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旅行に行けないことが、思い出アルバムを見返す機会を増やしている。
湯けむりの露天風呂に、野に咲く名を知らぬ花を縫う高原の散歩道。
北海道をバイクで走ったこともあった。仙台からフェリーで苫小牧、そこから『北の国から』を目指した。
富良野は、思っていたのと少し違っていた。
いつだって事前の想像は、現実の空気とは違っていた。
旅は、勝手な思い込みを矯正してくれるすり合わせなのかもしれない。
想像が間違っているというような話ではない。
空想を楽しみ、現実を目の当たりにして、そこからまた幻想の種をもらう。
循環の波を創り、形のなかったものに輪郭を与えていく。
そんな感じ。
美術館に足を運ぶのにも似ている。額を震わせる影、台座から飛び出す色彩に想いを馳せ、馳せた想いに、目にして初めて作品群が語りかけてくる。
共鳴があって驚愕し、息を飲み眼を見張る。
北の国の舞台「吾郎石の家」は、夏の硬い陽を受けて、長閑に縁側に座っているみたいに見えた。
厳寒の冬は、はるか遠くにあった。
観光という額縁の向こう側にあった、触感で確かめられる幻。
まるで棚に乗った猫のような好奇心みなぎる面持ちのまま、富良野の宿に向かった。
そこは吾郎石の家同様、富良野地方独特の古民家だった。
平屋で、中央に玄関がある。寒さ対策の二重扉が施され。
だが屋内は、快適に改装されていた。
近代的キッチン。ログハウスばりのリビングとベッドルーム。アーバンな洗面所。
敷地内には都市の洗練を取り入れたレストランが、丘陵を撫でる畑を背に、雑木林を腹に抱えて建っている。
メニューにエスニックとクラフトビアを選んだ。
さて。
1年におよぶ再現旅行で、そろそろネタも尽きてきた。
放出したら、吸収である。
気が早い?
それでも、空想を膨らませる時間をたっぷり取れる、と考えることもできる。