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【大月書店通信】第190号(2024/11/29)
「大月書店通信」第190号をお届けします。
1年以上にわたるイスラエルのガザ侵攻によって、ガザでは4万4200人以上が殺され、負傷者は10万5000人近くにものぼるとのことです。この間、ガザの人々は逃げ場もないなか絶えず退避を強いられ、避難先では食べ物が乏しく、病院ですら攻撃され、ガザの人々を支援する国連職員も殺害されています。
11月新刊『クラクフ・ゲットーの薬局』(タデウシュ・パンキェヴィチ著、田村和子訳)を読むと、時代も場所も違えど、ガザの現在を想起せずにはいられません。
本書の著者パンキェヴィチ氏はポーランド人の薬剤師。クラクフ市街で薬局を営んでいました。1941年3月、そこにユダヤ人ゲットーがつくられることになります。しかし、ナチの退去命令に従わずにあれこれ画策して居座り、薬局をつづけます。ゲットー域外から毎日3人の女性従業員が通ってきました。
1942年9月にゲットーが撤収されるまでの2年半、パンキェヴィチ氏はユダヤ人の隣人であり支援者として、また親衛隊、憲兵、ゲシュタポなどナチの暴虐の記録者として過ごしました。そして、戦後すぐの1947年、ゲットーで出会った人々や目撃した出来事などを詳細に記した本書の初版を刊行します。ナチの戦争犯罪の生き証人として、西ドイツでの法廷では何度も証言しました。
本書には300人を超える人物が登場します。名前しか出てこない人もいます。しかし、次々と現れる膨大な名前から、パンキェヴィチ氏の気迫が伝わってきます。
第5章には、映画『シンドラーのリスト』で知られるオスカー・シンドラーの名前が出てきます。シンドラーが営む琺瑯容器工場はクラクフ・ゲットーの被収容者が通った作業所の一つでした。
クラクフ・ゲットーに関する日本語で読める資料は多くないため、その点でも本書は貴重です。
◆ タデウシュ・パンキェヴィチ[著]田村和子[訳]『クラクフ・ゲットーの薬局』
【新刊案内】『「帰れ」ではなく「ともに」』ほか11月の新刊4点
●ゲットーで何が起き誰がどう生きたかを記録
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『クラクフ・ゲットーの薬局』
タデウシュ・パンキェヴィチ[著]田村和子[訳]2,640円
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1941年3月から43年12月まで設置されたクラクフ・ゲットー。その地で薬局を営むポーランド人の著者は、退去命令に従わず居座り、ユダヤ人への支援者、ナチの暴虐の記録者として2年半を過ごす。本書はその克明な回想録である。
田野大輔さん(甲南大学文学部教授、ナチズム研究者)推薦!
クラクフ・ゲットーの被収容者が直面した暴力と恐怖とは? 親衛隊員の残虐さ、ユダヤ人警察の協力、ゲットーの解体と絶滅収容所への移送など、ユダヤ人たちを襲った悲惨な運命を内側から冷静に綴った貴重な記録。
●便利なスマホやゲームのしすぎにもご注意!
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『10代からのヘルスリテラシー スマホ・ゲーム』
松本俊彦[監修]3,850円
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便利なスマホや楽しいゲームも使い方をまちがえれば、脳やからだ、生活に大きな影響があります。スマホ依存やゲーム依存のしくみ、依存しない上手な使用法や注意点、依存しているかもと心配な場合の相談先などをやさしく解説。
●リコーダーが上手になるためのコツを紹介!
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『表現力のきほんの「き」 リコーダーがうまくなる』
富永和音[監修]3,850円
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小学校3年生から習うリコーダー。姿勢、持ち方、指穴のふさぎ方、息のはき方、タンギングなど、基本をおさえて練習すれば、上手に吹けるようになります。要所要所の二次元コードから、監修者が作成した解説動画も見られます。
●特集=登校拒否・不登校から見える景色――安心できる居場所がほしい
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『月刊クレスコ 12月号(no.285)』
クレスコ編集委員会 全日本教職員組合(全教)[編]825円
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小中学生の登校拒否・不登校が過去最多の30万人となり、学校での「生きづらさ」はいっそう深刻さを増している。子ども・保護者・教師の実態を明らかにし、安心できる居場所づくりやしんどさを共有するとりくみを紹介する。
【話題の本・本の話題】
今月の書評・パブリシティ情報
●高校生平和ゼミナール全国連絡センター[編]『 核兵器と戦争のない世界をめざす高校生たち 』
「デーリー東北」11月8日
「伊勢新聞」11月8日
「京都新聞」11月8日
「長崎新聞」11月8日
「岐阜新聞」11月9日
「福井新聞」11月9日
「南日本新聞」11月10日
「中国新聞」11月18日
『人権と部落問題』2024年12月号
●歴史学研究会[編]『 ロシア・ウクライナ戦争と歴史学 』
『歴史地理教育』2024年12月号
●クロード・ルブラン[著]大野博人、大野朗子[訳]『 山田洋次が見てきた日本 』
「北海道新聞」11月10日
『東京人』2024年12月号
●須藤遙子[著]『 映画のなかの自衛隊 』
『週刊金曜日』11月15日
●パク・ウノ[文]チョ・スンヨン[絵]『 しょっぱい塩にご用心!(たべものの中にいるよ!) 3』
『子どもの本棚』2024年12月号
●松本俊彦[監修]『 薬物(10代からのヘルスリテラシー)』
「日本農業新聞」11月24日
【今月の赤旗半4段広告】
![](https://assets.st-note.com/img/1732877564-Ra0ICNGQk4pbTLgWzYhBD5oZ.png?width=1200)
【編集後記】
熊本県の書店で面白い取り組みがあった。いわゆる「プレミアム付き商品券」の図書券版で、1000円で1300円分の本を購入できるというもの。県書店組合主導の施策であるため利用可能書店は限られてしまうのだが、それでも販売開始から数日でその図書券は完売したそうだ。このような施策は財源の問題もあり頻繁にできるものではないだろうが、「町の本屋」にたくさんの人が詰めかけた一つの事例として記憶にとどめておく必要がありそうだ。(営業部S)