![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/81615255/rectangle_large_type_2_c7a18bba7360fa3db7664492a012d60b.png?width=1200)
風の声が聞こえる
火星はむこうからやって来る。怖れることはない、待ちくたびれることもない。
火星人の歌は風に吹かれる岩窟の響き。そう、地球の響きとそんなに変わらない。
ゆっくりと時間は流れていって、素早く通り過ぎてゆく。記憶なんてそんなもの。
こちらは「ようこそ火星へ」。世界の果ての放送は、もっと先の周波数を回してください。
+
踊りましょう。惑星同士が不規則に巡り合うように、行ったり来たり、ゆらゆらり。
火星の歴史学者は頭を抱えてこう言った。「地層を掘ったら未来が出てきた」
時が一方通行だと説明したのは誰?さあ、夜更けはまだ先、真夜中なんて来ないかも。
こちらは「ようこそ火星へ」。あなたのすぐそこに火星人の道先案内。
+
悪いことは過ぎて、良いこともずっと後ろに見えなくなっても、ずっとあなたはここにいる。
この世に絶対はどこにもないけれど、あなたという存在はずっと変わらない。
覚えても忘れても、怒っても笑っても、走っても立ち止まっても、付いてくるあなたの場所。
それが空間のつまらない恋だとしても、構わないじゃありませんか。火星はあなたを見つめてゆらゆらしているだけ。それだけですよ。
+
今日、夜空が明けかける頃に見える明るい星は、赤ですか、青ですか?
やがてあなたは素晴らしい道先案内人として空を眺めるでしょう。もう、そうなってるかもしれません。それがあなたの宿命。
次の誰かをどこかへ導くだけで、それで十分なのです。不足なんてこれっぽっちもありません。あなたは孤独な旗手だけど、立派な個人事業主なのです。
こちらは「ようこそ火星へ」。このラジオのスイッチは入っていますか?