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松本清張『小説 帝銀事件』を読んだら

タイトルに「小説」とありますが、「小説」っぽいのは冒頭と途中のごく一部のみで、あとは諸々の捜査資料やら証言やらが延々並んでます。ちょっと異様な構成。緻密で面白いのですが、油断してると「今何のお話?」と見失ってしまいます。

松本清張がノンフィクションとして書いたものを、諸事情により「小説」として発行したのだと最近ドキュメンタリー番組で観ました。

松本清張『小説 帝銀事件』


GHQによる捜査妨害説、元七三一部隊関係者犯人説などがノンフィクションとして発行できなかった理由のようですが、そのためか作中主人公の記者は捜査妨害や元七三一部隊関与を強く疑いながらも、全体として「可能性のひとつ」みたいな扱いになっていました。
そのため、読後感としては「平沢以外にも同等かそれ以上に疑わしい者が複数いる」という印象でした。
何らかの理由で平沢を犯人にする必要があり、平沢の「嘘に嘘を重ねる病気(薬の副作用によるものとされている)」から自白証言を「これは嘘、ここは本当」と、都合のいい憶測も混じえて貼り合わせて「有罪」が作り上げられたのではないかと私は思いました。
だから真犯人ではないということではなく、もっと疑わしい者もいたそうで、私としては「金遣いが荒く倫理観がどうかしている医者」が一番怪しい気がしました。

それと、本来はもっとGHQや七三一部隊への言及があったかも、と想像してしまいましたが、それは後にノンフィクションとして書かれた『日本の黒い霧』に書かれているのかもしれません。
日本の黒い霧(下) (文春文庫) Kindle版

こんな映画もありました。
『帝銀事件 死刑囚』

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