逃げていたけど、向き合うその先に
こんにちは、「おとラグ」主催の喜連航平です。
みなさんは、毎年9月21日が「世界アルツハイマーデー」であることはご存じでしょうか。
「おとラグ」では、今週末9月25日の in 浦安開催分の収益の一部をアルツハイマー病に関する研究に寄付をします。
この記事では、そこに至る経緯と僕が抱えてきた想いを紹介します。
プロになって念願のファンドレイジング
最初に改めて僕のプロフィールを紹介します。
僕の出身は兵庫県伊丹市。1995年生まれですが、阪神淡路大震災の時は母のお腹の中にいました。
幼稚園生の時に伊丹ラグビースクールでラグビーをはじめ、大阪桐蔭高校、近畿大学と進み、2018年にNTTコミュニケーションズ株式会社に入社しました。その後、NTTコム エンジニアリング株式会社へ出向し、今年7月末に退社。8月より横浜キヤノンイーグルスにプロラグビー選手として移籍しました。
2年ほど前になりますが、当時の自己紹介を自身のnoteアカウントに書いています。よろしければこちらも読んでください。
また、現在所属している横浜キヤノンイーグルス公式サイトのプロフィールはこちらです。
以前の職場では人事採用育成担当として働いていましたが、ラグビー部でもプレーヤーとしてチームでプレーするだけではなく、社員選手としてチームのホストエリア・浦安市を中心に特別支援児童の療育支援や、全国の長期療養児童への支援などに取り組んできました。
当時の活動は、1年前になりますが前チームの公式noteで紹介されています。今回の取り組みにつながる僕のストーリーも、少し話しています。
社員選手として、会社の理解や周囲の方に恵まれてたくさんの企画を提案、実現することができました。
一方で会社という組織構造上、社会貢献活動の一環止まりで本来やりたい直接的な支援までは実現が難しかったのが正直なところです。
海外では、プロアスリートが当然のように「ファンドレイジング」をしています。
今、僕自身がプロラグビー選手になり、周りから背中を押してもらえる環境を得て、長年の想いの実現に向けて一歩を踏み出すことになりました。
有料記事について
「世界アルツハイマーデー」の理由
僕がファンドレイジングで取り組みたいのは、アルツハイマー病に関する研究への寄付です。
毎年9月は「世界アルツハイマー月間」、9月21日が「世界アルツハイマーデー」です。
<この続きは、僕の経験と今の想いを綴っています。ぜひ読んでいたき、寄付にご参加いただければ幸いです。>
上記の前チームの公式note記事でも少し話していますが、僕の母親は遺伝性の若年性アルツハイマー病を発症し、僕が中学生の時から施設に入所しています。母方の祖母も同じ病気でした。
僕のなかの母は、写真そのままのとにかく優しい人です。
僕達5人家族に加えて父の両親(僕の祖父母)と同居しながら、保育士として共働きをし、僕と弟、妹の3人の子育てと、とても多忙な日々で家のこともちゃんとやらなきゃと頑張っていたんだと思います。
母は僕が小学生の時から具合が悪くなり、徐々に日常のことができなくなっていく様子は子どもながらに目にしていて、家で最後に見た母はつらそうに横たわっている姿だったのを覚えています。
空白の時間を取り返すために
母は僕が中学生の時に施設に入りましたが、その事実を素直に受け入れることができず、認めることが怖くて大学を卒業するまで7~8年間は母に会いに行けませんでした。
きっと症状が進行して、自分のことは忘れてしまっていると思っていましたが、初めて施設にいる母へ会いに行った時、僕の声だけに反応して満面の笑みで迎えてくれました。
ずっと行ってなかった僕を覚えていてくれたことに号泣して、立ち直れずに会いに行った週は一切ラグビーもできませんでした。
そのことに対して後悔がわきあがって、何もしてこなかった空白の時間をどうしたら取り返すことができるのか・・・・・・。何か活動することで少しでも返せないか、返したい、と思うようになりました。
二人の母へプレーする姿を
そして、もう一つ。
母がいる施設の部屋の壁には、僕がラグビーの試合で活躍している記事がたくさん飾られています。
それを見て、忘れられないくらい活躍するラグビープレーヤーになって、母の記憶に残りたい。そう思って大怪我が続き、挫折を経験しても、ラグビーを続けてきました。
また、祖母が母親代わりで僕らを育ててくれました。今も僕を支え応援してくれているので、試合でプレーをする姿を見せて恩返ししたいです。
当事者の家族として知ってほしいこと
当事者の家族としては、アルツハイマーという言葉は知られていても、正しく認知されていないと感じています。
たとえば、人の会話で誰かが忘れ物をした時、「アルツハイマーやん!」と話しているのが耳に入ると、「忘れる」という行為に認識の差を感じて理解がないなと思います。
そうやって誤った理解に言葉の独り歩きが重なり、この病気の本質からかけ離れてしまったり、誰もが病気になりたくてなるわけではないのにアカン病気に罹ったと誤解されたり、嫌な病気の代名詞のように扱われています。
「可哀そう」と思ってほしいわけではなく、この記事を通じて少なからず知ってもらうことで、不用意な言葉で傷つく人たちがいることに気がついてもらいたいです。
治る病気だよ、といえる日に
一方でそうした世間の理解や周囲の環境に、当事者側も隠すのが当たり前の慣習になっています。
僕も母のことが受け入れられず、ずっと逃げてきた。ある意味負けた側にいました。
病気というと患者会活動が一般的ですが、当事者やその家族が集まったところで、直接病気が治ったり、関連する先にはつながりません。
確かにアルツハイマー型を含む認知症は、現在のところ完治する病気ではありません。
でも、これからは、年1回の「世界アルツハイマーデー」の日だけでも、「アルツハイマーはもう治る病気」といえたり、治ると信じることができたり、みんなが前を向ける日であってほしいと強く思っています。
そこで寄付先は、患者会のように中にいる人たちを間接的に支援する所ではなく、もっと先の未来につながることを願って、アルツハイマー病に関する研究機関を予定しています。
向き合う先の未来へ
僕は今年の2月から音声配信アプリ「stand.fm」を通じてファンと交流をはじめましたが、その延長線上に「おとラグ」が誕生しました。
その経緯は、こちらで紹介しています。
僕はラグビーをやるほうが好きなので、「おとラグ」でみんながプレーする側に近づいてくれることがすごく嬉しいし、一緒にラグビーをできるのが楽しいです。
誤解を恐れずにいえば、楽しんで収益を出す機会とプロへの転向、「世界アルツハイマーデー」のタイミングが重なったことですべてが整い、ようやく長年思い描いてきたファンドレイジングのメッセージを発信することになりました。
この記事を通じて、アルツハイマー病に対する誤った認識や、そのせいで傷ついている人たちの存在が伝わり、一人でも多くの方の知見が広まることを願っています。
そして、もう逃げずに新しく一歩を踏み出した僕を応援してくれたら嬉しいです。
ファンドレイジングにご参加くださったみなさまへ
僕からの御礼メッセージ動画です。あわせてご覧ください。
最後まで読んでいただきありがとうございました。