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【大月書店通信】第191号(2024/12/27)

「大月書店通信」第191号をお届けします。

新年早々の能登半島地震にはじまり、北陸豪雨災害、温暖化による熱波の夏など自然の猛威に翻弄された年でした。世界をみればロシアによるウクライナ侵攻は止まらず、イスラエルによるガザをはじめとする周辺国への暴虐は拡大する一方です。そのような時、日本被団協のノーベル平和賞受賞が飛び込んできました。国際社会の「核の脅威」に対する立ち位置を明確に示しているようです。日本被団協の代表委員のお一人として田中熙巳さんがスピーチされました。
 
12月刊行の『 原爆と俳句』にその田中さんの推薦をいただきました。推薦文には、田中さんが本書を読み、出会ったドラマの一節が記されていました。それは、中学1年の夏に被爆して亡くなった学友・松尾海人さんのこと、その父松尾敦之さんが原爆の俳句をたくさん詠まれたことです。以下に全文を掲載します。
 
すごい本だなと驚き感動しました。原爆に関わる俳句と作者について論究されたこれほど素晴らしい本は他に類を見ません。
金子兜太さんと同じ自由律俳句の作者として、原爆に関わる俳句をたくさん詠まれた松尾敦之(あつゆき)さん。長崎原爆で妻と子息3人の命を奪われました。その句は「なにもかもなくした手に四枚の爆死証明」。亡くなった長男の海人君はわたしと一緒に県立長崎中学校入学したばかりの学友でした。
その後、敦之さんはその後長野県に移住し教師になられました。
1956年8月の日本原水爆被害者団体協議会(日本被団協)の結成総会に、自ら結成にあたった長野県の原爆被爆者の会を代表して参加されています。
その日本被団協は2024年度のノーベル平和賞を受賞しました。
 
俳句というわずか一七音の中に、多くのドラマを見つけることができます。
 
本書には蝉を詠った「原爆俳句」がたくさん登場します。原爆投下後に羽化した蝉が、被爆地でいっせいに鳴き声を響かせていたといいます。『句集 広島』にも10歳で被爆死した行徳功子さんの「蝉泣くな正信ちゃんを思い出す」という句があります。先に弟を失った姉の哀切きわまりない句です。そして、本書のカバーには、木下晋さんが描いた鉛筆画の羽化する蝉があしらわれています。

◆ 永田浩三[著]『原爆と俳句』


【新刊案内】『原爆と俳句』ほか12月の新刊4点

●原爆を俳句で記録したひとたちを綴る
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原爆と俳句
永田浩三[著]3,080円
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原爆という人類の課題に対して、俳句がどのように向き合ってきたのか。原爆投下直後のヒロシマやナガサキで詠まれた俳句があった。俳句で原爆を記録したひとたち、今も火種を絶やさずつなぐひとたちを長年の取材を通して綴る。

●摂食障害の危険を知って健康的にダイエット
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10代からのヘルスリテラシー ダイエット・摂食障害
松本俊彦[監修]3,850円
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「やせている=美しい」との価値観がSNSで広がり、過度なダイエットから摂食障害になる人も。成長曲線で本当に太っているのか確かめながら、栄養素や運動習慣など健康的なダイエットのしかた、摂食障害の危険をやさしく解説。

●特集=障害のある人のいのちと尊厳――優生思想をのりこえる
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月刊クレスコ 2025年1月号(no.286)
クレスコ編集委員会 全日本教職員組合(全教)[編]825円
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2024年7月、旧優生保護法を立法時から違憲とする判決が出されたが、出生前診断や堕胎件数は増えている。命を選別する優生思想をのりこえる当事者・家族の声、人権保障のとりくみを紹介し、教育にできることは何かを問う。​​​​​​​

●特集=匿名座談会 袴田事件から見る「司法とメディア」
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放送レポート 2025年1月号(no.312)
メディア総合研究所[編]550円
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●ドキュメンタリー台本●番組批評●制作者の素顔●ラジオの現場から●スポーツとマスコミ●映画の中のマスコミ●話題の本から●放送をめぐる動き
ほか

【話題の本・本の話題】

今月の書評・パブリシティ情報

●加藤雅江[著]『 死にたい気持ちに触れるということ
「全私学新聞」12月3日
「朝日中高生新聞」12月22日
「東京新聞」12月23日『女性のひろば』2025年1月号

●クロード・ルブラン[著]大野博人・大野 朗子[訳]『 山田洋次が見てきた日本
「毎日新聞」2024年12月7日「ひと」欄
「日本経済新聞」12月12日
「しんぶん赤旗」12月15日
『キネマ旬報』2025年1月号
なお「しんぶん赤旗」2024年12月16日「潮流」で紹介されました。

●レイチェル・グリーナー[著]クレア・オーウェン[絵]『 ようこそ!あかちゃん
『AERA with Kids』2024年冬号

●生田武志・山下耕平[編著]『 10代に届けたい5つの授業
木村友祐『猫と考える動物のいのち――命に優劣なんてあるの?』(ちくまQブックス、2024年12月刊)という本の中で紹介されました。

【今月の赤旗半4段広告】

【編集後記】

「山田洋次が見てきた日本」(9月刊行)をじっくり読みたいと思いつつ800頁もあるのでなかなか取りかかれずでしたが、いよいよの年末年始休暇。映画「男はつらいよ」を観ながら並行して読むのが密かな楽しみとなっています。著者のクロード・ルブランさんはフランス人でありながら相当な日本通で、漫画・食文化など、全く違うテーマでいくつも本が書けるほど(らしい)。ルブランさんの目を通した日本の魅力の再発見を今後期待しています。頑張って担当編集さん!(営業部K)

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