「他人とのコミュニケーションどうなっていますか?」-新しい社会的距離について
物理的距離と心理的距離
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の予防策としてソーシャルディスタンシング(social distancing)が重要になっていますね。疫学的、物理的な意味の社会的距離を保つことによりウィルス感染を防ぐという、極めて原始的でありながら、確実な唯一の方法。
一方で、人の心理的距離と身体的距離は相互依存しているようです(おおよそ一致するとも言われています)。日常から離れることで、社会との隔離が続き、人々が抱える不安も増大していると思います。
家族や知人との連絡を取るだけでなく、オンライン飲み会などを通して時間の共有をしている方も多いのではないでしょうか。
また、反対に均衡を保っていた距離バランスが崩壊することによる弊害もありそうです。一例に過ぎませんが、”コロナ離婚”などという物騒な言葉まで生まれています。
どんな距離が心地よいか
心理的な意味合いを含むソーシャルディスタンス(social distance)については、国や文化による違い、個人の性格による違いがあるとされています。プロクシミクス(proxemics)やパーソナルスペース(1960年代にエドワード・T・ホールにより提唱された、近接学より)という言葉を聞いたことがあるかもしれません。「他人とのコミュニケ―ション伝達手段として距離を考える」ものです。
2020年の今、自己選択の余地なく強制的に変化する環境に身を置くことになり、人々は意識して、盛んに社会的距離を縮めるための活動を行っています。経済活動のため、生きるため、心のバランスを保つため、社会に役立つための活動は拡がってきています。
デジタル技術の発達の恩恵により様々なツールを使うことによって、他人はもちろん別に暮らす家族との距離は近づき、コミュニケーション濃度は高まっているのではないでしょうか。
新しい社会的距離の均衡が再構築されつつあるのです。
皆さんは他人との関係において、「心地よい距離になってきていますか?」
デジタル社会的距離
デジタルネットワーク基盤やソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)などのソフト面を含む環境でのコミュニケーションについては、課題や対策などをこれまでも議論されてきています。
SNS上の個人情報の取り扱いやアカウント乗っ取りなどのセキュリティ面の課題や、いじめ、ハラスメントなどの倫理面の課題があります。また、フェイクニュース、情報過多の弊害、依存症など。
ところが、今、環境の変化の大きさに隠れて静かにデジタル社会的距離(とでも表現すればよいでしょうか)は、物理的距離や心理的距離とも少し異なるものとして構築されているのではないでしょうか。
物理的距離とほぼ一致していたはずの心理的距離は、このデジタル社会的距離にも大きく依存し、これまでSNSの課題なんて他人事、と思っていた人々にも密かに、そして確実に、襲いかかっているかもしれません。
デジタル技術により容易に他人と繋がることが可能な今だからこそ、「他人とのコミュニケ―ション伝達手段として距離を考える」ことをあらためて意識することが重要になるでしょう。