好きな小説を好きな人に貸したことがある。 その何ヶ月も後のことだ。 その小説は夫婦の間の話なのだが、 その中で夫が妻に言ったあるセリフが 私はずっと忘れられない。 僕の人生目標は君を甘やかすこと これは妻があまり家のことができずに 申し訳ないと伝える そんな場面でのセリフなのだが、 他の情景も相まって私はとても好きだった。 そのセリフをリアルで言われたのだ。 なかなかにさとい。ずるい。 好きな小説のことを覚えていることも そのセリフを言うことも 何ヶ月も
やっと、ついに決意ができた。 長い間といっても四年ほど使った 折りたたみ傘を手放す決意ができたのだ。 この傘は本当にいつも一緒だった。 戻ることのない青春の日々を 華麗に彩る雨からも守ってくれるような そんな存在だった。 恋じゃないと否定し続けて、 やっと長い長い片思いにピリオドを打つために この傘を手放すことにした。 青春と呼べる全ての時間に、 一人思いを寄せていたあの君からもらった 大切な傘だ。 有名な鳥のシルエットがあしらわれた 紺色の傘。 自分じゃ絶対に選ば