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蟻とガウディのアパート 第14話(第二章)

「1988年 11月某日」

 25歳になった私は、スペイン南部に位置するセビージャでひとり暮らしをしていた。 毎週日曜日になると、グアダルキビル川のほとりにある、サルバドールのフラグアに入り浸った。 

 サルバドールはヒターノで、彼らが古くから得意としてきた鍛冶屋の仕事をしている。
 向こう岸には、牛が群れているのや、昔ヒターノ達が住んでいた部落の跡が見える。 水たまりにロバが水を飲みにやってくるようなところだ。

 サルバが連れてくる飼い犬とじゃれたり、川に釣り糸を垂らしたり、朽ちた漁船のへりに腰掛けて時間を過ごす。 
お腹がすくと、火をおこしてその上に網を乗せ、鰯やムール貝を焼き、塩とレモン汁をかけて食べる。 
ビールを飲みながらゆるい風にあたり、秋になってやわらいだ陽の光を浴びる。

*     グアダルキビル川は、アンダルシア地方を流れる、スペインでは唯一大型船が航行可能な河川。 スペインがモーロ人に統治されていた時代、グアダルキビル(大いなる川)と名付けられた。

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