億を売る妻 No.6 人の問題を自分の事のように考える
勢いよく辞めてみたものの、
再就職への道は厳しいものでした。
彼女はここを離れる気が無かったので、
私が自動的にこの町で再就職するしかありませんでした。
しかし人口2万人ほどのこの町には、
職種自体も少なく私に出来そうな仕事もなく、
ここから車で1時間程度で通える、
大手企業が支店を構えるくらいの街があり、
そこで仕事を探す事にしました。
条件はもちろん初任給がある程度貰えるところと、
もう一つ昇給やインセンティブが見込めることでした。
その条件に満たしているのは不動産か保険の営業くらいでしたので、
この2択で探しました。
幸いな事に大手保険会社の最終面接まで
残ることが出来たのです。
ただ一つ問題がありました。
それはペーパーの適正テストがあることでした。
昔から勉強が特に数学が苦手で、
高校の時に100点中4点という数字を叩き出したペーパーテストにめっぽう弱い私にとっては大問題でした。
彼女にその事を伝えると、
早速特訓してくれるというので、
問題集を買いにいきました。
苦手な数学から始めると、
初っ端からルート問題が出てきたのですが、
全然分からず彼女の説明を聞いても、
やっぱりわからないのです。
彼女「わかる?」
私「わからん。。」
彼女「わかる?」
私「わからん…」
彼女「なんでわからへんの?」
と言われながら、
何回も何回も説明を受けても、
やはり理解が出来ず、
仕舞いには彼女が怒りながら、
「アホすぎて、ムカつくわーっ!」
「アホすぎて、無理ーっ!」
といいながら、
持っていた問題集の角で
私の頭を叩いてくるのです。
私は学生時代以来、
久しぶりに勉強で
めちゃくちゃ怒られました。
そして彼女だけではなく、
彼女のお母さんもとても協力してくれました。
問題集を買ってきてくれたり、
彼女が仕事でいない時も
私だけを自宅に呼んでくれ、
一緒に問題を解いてくれたりしました。
しかしそんな努力のかいも虚しく
最終面接の結果は、
不採用となってしまいました。
悔しさよりも、
彼女とお母さんに申し訳ない気持ちで
いっぱいになりました。
彼女が私の問題を
自分のことのように捉えるのは、
おそらくお母さんが
影響しているのでは無いかと思います。
これまでお母さんは、
お金のない私の為に食料をくれたり、
私のお昼のお弁当を営業先まで届けてくれたり、
彼女とケンカをした際には、
私に電話をかけてきて、
「あの子に負けんと言い返しよーっ」
と励ましてくれたりもしました。
なんで出会ったばかりの私の為に、
ここまでしてくれるのか、
まるで理解できませんでした。
今思うと
人達なのです。
今まで生きて来てこんなにも、
人が自分に関心を寄せてくれている
と感じた事がなかった私には、
そんな気分になりました。
そして