェ作品を通して「今」の野菜の典型を表現した。
野菜に興味を持ったきっかけは、
ピーマンの断面が美しいと思ったこと。
リブ という機能を持ち、無駄な造形がない。
それでいてひとつも同じかたちがなく愛らしい。
そこからからだんだん野菜に惹かれていった。
野菜の魅力の根源を知りたいと思った。
そしたら、野菜のかたちは日々変わっていっていることに気付かされた。食卓ですぐ食べられることが重宝され、カット野菜、加工食品が増えている。野菜はかたちを失うかもしれないと気づいた。今わたしが感じている野菜の魅力もなくなってしまうかもしれない。
なくなる前に、今の野菜を記録したいとと思った。
なくしてしまう前に、今の野菜の魅力を伝えたいと思った。
写真では今の野菜は多く残るだろう。でも、今、野菜ひとつひとつに感じている魅力だけを抽出したものを残したかった。
包丁で野菜を切り、みずみずしい断面が表れた時の喜び。
空気の圧力の中育ったぱんぱんなプチトマト。
土の圧力の中育ったみちみちなにんじん。
一点に線が集まるたけのこ。
一本のつながった長い線が集まった長ねぎ。
人は自然から生きるエネルギーをたくさんもらっている。
自然と触れ合う機会が減ってきている今、
もっとも接しやすい自然は野菜だと思う。
だから、野菜のかたちをラクさのために
安易になくしてしまってはいけないと思う。