【大月書店通信】第177号(2023/10/30)
「大月書店通信」第177号をお届けします。
大手デパートでは61年ぶりとされるそごう・西武労働組合のストライキで、久々に労働争議が全国ニュースになりました。
本来、働く人が賃金や職場環境を改善するための重要な手段である労働組合ですが、近年は組織率も低下し、存在感をなかなか示せていません。そんな中でそごう・西武の争議は労働運動の意味をあらためて考える機会になりました。
労働組合が誕生したのは産業革命期のヨーロッパ。児童労働も含む過酷な搾取、貧困と不衛生、そして官憲による容赦ない弾圧のなかでも各国で労働組合が組織され、結集して大きなうねりとなっていきます。
今月刊行の『万国の労働者、団結せよ!――マルクスと第一インターナショナルの闘い』は、まさにその時代の労働運動の稀有な記録です。
マルクスが主導した国際労働者協会(第一インターナショナル)の決議文や演説原稿などを抜粋して収録。多くは教育も受けていない工場労働者や職工たちが、資本家との階級闘争、そして資本主義を克服した未来社会を真剣に議論していた当時の熱気が行間から伝わってきます。
また、工場主らが外国から労働者を移送してストライキに対抗するといった、現代のグローバリゼーションを思わせる記述も興味深いです。労働者がなぜ「国際的連帯=インターナショナル」を求めたのかも、そこから見えてきます。
400ページ超のいわゆる「鈍器本」ですが、秋の夜長にめくってみてはいかがでしょう。
◆マルチェロ・ムスト[編著]結城剛志[監訳]『万国の労働者、団結せよ!――マルクスと第一インターナショナルの闘い』
↓試し読みはこちらから↓
【新刊案内】『万国の労働者、団結せよ!』ほか10月の新刊6点
10月の新刊です。お近くの書店にてお求めください。(定価はすべて税込)
●労働者たちはいかに資本主義と格闘したのか
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『万国の労働者、団結せよ!ーーマルクスと第一インターナショナルの闘い』松井暁[著]4,840円
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マルクスが主導した国際労働者協会(第一インターナショナル)の決議文や演説を編纂・解説。資本主義の諸問題を問い、将来社会をめぐって論争した当時の労働者や活動家たちの肉声が、新たなリアリティをもって現代によみがえる。
●教育にこそフェミニズムが必要だ!無意識の性差別の再生産を止めるために
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『教室から編みだすフェミニズムーーフェミニスト・ペダゴジーの挑戦』虎岩朋加[著]2,530円
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男女平等をうたいながら、性差別的な言葉や行為に満ちた学校空間。差別と抑圧を超え、自己を解放する力をもたらすために教育に何ができるのか? 性差別の再生産を止め、既存の権力関係に変化をもたらそうとする新しいフェミニズム教育論!
●危機を見据え、わたしたちの未来を切り拓く
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『エコロジーからの抵抗ーー支配と抑圧を乗り越える』
唯物論研究協会[編] 3,850円
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環境危機が世界的な課題となるなかで、エコロジーをめぐるさまざまな言説や運動も盛り上がりを見せている。資本主義的支配と抑圧の構造全体を乗り越える営為としてエコロジー思想を捉え、構造の変革と民衆のオルタナティブな方向性を探る。
●特集=いっしょに考えようジェンダー平等社会
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『月刊 クレスコ』11月号(no.272)
全日本教職員組合・クレスコ編集委員会[編] 550円
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2023年の日本のジェンダーギャップ指数は146か国中125位で過去最低を記録。一人ひとりの人権を大切にするジェンダー平等社会をいかに構築していくのか、学校現場でも喫緊の課題である。各地の実践やとりくみを紹介しながら論じる。
●特集=国のGX戦略と自治体――エネルギー政策を問う
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『季刊 自治と分権 no.93』
自治労連・地方自治問題研究機構[編] 1,100円
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●首長インタビュー 遠藤雄幸福島県川内村長 ●政府・財界のGX戦略の問題点 大島堅一(龍谷大学) ●再生可能エネルギーでためされる地域の力 傘木宏夫(NPO法人地域づくり工房)ほか
●ジャニーズとテレビ/関東大震災100年
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『放送レポート 11月号 no.305』
メディア総合研究所[編] 550円
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●ドキュメンタリー台本●番組批評●制作者の素顔●ラジオの現場から●スポーツとマスコミ●映画の中のマスコミ●話題の本から●放送をめぐる動きほか
【話題の本・本の話題】最近の新刊の書評掲載ほか
『ここにある社会主義』一部をnoteで無料公開中!
9月の新刊『ここにある社会主義』(松井暁著)の「はじめに」と第1章を大月書店のnoteで公開しました。ぜひご一読ください。
(第1回)「新しい資本主義」じゃなくてこっちでしょ。『ここにある社会主義』まえがき~第1章を公開!
(第2回)資本主義は、実はコミュニズムの基盤の上に成り立っている?
(第3回)「会社」がコミュニズムを準備する?!
最近の新刊の書評掲載
●デニ・ムクウェゲ[著]中村みずき[訳]米川正子[監] 『勇気ある女性たち』
日本経済新聞 10月14日(評者・峯陽一)
しんぶん赤旗 10月8日(評者・河原理子)
西日本新聞 10月21日(評者・渥美志保)
●風巻浩[著]/金迅野[著] 『ヘイトをのりこえる教室』
ふぇみん 10月5日
●ジェシカ・ハンフリーズ[文]ロナ・アンブローズ[文]シモーネ・シン[絵]国際NGOプラン・インターナショナル[訳・解説] 『世界じゅうの女の子のための日』
神奈川新聞 10月3日
●鈴木隆子[著] 『ろう者と聴者のかけはしに』
@Living 10月2日
●高岡滋[著]『水俣病と医学の責任』
『いのちとくらし研究所報』2023年9月
【イベント】『〈悪の凡庸さ〉を問い直す』刊行記念トークイベント
『〈悪の凡庸さ〉を問い直す』刊行記念トークイベント田野大輔 × 百木漠 × 小野寺拓也
アイヒマンに〈悪の凡庸さ〉を見出すことは可能なのか?
日時:2023年11月11日(土)16:00~17:30
【配信参加】参加費:1,650円
【来店参加】参加費:2,200円 定員35名
主催・会場:今野書店(杉並区西荻北3-1-8)
(イベント告知文より)
アイヒマンは組織の歯車として、上からの命令に従っただけである。
自ら考えることなく権威に服従し、上意下達を繰り返していった結果、巨大な悪を成し遂げるにいたった。
――この一般に理解されている「歯車理論」はアーレント自身が否定していたものであり、アイヒマンが凡庸な役人ではないという点では、本書の編著者も共通理解に立っています。しかし、歴史研究者とアーレント研究者の間には、なおも認識の隔たりがあります。
本書でおこなわれた「対話」に引き続き、今回のトークイベントでは、歴史学の視点からアイヒマンに〈悪の凡庸さ〉を見るのは適切ではないとする歴史研究者と、アイヒマンにあってこそ〈悪の凡庸さ〉という概念は意味をもつとするアーレント研究者が、〈悪の凡庸さ〉概念をめぐってさらに議論を深めていきます。
詳細・お申し込みはこちら
※田野大輔さん・百木漠さんはリモートでの登壇です。
●登壇者プロフィール
田野大輔(たの だいすけ) 1970年生まれ 甲南大学文学部教授
百木漠(ももき ばく) 1982年生まれ 関西大学法学部准教授
小野寺拓也(おのでら たくや) 1975年生まれ 東京外国語大学大学院
総合国際学研究院准教授
K-BOOKフェスティバル2023に参加します!
ドラマ、映画、K-POPに次いで注目を集めているK-BOOK
韓国の文学、エッセイから絵本、人文書までここ数年次々と刊行され、日本国内でも55万部を超える売り上げる作品も登場するなど、“K-BOOK”人気が高まっています。K-BOOKフェスティバルは、いま話題の“K-BOOK”をこよなく愛する人たちの「もっと読みたい、もっと知りたい」という声にお応えする本のお祭りです。
K-BOOKを作る人、届ける人、ファンがつながる
作家自身の声に耳を傾けたり、翻訳家の思いを聞き、そして本を作ってきた担当者たちの熱い思いにも触れる――。読者とK-BOOKを生み出す人たち、届ける人たちが一堂に会し、互いの熱い思いを伝え、交流する貴重な機会です。
会場では本の販売以外にも韓国雑貨、韓国食品、文化体験など韓国文化が楽しめます!
例年通り、K-BOOKを出版する出版社の担当から直接本を購入できるのはもちろん、韓国から著者を招いたイベントや、全国の書店で「K-BOOKフェア」を開催し、盛り上がります。さらに今年は、本の販売に留まらず、韓国雑貨、韓国食品の販売、文化体験など韓国文化を楽しむことができるフェスティバルになります。なお、イベントの様子はオンライン(Youtube)で生中継されます。
【編集後記】
出版業界大手を中心にRFIDを使用した商品管理・販売の実証実験が行われている。将来的には、某大手衣料品店のような、カゴに商品をまとめて入れたまま会計をする光景が書店でも一般的になるかもしれない。本の裏表紙に印刷されているバーコードが使用されたのが1990年。出版の長い歴史で見ればたかだか30年だが、その間にネット通販は一般的になり、映像・音楽メディアはサブスクが主流となるなど、消費者を取り巻く環境は大きく変化している。都内では完全無人の書店もオープンした。時代に乗り遅れないよう様々な方面からの情報収集を怠らないよう努めなければと感じる昨今である。(営業部S)
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