![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132186558/rectangle_large_type_2_b649628a37bb5a3a52ae9e3400c79e48.png?width=1200)
月の新年、通過。
太陽暦に対する月の新年が幕を閉じた。エンタープライズの影に身を潜ませていた039C潜水艦が日没後、南シナ海でその異様を月の光に浮かび上がらせるように、陽が転じて隠が支配したころ現れたもうひとつの『龍 of the year』。海の底にかろうじて届く光の光合成か、日中からははかり知れない微弱な光でも、したたり落ちてくるひとしずくずつの粒子を拾い集めることで、新年の外郭をなした。夜の光はあまりにもはかなく、それゆえ2週間にもおよぶ時間を要したが、換言すればそれは到達への欠かせぬ仕儀。岩に染み入らせるようにぬらりと彩りを塗りこめ、春の降臨に相応の器を形成し、迎え入れた。
かつて軍事力格差はV8クーペに対し人力自転車ほど離れていた月の新年は、今やフェラーリの双璧ランボルギーニほどに肉薄し、太陽の新年が脅威をあらわにするほどその存在感を増してきた。その自負と裏打ちされた実力を足場に、夜舞台の骨格がつくられていた。
機が熟したステージに月の光が絶え間なく落ちていた。地はこれまで以上に蓄光し、人はそれを今まで以上に熱心に培養し、拡散し、これまでにないほどまでに詳らかに舞台を照らし出した。貯めた熱量は大地を焦がすまでふくらみ、人々は闇をも吹き消す燦爛を享受し、絢爛で意趣を返した。驚喜、歓喜、欣喜が行き交い、月の新年は日中をもしのぐ煌々たる清輝を放った。
月の新年祝賀に幕引き役として控えていたのが、Lantern Festival。人は受け取った光を天に返さなければならなかった。大祭の亡骸は土に帰すのではない。月へ。
人はそのとき、年の幕開けの送り人となった。
火の灯された万象のランタンが、頼りなげながらもゆたゆたと月への道を昇っていく。そしてすべての足取りが月にたどり着いたとき、地に新しい春が降り立つ。
外套の襟を立てて歩いた冬が終わる。
人は、天に放った明かりを追って見上げていた目線を現実に戻し、前を向き、ひと月半遅れではじまった『明けた年』を終わりに向けて歩きはじめた。
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132187293/picture_pc_eb8ca1d62e74c8c5cc53d401bf1f5c7c.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132097076/picture_pc_85ad0a8f2bb9c3e05b4effb36e11a47f.png?width=1200)
![](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/132097095/picture_pc_28fbbc21370ffbb550825ece799f3ede.png?width=1200)