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喋る猫。

 うちの猫は一般的な猫と明らかに他の猫とは違う。初聴で記憶に刻み込む奇妙な声を発する。
 おにょおぉん。
 小さな「ぉ」のあとに半角の音引きが混じることもある。聞き慣れれば聞き分けられる微細な違いだが、そのわずかなニュアンスで伝えてくることが違っているからややこしい。
 
 おにょおぉ-ん。
 どうやら何やら文句を口にしているようだ。なになに? 人の個性で遊ぶな、ですって? 猫なのに、自分のことを人の個性と言い表す。賢いのか、生意気なのか、はやまた勘違いも甚だしいと言うべきか?
 おにょぉおんおん。
 今度は何だ? いい加減にしなさい、ですと? 漫才の掛け合いじゃあるまいし、その間の取り方、聴衆を意識しているとしか思えないんですけど。どこでそんな技を覚えたっていうんだい?
 
 おにょごにょぉおん。
 ん? もしかして、おかんむり?
 
 
 という一人芝居をしていたら、猫、呆れた顔で隣室へ逃げてった。にゃーご。どうやら「ばーか」と言ったらしい。

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