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億を売る妻 No.25 地獄の日々

新型コロナウィルスの猛威は収まるどころか
ますます拡大していきました。
外出などが制限される世の中になり、
在宅ワークなどが増え、
ネットビジネスの需要が一気に増えていき、
私達にとっても経験したことのないような
状況になって行きました。

昼夜問わず注文が来るようになり
携帯音が一日中鳴り響くようになっていきました。
注文数も秒速で増えて行き、
何百から何千と桁が変わっていきました。
彼女はそれでも売る手を止めようとはしないのです。
その時はまだ注文を処理するシステムなども
何も導入してなかったので、
1日何百件分の送り状は
名前、住所、電話番号など
全て妻がエクセルで手入力している状況でしてた。

そして注文数が3000件を越えるようになってしまっていたのです。
お客様からは発送が遅いという
クレームの電話やメールも殺到し出してきました。

いよいよ私もこの状況が恐怖でしかありませんでした。
私たち夫婦とアルバイトさん合わせても
7人程度おんぼろ9坪事務所の、
極小会社でしたので、
在庫の置き場もなければ、
注文をさばききれる為の人員もいない。
もしここで彼女が倒れたらどうなるのか?
と最悪廃業のことも頭をよぎりました。

朝から夜遅くまで仕事漬けの毎日になり、
働きすぎて食事もろくに取らず、
妻の体重が6キロも落ちてしまっていました。

毎日ネガティブな事ばかり
言うようになっていきました。
ボロボロボロボロと泣きながら
『今すぐベランダから飛び降りたいーーッ』
と叫びながらそれでもパソコンを叩く
手は止めようとはしないのです。

私自身も精神的にも肉体的にも
追い込まれて行きました。
私は泣きながら妻に懇願しました。
『もうこれ以上はどう考えても無理やし、
販売をストップしよ』と。
そして妻もパソコンを打ちながら、
ボロボロと泣き
『それだけは絶対にいやッ』
と反論して来ます。
私が『もう十分売れてるし、
もしあんたがここで倒れたら、
どれだけのお客さんに
迷惑がかかるのか考えてる?』
と言い返し、
『何でそこまでやろうとするの?』
と尋ねました。

すると彼女は泣きながら絞り出すような声で
『もっと稼ぎたい』
というのです。

私はこの返答を聞きながら、
呆気にとられました。

それでも
泣きながら腱鞘炎の手をブンブンと振り
パソコンを打ち続ける妻をみていると、
何故かジワジワと笑いが込み上げてきました。

こいつホンマにヤバいなあと。笑

私達は妻が商売を始めて以来の
最大のピンチを向かえるようになっていったのです。

つづく...

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