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詩『霧の夜』

改札を出て地上に降り立つと、
空気は少し不透明な夜だった

小さな水の粒々がゆらゆらと漂ったりくるくると踊ったりその場に数秒留まるのが見えるようだ

わたしは淡々とあるく
その夜のいつもより強く匂いを感じることに気がつき心臓がドキドキしていることがバレないように

シャンプーの匂い
煮干しの匂い
花の匂い
湿布の匂い
カレー粉の匂い
シチューの匂い
子供の頃によく泊まった軽井沢の貸別荘の匂い
泥の匂い
下水道の匂い
石鹸の匂い
夏の草の匂い
畑の匂い

しばらく途切れて

中華料理屋から美味しそうな料理の匂い
民家の匂い

柔軟剤の匂い

わたしの鼻はだんだん鈍くなってきたみたいだ

もうすぐ家に着く
もうわたしは今夜のお夕飯のことしか考えていない

色々な匂いの粒を纏って部屋に入る
それらは部屋の中で方々に散らばってゆく

さぁ、まずはシャンプーの匂いの粒から拵えよう

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