ベテランなんて要らない
「この患者さん、もうベテランだから」
この言葉を2ヶ月で何回聞いただろうか。
ベテランになるのは医療者だけでいいのに、、、。
§
僕は今年の4月から循環器病棟に新人看護師として配属された。
入職前の「患者さんとしっかり向き合う看護師になる」と息込んでいた僕はどこに行ってしまったのやら。
気付けば業務をこなすことで精一杯の毎日を送っている。
看護師の1日は忙しい。
朝は始業の1時間前に出勤して情報収集を行うことから始まる。
初めてみる疾患、薬、検査、よく分からない略語に翻弄されながら、何とか情報収集をした後にはその日の点滴準備を行う。
午前中は患者さんの体拭き、点滴、検査準備、手術搬送、食事介助。
午後は検温、検査、手術迎え、記録に追われる。
そして気付けば終業時間になっており、患者さんと何を話したのかさえ思い出すことが出来ない。
看護学生時代に先生がよく言っていた言葉を思い出す。
「患者さんとこんなに向き合えるのは今だけだから。」
当時は聞き流していたが、その言葉の意味を今更ながら痛感している。
おそらく看護師の誰もが一度は患者さんとしっかりと向き合いたいと思ったことがあると思う。(是非そうであって欲しい。)
でもその思いを打ち砕くように多忙な業務が降りかかってきて、いつしか業務をこなすだけの毎日が当たり前になってくる。
そしてその当たり前が
「この患者さん、もうベテランだから」を生み出してしまう。
病院に来れば病気が治ると思う人が多いが、そんな都合のいい場所ではない。
病院に来ることが逆に悪影響になってしまう人もいる。
例えば、病院のベッドで安静にしていることで筋力が落ちてしまい歩けなくなってしまう人。
はたまた、毎日同じ景色を眺めるだけの単調な毎日で認知機能が落ちてしまう人。
病院は決して病気が治るというポジティブな面ばかりではなく、ベテランがいてはいけない場所である。
でもそういったことが当たり前に思ってしまう看護師も致し方ないと僕は思う。
言い訳に聞こえるかもしれないが、あまりにも看護師は多忙すぎる。
看護師が悪いのではなくて、そうせざるを得ない状況を作っている環境が悪いと僕は思う。
じゃあもっと看護師や看護助手を増やしたらいいんじゃないかと思われるが、病院もボランティアじゃないから、利益を出すためには簡単に人を増やせるものでもない。
じゃあどうしたらいいのか。
その答えは地域にあると僕は思う。
病院でも再入院しないように指導をするが、退院してしまえばそれまでで、その後はどうしても患者さんの主体性に頼るしかない。
でもしっかり指導を守るなんていうのはやっぱり難しい話で、再入院となってしまうことが多いのが現状である。
どうして守れないんだろうという人もいるかもしれないが、僕は出来なくて当然だと思う。
僕だってダイエット続かないし、筋トレも毎日出来てないし、そもそもこのnoteだってめちゃくちゃ久しぶりだ。
比較的若い僕ですらこうなのだから、今までの習慣が染み付いている高齢の方はもっと難しいと思う。
じゃあどうしたら続けられるのか。
その答えはその人の日常に看護師が入り込むことだ。
日常に入り込めば、今日は何食べたの?とか、暑くなってきたけどちゃんと水分取ってる?等の会話が看護師対患者ではなく、知り合い同士として出来る。
そうすることで、忘れてしまう指導内容を少なくとも意識することはでき、少しでも再入院までの期間を長くすることが出来るかもしれない。
はたまた患者の家族とコミュニケーションを日常的に取れる場所があれば、リフレッシュになるようにサポート出来るかもしれないし、不安を解消できるかもしれない。
その他にもACPの普及だったり、救命処置の講義だったり、もっと身近に学びの機会を作り出すことが出来るんじゃないかと思っている。
分からないけれど、看護師が病院ではなく地域に出ていくことの意義はとてつもなく大きいいんじゃないかと僕は思うし、そうなりたい。
コミュニティナースになる。
僕が決めている3年という期限までそんなに時間はない。
ちゃんと家族も守れるように準備をしなければ。
よし、やろう。
先ずはお風呂に入ることからだ。