イシュタルが冥界へ
昨年2021年は、日本における秋分以外の四季図、春分、夏至、冬至の
ホロスコープのアセンダントがてんびん座でした。
その支配星である、金星に個人的にフォーカスした一年でした。
金星に想いを馳せ、金星に象徴される神話の女神たちと共に過ごした1年だった。
そんな中で、天体観測や古典占星術をされている、astrogrammarぐらさんの講座を受ける機会もあり、より興味が深まりました。
ここ数年、占星術は古典寄りです。
金星は一つではない?
いえ、惑星としての金星は一つなのですが・・・
金星には、宵の明星、オクシデンタルの金星と、
明けの明星、オリエンタルの金星があると。
太陽と地球の間に位置する金星を、地上でどう見えるかによって、表現を変えたのだと。
昨年2021年の4月初旬に、西の空に出現した宵の明星であるオリエンタルの金星は、昨日あたり、地球に住む私たちの視界から消えています。
ちょうど太陽と地球の間にすっぽり入る数日間。
そして1月の11日あたりに、今度は明けの明星のオリエンタルの金星として、姿を表します。
冬至あたり、空を見上げると、宵の明星が美しい光を放ち、仕事の疲れを癒してくれました。
金星は、紀元前2000年のシュメルの時代から観測されているそうです。
突然明け方強い光と共に現れ、突然消え、そして夕方美しい光を放つ天体に、古代の人は、とても惹かれたのだと思います。
金星と神話
最も古い神話であるシュメルの神話。
金星はイナンナという女神であり、こちらは美しく輝く宵の明星。
愛と豊穣の女神であり、メソポタミアの神話の中でも、最も魅力的な女神として、常に神話の表舞台に登場する女主人公として、描かれているそうです。
と同時に、戦争と破壊の女神でもあり、相反する二面性を持つ、最古の「グレートマザー」。
こちらはアッカドの神話で登場する、イシュタルという女神。
ぐらさんは、
前者、愛と豊穣の女神を「ウルクのイシュタル」、
後者を「アッカドのイシュタル」と表現されていました。
(ウルクもアッカドも都市名)
鏡リュウジさんのタロットの解説本でも、Ⅲ女帝のカードの解説で、グレートマザーの二面性の説明をされています。
グレートマザーは、大地から命を生み出す肯定的な面と、命を飲み込む死の否定的な面を表し、これを二人のイシュタルに当てはめ、神話が紡がれています。
そして日本の神話では、イザナミが、国々や神々を産み(ウルクのイシュタル)、死を司る黄泉津大神へ変容するさまを描き(アッカドのイシュタル)、女性の女神の二面性を表しています。
そして、もう一人・・・シュメルの神話では、エレシュキガルという、冥府の女神が存在します。
(私はとてもこの女神に惹かれます。)
日本の神話では、前述した黄泉津大神となったイザナミです。
1月11日ごろまでの金星の消失期間は、まさに冥府の女神エレシュキガルが主役の時期。
そして、アッカドのイシュタルに変容する・・・そんな準備期間ではないかと。
日本の神話では、イザナミを追って冥界へ出向くのは男性神イザナギであるところが興味深いです。
冥界下り
シュメルの神話で最も人々に愛されたのは、「イシュタルの冥界下り」と、「ギルガメッシュ叙事詩」だそうです。
もし興味がある方は、「Fate Grand Oder バビロロニア編」というアニメがあるので、是非見てください。
地上を支配し、地上の女神として愛され褒め称えられたイシュタルが、姉であるエレシュキガルが支配する冥界に出かけていく物語。
なぜ、わざわざ冥界に出かけたのか・・・
冥界に憧れたとか、強制されたとか、冥界も支配したかったとか・・・
諸説あるようです。
ただ、冥府の女主人であるエレシュキガルは歓迎していなかっようで、イシュタルの身包み剥がして、辱め、憤怒したと。
なぜエレシュキガルは妹の訪問を、怒ったのか・・・
このお話も、イザナミを迎えてきたイザナギに対して、醜い姿になって追い返した黄泉平坂の物語と通じます。
世界中の神話には、必ず冥界へ下るという物語があります。
冥界、黄泉の国が象徴するものは、なんなのでしょう?
金星の観測から、神話が生まれているのするならば、
宵の明星(ウルクのイシュタル)→金星消失(エレシュキガル)
→明けの明星(アッカドのイシュタル)という自然観測を物語にし、楽しんだと捉えることもできると思います。
しかし金星からメッセージから、古代の人々が神話にした真意はなんなのでしょう?
冥府が象徴するものが、「闇」というダークサイドであるならば、私たちは光の世界だけは満足できず、その対極にある闇に引き付けられるのかもしれません。
冥府の女神エレシュキガルは、そんな欲望を理解し、闇を見せ癒し、とどまることを許さず、真の成長を促す存在なのかもしれません。
この世界を生きることの目的の一つは「成長すること」であるならば、冥府を征服することでとどまるのではなく、真に大人になることを願ったのかも。
イザナミが望んだことは、イザナギが真の神になること。
そして、イシュタルは大人になることに憧れ、冥府に憧れた。
「しっかりとありのままの自分を見つめ、大人になりなさい」
と、エレシュキガルは、イシュタルの身包み剥がして、厳しく叱ったのではないかと。
そして、
「あなたの持ち場に戻り、しっかりとあなたの働きをしなさい」と。
これが、エレシュキガルとイザナミの真意なのではないかと感じました。
冥界下りは大人になること。
精神的に目覚めること。
2019年末から始まった、今の混乱は、ある意味全員が冥界に降っているのかもしれません。
豊穣と喜びの女神、イシュタルは、冥界に降ることで、道具(ソード)を手にします。
しっかりと考え現実と闘うアッカドのイシュタルになる。
欲望や感情のままに動くのではなく、しっかりと考えて、俯瞰して選択する。
ウルクのイシュタルは、ギリシャの神話でヴィーナスに引き継がれます。
若さと美しさは永遠ではないけれど、「知性」という道具が加わることで、美しさに深みがまし、イシュタルは永遠に輝くことができるのではないでしょうか。
ⅺ正義
明けの明星であるアッカドのイシュタルは、このカードのイメージ。
昨年私は、このカードと共に1年を過ごしました。
「正義」について考えた一年だった。
しっかりと時間をかけて考えること。
俯瞰すること。
口にする言葉に責任を持つこと。
そして自分の立ち位置(正義)に立つこと。
現在金星はやぎ座で逆行中。
アッカドのイシュタルが目覚めた後、2月4日に順行へ。
ちょうど立春あたりですね。
しっかりと目覚めたままで、自分の持ち場で、一ミリもブレずに、新しい時代に向けて生きたいと思います。
読んでくださってありがとうございます。
akari