2024年に聴いた管弦楽曲を振り返って、
交響曲でなく、協奏曲でもない、オーケストラによる作品をひとつにまとめての管弦楽曲... なのだけれど、改めて考えてみると、漠然としたイメージだなと... だもんだから、その中身、交響詩からバレエ、劇音楽まで、結構なごった煮。いや、ごった煮ほどおもしろいものは無いのかも... そんなことを思わせてくれる、2024年に聴いた管弦楽曲、28タイトル。その多彩な中から、特に魅了されたタイトル、3つ選んでみた!
💿 レ・ムファッティによる、バッハの管弦楽組曲 第2番、ブランデンブルク協奏曲 第5番など、フルート、ヴァイオリン、チェンバロが活躍する作品を取り上げる、"BACH Triple"。あれ?これって協奏曲?管弦楽組曲だし、合奏協奏曲は、独奏協奏曲とは違うし... とか、いろいろ考え出すと、ホント、クラシックのカテゴライズって難しいなとつくづく... が、このタイトルは管弦楽曲で行きます!というのも、レ・ムファッティ全体がすばらし過ぎた!いや、何と言いますか、アンサンブルのメンバー、ひとりひとりが、ただならぬ輝きと存在感を見せて、細胞レベルからバッハの音楽を息衝かせるのです!管弦楽組曲にブランデンブルク協奏曲です、聴き尽くした作品から、目の覚める鮮やかさ引き出し、圧巻!
💿 ハーディングの指揮、バイエルン放響の演奏で、ホルストの『惑星』。生誕150年、ホルストのアニヴァーサリー・イヤーということで、1月1日に聴いたタイトルでした。で、正月から唸りました。ホルストの『惑星』と言えば、鉄板の人気作、正直、今さら、なんて、心のどこかにあるわけですが、まず、バイエルン放響の重厚にして輝かしいサウンドに抗し難く惹き込まれた!で、またハーディングが、バイエルン放響の圧巻のサウンドを徹底して活かし、下手な小細工、一切無しで、じっくりと響かせて、宇宙のスペイシーさ、鮮やかに展開する... 見事でした。
💿 ペトル・ポペルカ+プラハ放響による、『我が祖国』など、スメタナの管弦楽作品集、"MÁ VLAST"。チーム・チェコによる、チェコを代表する作曲家、スメタナの生誕200年を祝う3枚組!ということで、気合は入りまくっています。いや、気合入って、スメタナという存在をこれまでに無くしっかりと響かせてくる!そうして浮かび上がるスメタナ像の、鮮やかなこと!瑞々しい交響詩に、祝典交響曲のような機会音楽まで取り上げ、代名詞、『我が祖国』ばかりでないことを、しっかりと示す!もちろん『我が祖国』も見事!改めてスメタナに魅了された。
さて、管弦楽曲、ごった煮、もうちょっとその中身を覗いてみる。ということで、まずは、マイケル・アレクサンダー・ウィレンズ+ケルン・アカデミーのモーツァルトの序曲集。いやー、ピリオドであることを忘れさせるほどの鳴り方、そこから繰り出される胸空くモーツァルト!カッコ良過ぎた... このコンビ、これまでもすばらしかったけれど、一皮剝けた?そして、スザンナ・マルッキが率いたヘルシンキ・フィルの演奏で、シベリウスのカレリア組曲、連作交響詩『レンミンカイネン』。いやー、このコンビ、もっと聴きたかった... でもって、もっと知られるべきだった... それから、アンドルー・マンゼの指揮、ロイヤル・リヴァプール・フィルの演奏で、ヴォーン・ウィリアムズのバレエ 『ヨブ』と『コール老王』。ヴォーン・ウィリアムズのバレエ?!新鮮でした。でもって、思い掛けなく美しかった!ディヴィッド・アラン・ミラーの指揮、NOIフィルの演奏、ケヴィン・コールのピアノで、"ガーシュウィン・クリティカル・エディション"のスコアを用いてのラプソディー・イン・ブルーが、興味深かった... てか、もうクリティカル・エディションでしか聴けないかも...
さて、2024年は、シェーンベルクの生誕150年で、フォーレの没後100年。ということで、パーヴォ・ヤルヴィが率いたhr響の演奏で、シェーンベルクとフォーレ、それぞれの『ペレアスとメリザンド』がおもしろかった!2つの『ペレアス... 』を巧みにつなげ(これを可能とするパーヴォ・マジック!さすが... )、象徴主義の魅惑的な世界を堪能... それから、ラファエル・パヤーレ+モントリオール響のシェーンベルクの「ペレアスとメリザンド」と「浄夜」。ウルトラ・ロマンティックの呪いを解き、若きシェーンベルクの作品であるということ、その瑞々しい記憶を取り戻すパヤーレ!この人もタダモノではない... そして、今、最も期待されるマエストロ、クラウス・マケラ+パリ管のストラヴィンスキーのバレエ『ペトルーシュカ』、ドビュッシーのバレエ『遊戯』と牧神の午後への前奏曲。近代音楽の名作としてではなく、バレエ・リュスのレパートリーとして捉え、引き出される、バレエ・リュスが一世を風靡していた輝かしき時代!何か、夢見るようだった... で、最後に、大晦日に聴いた、ジョルディ・サヴァール+ル・コンセール・デ・ナシオンのメンデルスゾーンの劇音楽『真夏の夜の夢』!管弦楽組曲としてではなく、シェイクスピア劇であることを大事に劇音楽に戻す試み、なかなか興味深く、何より、サヴァール+ル・コンセール・デ・ナシオンならではの活き活きとした音楽が、ロマン主義の夢、鮮やかに描き出し、惹き込まれた。