見出し画像

モテたい人のための、七草グラタントースト

食いしん坊3児ママによる、朝ごはんエッセイ連載。おいしさも栄養も作る楽しみも全部叶える、執念の朝ごはん。


(子どもに)モテたいかー!
(子どもに)おいしいって言われたいかー!


「おー!」
と拳を突き上げた諸君につきましては、来たる1月7日、七草をお粥ではなくグラタントーストにして食卓に出すことをおすすめしたい。


朝ごはんにおける「理想」と「モテ(子どもウケ)」の両立は、難題である。

栄養たっぷり、旬の食材に彩り豊かなメニュー、和の文化やイベントも取り入れつつ、家族みんなで笑顔でおいしく……

そんな理想があったとしても、現実的にはなかなか難しい。親の気合と子どもの反応は比例しないということを、多くの親が体感しているのではないだろうか。

食べてくれりゃなんでもいい!
と、モテに全振りする日だってあるが、モテに走りすぎると、大切ななにかを失いかねない。塩梅が難しいのである。


七草粥に関しては、どうだろう。

最初に断っておくが、私は七草粥推しだ。
無病息災を願う文化、ごちそう続きで疲弊した胃腸を労わってくれるありがたさ。知性と安らぎ。白に緑で透明感もある。七草粥しか勝たん!嫁にするなら七草粥! みたいなところすらある。あと普通にお粥が好き。

しかし、それがモテ=子どもウケに繋がるかというと、話は別だ。

なんせ、世の中には、子どもを魅了するエンタメ的なかわい子ちゃんだらけなのだ。


七草粥が、ア○ン○ンマンパンに勝てるのか?
バナナたっぷりのマフィンやスムージーに勝てるのか?


残酷な現実だが、朝ごはんでかわい子ちゃんに勝つっていうのは、そういうことだ。知性や透明感だけじゃ戦えない朝だってある。

(もちろん、あのシンプルな味わいが好きな子だっているだろう。その味覚、感性は、ぜひ大切に育み続けてほしい。)


実際、我が家ではここ数年、惨敗続きだ。リゾット仕立てにしたり、梅や大葉、柚子などを活用してみても、子どもの反応はイマイチだった。

いっそのこと、今年はイベントをスルーしようか。でも、季節の風情をまるごと放り投げることはしたくない……

俺たちの七草粥たんを、モテの最前線へ送り出したい!


私は、諦めなかった。

熱い想いと脳内シミュレーションを重ねた結果、モテの権化ごんげ「七草グラタントースト」が誕生したのである。

カリッと焼けたパンに、ホワイトソースのクリーミーさ。その上にふわっと彩りを添える、七草の緑。

大前提、子どもにはパンだけでもモテる。
朝にグラタンは、特別感もあってさらにモテる。

x=モテ×モテ(×2じゃないよ、2乗だよ!)

この、モテの方程式を解いてみてほしい。




そう、答えは

x(七草グラタントースト)=♾️モテ

無限大モテ。インフィニティモテ。算数が苦手な私でも解ける。これでモテないわけがないよね?!


一番大切なことを言う。
このモテトーストを出すのは、我々だ。

つまり、結果的に我々がモテる
七草粥たん、あらため七草グラタントーストたんの功績を、我々がガッポリいただくのである。


「もっとほしいな……ダメ?」
「ねぇ……おいしいからまた作って♡」

おいおい〜、困っちゃうなァ朝から。
おかわり? まったく、いくら七草とはいえ食べ過ぎたらダメなんよ。え? おかわりがないなら、かわりにドンペリ飲みたい?

……おーい、ドンペリ(たまのお楽しみ、ココア)開けちゃってー!


そんな、モテトーストでモテすぎる朝ごはんを想像しながら、私は牛乳とココアとともに、勇み足で七草を購入した。

ホワイトソースは前日までに用意しておくと、朝が楽だ。レンチンでも作れるし、冷凍もできる。

小麦粉(我が家は米粉)、バター、牛乳(豆乳でも)を1:1:10。ここにナツメグやコンソメを入れるのが定番だけど、麺つゆを合わせて和風仕立てにするのもおいしい。※その場合は、牛乳を少し控えめに。


粉&バターを耐熱容器に入れる
ラップせずレンチン40秒程度でバターが溶けたら、
ね〜りねり
牛乳を少しずつ足してのばしていく
ある程度牛乳加えたら泡立て器にチェンジ
牛乳全量加えたらレンチン2分、ちょっと色が変わる
混ぜてからまたレンチン2分、とろみがついたらOK
麺つゆで和風に
(我が家は出汁多めの麺つゆこと八方だしを愛用)


パンに塗って、七草をのせて。

かわいい…

チーズも乗せて、焼く。

写真が下手で伝わらない美味しそう感……!
パン粉があるとさらに良かった




……私が子どもたちにどれだけモテてしまったか、知りたいだろうか?

それはもう、夢のような朝だった。制服の第二ボタンはすべて奪われ、露出している肌という肌にキッスの嵐……鼻の下をのばしまくった私によって、ココアコールがフロアに鳴り響いたのは、いうまでもない。

詳細を告げると鼻血を噴きだす人が続出してしまうので、あとは想像にお任せしたい。



文化やイベントは、できる範囲で、好きなように楽しむのがいいと思っている。ど定番で味わうもよし、家庭それぞれにアレンジするもよし。食は、思った以上に寛容なのだ。


七草に関しても、今年はモテにふりきったけれど、いつかきっと、子どもと一緒にお粥の慈悲深いおいしさを楽しめる日が来るだろう。生きていれば、モテの質感や方向性も、人の好みも、変わっていく。その変化もまた、楽しみなのである。


とにかく、子どもにモテる七草メニューを希望される方は、ぜひグラタントーストアレンジを検討してみてほしい。1月7日の朝、あらゆる食卓で嬉しい悲鳴があがることを、密かに祈っている。




🍚 back number 🍞
【1皿目】秋の始まりと、ドラゴンフルーツ
【2皿目】希望のピザトースト
【3皿目】とりあえず、かき玉汁
【4皿目】やさぐれた日の、豆腐白玉だんご
【5皿目】やっぱり、大根葉ふりかけ
【6皿目】朝を救う、アンパンマンと鯖缶のカレートースト
【7皿目】いくら丼をめぐる食い意地と、秋の心理戦
【8皿目】5分の煮りんご風ジャム

いいなと思ったら応援しよう!