ボドゲの宣伝として、有料広告は効果があるのかを確かめようとしたら貯金が消えた話
このnoteは「ボドゲのことを全く知らなかった僕が、いきなり全財産をかけて、ボードゲームを作って売る」というアホな制作過程を、ほぼリアルタイムで書いているので、ぜひ面白がっていただけると嬉しいです!
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お酒の勢いでボードゲームを制作することになったド素人3人は、ゲームマーケットというボドゲの一大イベントに参加し、その熱に当てられ、初めてのアルコールの入っていない作戦会議を行うこととなっていた。
「第1回 チキチキ⭐︎ ボドゲ制作会議を始めます!!何か意見のある人…!」
「はい!どうすれば黒字にできるんでしょうか…!?」
「「…わかりません!!!」」
開始1分で会議が行き詰まってしまった…。
ゲームマーケットで印刷代金の目安が知れたため、どうしても予算の部分に目がいってしまう。ただ、やはりボードゲームを「作りたい」という欲求からスタートしたので、まずは予算は気にせず、どういうゲームを作りたいかを話し合うところからスタートした。
というのも、実は僕にはすでに作りたいゲームの構想が頭の中にあった。
当時、怒られながらも仕事中にメモ帳に書き殴っていた案が、時間をかけて少しずつまとまり始めていたのだ。
そしてそれをメンバーに共有し、話し合ったところ…
「え…面白いんじゃないかな?」
「いける…!いけるよ!少なくとも今プレイしてみたいと思った!!」
という結構な好感触だった。
そこからは日が暮れるまでゲームの構成やルールを話し合い、ひとまず机上の空論として形にするところまでは持っていけた。
この、アイデアがだんだん形になっていき、友達とワイワイ話し合えている瞬間が何よりも楽しい。
ボドゲを作ろうと持ちかけたのはやっぱり間違いじゃなかったと、心が充足していくのがわかった。
「んで、予算どうする?」
…一瞬で現実に戻った。
ある程度やりたいゲーム像が見えてきたので、前回ゲームマーケットで教えてもらった印刷代から、なんとなくの見積もりが出せたのだった。
僕たちが作ろうと考えているゲームはカードがおよそ70〜80枚。それ以外には得点用のボードと、そこに配置するプレイヤーのコマ、何よりそれらを収納する箱が必要になる。
全てを一番安い印刷グレードで100個セットで見積もりを出したところ…
約20万円。
な、なるほど、初任給くらいか…。
ただ、ボドゲを作るのにかかるのは印刷代だけではない。
僕たちの中に絵心のある人は一人もいないので、デザインはイラストレイターさんにお願いすることになるだろうと考えていた。
今はAIアートもかなりすごく、デザイン費を抑えるために生成AIも考えていたが、ゲームマーケットではすでにAIアートで作ったゲームを出している方が結構いた。
そして感じたのは
「AIのデザインであることがゲームコンセプトになればOK」
「ただし、AIのデザインのみでこれまでのカードデザインを全て代替するのは今の所難しい。」
というのが僕たちの感想だった。
ゲームマーケットでは数多くのボドゲが出品されている。
正直その全てを把握することは、よっぱどのマニアの方じゃない限り難しいだろう。
そうなった時にパッケージやカードのデザインが購入を決める大きな要素になるのではないか、と素人ながらに僕たちは感じていた。
僕は友達に絵師を本業でやっている子がいたので、経緯を説明して、デザインを頼むとどれくらい金額がかかるのかを聞いていた。
結果は…
約10〜15万円。
ここについては、絵師の友達も「正直ボドゲは書いたことないから相場はわからないけど、自分がもし受けるとするなら枚数的にこれくらいかな?」と言っていた。
なので僕もあくまで参考程度と思っているが、すでに35万円が必要になる計算だ。
そこにゲームマーケットの出店費用や、ブースを作るための細々した費用。
ゲームマーケット当日にレンタカーを借りたり、なんかやかんやかかるお金もあるだろう…。
なんとか節約できたとしても30〜40万はかかるんじゃないだろうか、という予想だった。
絵師の友達に見積もりを聞くのと同時に、ゲームマーケットに関するnoteを読み漁り、情報収集も同時に行っていた。
その中のどなたかが書いてあった内容に…
ゲームマーケットで個人が初出店する時は
50個売れれば上々。
100個売れれば人気作。
200個売れるのは超人気作。
という目安があるようだった。
いろんな記事もみたが、おそらく初出店の際は50個…多くても100個までの販売で考える方が良さそうだった。
ふむ。50個か…
あれ?おかしいぞ?
鼻水を垂らしながらも義務教育をしっかりと卒業した僕の優秀な脳みそを持ってしても、ボドゲを作るのにかかるお金と、販売の目安個数の計算が中々合わなかった。
何かの奇跡が起きて、僕たちの作るボドゲが100個売れる人気作となったとしても、作るのに40万円がかかるのなら1個4,000円でゲームを販売しないといけなくなる。
逆に1個2,000円で販売するのであれば、200個を売り切るような超人気作をド素人3人で作り上げなければいけない。
(正確にはこの場合、印刷代がさらにかかるので200個以上売らないという計算で、難易度がもっと跳ね上がる。)
奇跡的にそしてそれができたとしても、赤字にならないギリギリ…ということだ。
…無理じゃね??
どう考えても僕たちが作りたいゲームでは黒字に持っていけるイメージが見えなかった。
noteで他の方の投稿を見る限り、ボドゲ制作で赤字を出さないためには
・カード枚数を少なくし、10〜20万円でゲームを作ること
・デザインはできる限り自力で頑張ること
・Xなど広告費のかからないものを駆使し、宣伝を頑張ること
すごくシンプルにまとめると、このような内容だった。
ボドゲ制作において…いや、ボドゲ制作に限らずだが、赤字を出さないというのは本当に大事だと思っている。
「趣味だから、赤字であっても、プライスレス!」(字足らず)
という思いがないわけでもなかったが、先人のどの方の投稿でも、赤字になって在庫を抱えてしまうと、次の制作を行う予算がなくなったり、予算があっても心理的ハードルが一気に上がるらしい。自宅にたくさんの在庫を置かなければいけないというのは物理的にも精神的にもかなりしんどいもののようだ。
健全にボドゲ制作を続けていくには「趣味だから!」という大義名分だけで進めるのではなく、しっかりと制作費を回収する必要性がある…ということだ。
そうなると僕たちが取れる最も簡単な策は、「ゲーム内容を作り変えて、内容物をコンパクトにする」というものだった。
…だったのだが、僕の中でその策はどうしても取りたくなかった。
30秒前に書いた内容と矛盾するが、元々は「ボドゲを作りたい!」という目的で走り始めている。そして作りたいゲームが見えているのに、「赤字を出さないため」という理由で、作りたいものを諦めるのは、目的と手段が入れ替わっている気がしていたのだ。
何より、もう「このゲームを作りたい!」という自分の欲求が止められなくなってしまっていた。
ただし、赤字も出してはいけない…。
そうなると残されているのは、
「なんとかしてたくさん売って、黒字にする。」
という脳筋ハードモードな選択肢しか残っていなかったのだ。
おそらくこの葛藤は、初めてボドゲを作ろうとした人たちがみんな通ってきている道のりなんだろうなと思いつつ…
同時にnoteでたくさん調べていた時に、僕はどうしても気になっていたことが1つあり、それをメンバーに話した。
それが…
「販売の際、宣伝方法がかなり限定されているということ。」
ゲームマーケットでボドゲを作って売る場合、その広告手法は主に、「X、note、ゲームマーケットブログ、Youtube」などの無料のSNSに絞られているようだった。
もちろん僕が他の広告手法を取っている方を探し切れていないという線も大いにあるのだが、大筋としては広告にはお金をかけない、というのが基本戦略のようだ。
そして、これについては理由は明白だ。
なぜならすでに僕たちもぶち当たっているが、ボドゲを作って販売するには、原価がかかりすぎる。
ボードゲームは販売価格が比較的安価なため、可能な限り制作や広告にかかる費用を抑える必要がある。
結果、拡散力がある上に無料で行える、SNSの発信に広告手法が絞られてくるのだろう。
ただ、広告というのは、お金がかかること自体が悪いのではない。
広告に1万円がかかってもその後2万円分売れるのであれば、その広告費はかけるべきものになる。
問題なのは、そんな費用対効果の高い広告手法が本当にあるのか、ということ。
そして、たくさんある広告手法の中で何が最適解なのか、全く皆目見当もつかない…ということだ。
ここで少しだけ自分語りを挟ませてほしい。
実は僕は25歳の時にサラリーマンを辞め、それ以降自分で事業を起こして働いてきていた。
資金も人脈も何もないところから小さく事業を起こしたので、当然売上も少なく、貯金残高を減らし続けていたのだが…
それでも開業してからの1年間は、事業の売り上げを自分の懐には1円たりとも入れず、全てを広告費に突っ込んでやりくりしていた。
その期間はサラリーマン時代の貯金を切り崩しながら、もやしをたくさん食べてお腹を膨らまして乗り切っていたのだが…
3年目になり、今はなんとか自分の生活費分くらいは稼げるようにはなってきた。
そこから学んだこととして、
「広告は何が正解なのかは試してみないとわからない。」
という経験がある。
僕はなけなしの売上の全てを広告費にかけたことで、複数の広告手法を試すことができた。
当然全く効果が出ずに、お金を無駄にした広告手法も山のようにあったが、そのおかげで効果のある広告手法も見つけることができたのだ。
もちろん自分の事業でうまくいった広告手法がボドゲの広告としても優れているとは全く考えていないが、同時に、いろんな広告手法を試してみる価値はあるんじゃないのかな…という考えが頭にあったのだ。
とは言っても、この考え自体を思いついた人は、これまでにもたくさんいたんだと思う。
ただ、あまりにもリスキーすぎるのだ。
ただでさえボドゲ制作にかかる原価が高く、赤字の危険性があるのに、その上さらに広告手法の実験を行うのは、狂気の沙汰だと思う。
すでにある程度ボドゲ販売の経験があり、売り上げの見込みがたつベテランサークルならまだしも、何にも知らないド素人がやるべきことではない。
そう、やるべきでは…ないのだが…
「やってみたい!!」
僕は好奇心に負けていた。
それにゲームマーケットを通して、ボドゲ界隈の暖かさに僕はかなり感動していたのだ。
今後「初心者だけどボドゲを作りたい!」という人たちが、同じように作りたいものと予算の狭間で葛藤が起きることはあるだろう。その時に
「この広告手法なら、これくらいの効果がある。この広告手法はあまりオススメできない。」
といった情報があるだけで、初心者たちは結構助かるのではないだろうか。
ただ、そのためには失敗を前提にデータを取りに行く人柱が絶対にいる。
そしてその人柱は、知名度が0の初心者でなければ、他の初心者の参考にはならない…。
怖いもの知らずなド素人であるからこそ、その役目を全うできるのでないのか…。
改めて考えた時に、ボードゲームを作って売るというのは個人が稼ぐ目的で選ぶような選択肢では全くない。
ものづくりが好きな人たちが、好きなボドゲを作り続けたい、そんな思いで、あそこまでの熱狂が生まれているのだ。
僕もボドゲを作りたい人たちの助けになりたい…
と、自分もボドゲを知らなかったド素人なのに、一丁前にそんな感情に支配されてしまっていた。
そして覚悟を決める。
「やってやろう。」
僕は初心者が絶対にやるべきではない、お金をかけたボドゲ制作を心に決め、それをメンバーたちに宣言した。
そして宣言をした後に、ハッとし、自分の貯金残高を確認する。
…。
……。
あれ?全然足りない???
目の前には人柱になる覚悟をした自分に、尊敬の眼差しを送るメンバーたちの視線がある。
やめておくれ…!今はその視線がとても痛いんだ…。
10秒前の自分を殴ってやりたくなるが…
(なんでアラサーにもなって、こんなに貯金残高が少ないんだぁぁ!!)
殴るべきはこれほどまでに貯金を行えなかった過去の自分自身のようだ。
もう宣言してしまった僕は引き返すことができなくなり、この時点で僕の貯金残高の全てをボドゲ制作に突っ込むことが確定してしまった…。
ただ、自分の事業で貯金残高が0になるギリギリの恐怖体験を何度か経験して、大切などこかのネジを失ってしまった僕は、
「もうやると決めちゃったもんは仕方ないかー。」
と、遠い目をしながら腹を括った。
赤字を覚悟した上で、同時に黒字を出す覚悟を決めた、僕たちのボドゲ制作が今ここに開始されたのだった。
…とりあえず胃薬を買いに行かなきゃ…。
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