見出し画像

【読書感想】相変わらず物凄い勢いで読まされる。(盤上の向日葵 柚月裕子)

久しぶりに読書感想。「孤狼の血シリーズ」でもそうだったが、相変わらず柚月さんの小説は一週間と保たない。通勤退勤時の電車の中、仕事の休憩時間、寝る前、全てのスキマ時間が読書に注がれる。それくらい一気に読ませてくる。

もちろん内容も面白かった。1つの名駒を巡って、起こる事件、交わる人々、つながる過去と現在。上下巻ともに過去と現在の出来事が1章ごとに切り替わるのだが、この話が切れるところがとても上手い。「後もうちょっと読ませて・・・!」というところで話が切り替わる。しかしながら、切り替わったならそれはそれで「あぁ、そういえばあの続きか!」と楽しんで読める。マジで飽きない。

私は将棋のルールは全く知らない。だが真剣師の対局の描写はガンガン読み進められた。池波正太郎の武士の決闘描写みたく、スピーディ且つ、戦いの熱がジンジン伝わる。読了後の今でも、別に将棋をやりたいとは全く思わないが、対局シーンはどれも本当にハラハラした。まさに「ヒカルの囲碁」現象である。

そして主人公の一人、上条圭介の目まぐるしく変わる身辺と、変わらない人生への絶望と将棋への情熱が、とても熱かった。圭介の父親となったのは3人居ると思うが、唐沢以外の庸一と重慶はクズだった。ただ重慶は最後まで将棋の師匠として圭介の中に君臨していた。圭介を棋士としてみたとき、唐沢は生みの親、重慶は育ての親だろう。庸一はホンマにクズ。

またもうひとりの主人公である佐野が、将棋に関する事件を通して過去と向き合っていく描写も面白かった。将棋で食っていくことを諦めざるを得なかった佐野が、最後には天才棋士である圭介の行動を読み切った描写はなかなか痺れた。

オチも大変良かった。読書に停滞してきたら、テコ入れ的にまた柚月さんの本を読みたい。一瞬で読書意欲が回復するから。

盤上の向日葵 上下

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?